2016/08/08
チームプレーで攻略する! 大人気VRボードゲーム『アニュビスの仮面』をやってみた
最近よく耳にするようになった「VR(バーチャルリアリティ)元年」という言葉。コンテンツや、VRゴーグルが出揃ってきた今年は、本当にその"元年"となる年なのかもしれません。
なんて言ってみたのは、おもちゃ界でも各社VRゴーグルを使ったものを登場させているのが、その根拠。今回紹介するVRゲーム「アニュビスの仮面」も、VR技術とボードゲーム的要素を併せ持った、なかなかに斬新なゲームなのであります。これ、T&Sおもちゃ部でかなり盛り上がったので、さっそく紹介したいと思います。
パッケージはボードゲーム風
ある国で発見された未発掘のピラミッド。内部は迷宮になっており、そこにはアニュビス神の財宝が眠る王の間があると言われている。そこに挑むのは、迷宮内を透視できる「アニュビスの仮面」を持つ発掘チーム。チームを率いる博士はアニュビスの仮面を使って内部の地図を作り、壁の隙間から内部へ侵入できる犬の「ルド」に探索させることにした...。
こんな感じのストーリーが用意されているこのゲーム。
目的やルールの説明がなかなか難しいのですが、要は「VRで見た迷路の配置を口頭で仲間に伝え、地図を完成させていくゲーム」と思っていただければと。まあとにかく進めてみましょう!
同梱のVRゴーグルは段ボール製!
まずはゲームで使用するアイテムの制作。ぶきっちょ編集O(黒シャツ)は早々に投げ出すが、図工5だったU(筆者・紫シャツ)には楽勝。スマホを仕込んで、仮面の完成!
VRのヘッドセットとなる「アニュビスの仮面」は刃物も接着剤も不要ながら、いちからの組立てが必要。そこまで難しくはないものの、いきなり要求される工作作業は、アナログ感があって結構楽しい。
複数人が一丸となってダンジョンを完成させる「伝言ゲーム」?
さて、そんなこんなで仮面にアプリ「アニュビスの仮面」をダウンロードしたスマホをセットし、付属のマップタイルやチップの類をテーブルに並べたら、ゲームスタート!
...とその前に。
【ゲームプレイの前提】
- ・「アニュビスの仮面」をつけると、実際に自分が迷宮内にワープしたかのような360度の視界をVR上で得ることができる。ただし、移動は一切できない。
- ・仮面をつけたプレイヤーは、言葉とジェスチャーを駆使し他のプレイヤーにVR迷宮内の通路の情報などを伝える。
- ・VR迷宮内は「直線」「L字」「T字」「行き止まり」、そしてゴール地点となる「王の間」のマップタイルで構成された迷路となっている。他のプレイヤーは"現実世界"のマップタイルを使い、地図を作っていく。
- ・迷路には、松明や石像などのオブジェがあり、これらは地図を作る際の目印となる。
- ・迷宮のどこかに探検隊の一員である犬の「ルド」がいる。正しい地図を完成させ、ルドをゴールとなる「王の間」へ導くことがこのゲームの目的。
自分の視界には左のような画面が見えている。その状況を仲間に口頭で伝え、地図を作成してもらうのだ。本人的には十分説明できているようでいて、視界を共有していない周囲にはまるでチンプンカンプン
つづいて、まずはルール説明。実際にやってみればわかるのですが、文字ではなかなかに説明がもどかしいゲームであります。
【ルール1】
- ・アニュビスの仮面を使えるのはひとり1分。その間にVR迷宮内におけるマップタイルの種類、目印となる各種オブジェの配置などを周りの人間に言葉とジェスチャーで伝える。
- ・周りの人間は、仮面装着者の情報を元に、(現実世界の)マップタイルを組み合わせ、そこにオブジェを示すチップを置くなどして地図断片を作成していく。
- ・1分間が経過すると画面が暗くなるので仮面を外し、仮面をつけていた者を含めた全員で地図が合っているかどうか相談する。ただし、間違いがわかってもこの段階では作ったマップに手を加えてはいけない。
U「まっすぐのところに、石像がある」
周り「まっすぐって、どっちよ?」
U「だ~か~ら~、まっすぐだよ。俺からみてまっすぐ!」
お互いがまったく知らない場所で、電話を使ってあいてに自分のいる場所を説明しているその感じ。まったく要領を得ないまま、あっというまに説明するために与えられた1分が過ぎてしまう......。
【ルール2】
- ・相談が終わったら、アニュビスの仮面を次の人間が装着し【ルール1】に戻る。これを1ターンとし、決められたターンの数だけ(難易度で異なる)繰り返す。
- ・仮面(バトン)タッチして、次の装着者はU子。VRで見える世界を確認するために、仮面を装着した頭を左右に動かし、必死になって説明。がんばれU子! でも肝心の迷宮内の情報はまったく伝わってこないぞ! あと激しく頭を動かしすぎて俺のスマホを何度も落とすのはやめてくれ。
- ・......ほかのメンバーもそんなこんなで、4人それぞれが自らのターンを終了させた。
【ルール3(ゲームクリアの条件)】
- ・すべてのターンが終わったら、最終的な相談時間。それぞれのターンでできた地図の断片を組み合わせ、最終的な地図を完成させる。
- ・地図が完成したと思ったら、スマホを仮面から取り出しアプリの指示に従ってルドを動かしていく。ルドが王の間にたどり着いたらゲームクリア。
同じ場所にいるのであれば、見えているものもほぼ同じ。いっしょにいる人間が顔を向けている方向もわかるので、その人間が言うところの前後左右は簡単に把握できる。ところが、アニュビスの仮面をつけている人間の視覚だけは、VR迷宮内という"方向もわからない離れた場所"にあるため、単に「前に○○がある」ということを伝えるだけで非常な困難を伴う。
なるほど。これって、VRを使った最新の「伝言ゲーム」なのか!そう気づいた次第。
実は、このゲームを開発したメーカーはこれまでにも視覚障がい者と健常者が共に楽しめるゲームを手掛けてきた経緯がある。自分が見えているものが、必ずしも周りにも見えているとは限らない。そんな、もどかしさを体感できるのがポイントだ。
記憶力、表現力、そしてチーム力が試せる!
普通のゲームでは「もどかしさ」はネガティブな要素にしかならないもの。でも、このゲームでのそれは、なかなかクセになる。ゲームを重ねるうちに、皆はどんどん真剣になり、説明もチカラが入ったものに...。
失敗しても、すぐにまた次のゲームに挑戦。クリアはままならなくても、失敗を繰り返すうちに、優先すべき事項と問題点が見えてきた。
●自分の立っているマップタイルが、位置関係を説明する絶対基準となるので、この情報を優先的に伝える
●同じマップタイル、オブジェの呼び方が個人ごとに異なるため混乱している。そのため用語を統一する
●いつまでもVRゴーグルにはしゃがないで、落ち着いて説明をする
以上の点を踏まえて、チーム内の意思統一を図ることに。
T&Sおもちゃ部として、クリアせずに終われるわけがない。我々が立案した作戦はこうだ。記憶力抜群のU子を1番手、手堅い筆者Uを2番手、リーダー役のHを3番手に置き、ここまでである程度の完成予想を済ませる。「情報を得られればラッキー」程度のあてにしかならない、Oは4番手に配置。順番の意味に気づきかけて不満顔の編集Oを「ホームランバッターも4番だから」とおだてて挑んだラストゲーム、その結果は......。
それはこの写真でわかるでしょう。
時に罵り合い、時に信じ合う。友人との連帯感を現実世界で高めてくれるゲームが、最新のVR技術を使っているのも面白いところ。また、普段見えない人間性やキャラクターがこのゲームを通じて浮き彫りになることもゲームの魅力のひとつ。意外な人間が「説明がうまい」とか、「パニクると使いものにならない」とか、それぞれの得手不得手も見えてくるから、企業がコーチングに取り入れてみることを、割と真剣に提案します。
というわけで、あなたも気の置けない仲間、または会社のプロジェクトメンバー、と迷宮探索に出かけてみてはいかが? これ、ハマります!
文:のび@び助
撮影:山崎和治