2016/07/14

【紳士のSNS講座】第7回 夏の話題を、怒涛のハッシュタグ乱立大作戦で、クールに熱く演出する

夏到来! で、かき氷のお自慢です。かき氷って、この数年ものすごく流行っていますよね? 日光の天然氷×フレッシュフルーツのシロップが人気を集めたり、台湾や韓国から次々新店が上陸したり。で、みんなどんどんアップします。何時間も並んでありつくとうれしいし、間違いなくおいしいから、その感動を世界にお知らせしたくなる。でも、だからこそ、正直SNSでは飽和状態。"ビジネスいいね"を幾つかもらって話題は消費されていきます。

そんなごく普通のお自慢を差別化するためにハッシュタグを使いましょう。今回はそのお作法を学んでいきます。

当たり前の中に特異点を置き、ハッシュタグで差別化。

では、作例をみていきましょう。

ポイント①本文では「オレのかき氷への姿勢」を明確にする。

夏場には多くの人々が「かき氷食べた」ということをお自慢します。今や「かき氷そのもの」と同じくらい「SNSでのかき氷お自慢」は夏の風物詩になっています。そこに同調してヌルく楽しくSNSを盛り上げることもできますが、この手法はいずれ「コンビニの新商品をお自慢する」の回で詳しく解説しましょう。今回は、「夏=かき氷」というごく普通のムーブメントのなかで、「自分は普通じゃないんだ」ということをいかに主張するかにスポットを当てています。

例えば、いきなりの「4カ月ぶり」という表現。「1年ぶり」ではなく「4カ月ぶり」。つまり前回来たのは3月です。3月に、春先にかき氷を食べる男なわけです。これだけで「ヌルく楽しく」投稿する多くのみなさんとの差別化は明らかです。が、しかし......。

ポイント②本文はクールに、プロフィール代わりのハッシュタグで熱く。

世の中の、他のかき氷投稿と差別化したいのは山々ですが、「いかに自分がかき氷好きか」を熱く語りすぎるのは逆にサムイサムイですよね? 写真に添えられた文章が驚くほど素っ気ないのはそのためです。要するに「かき氷を久しぶりに食べておいしかった」しか言っていません。以前の「富士山のお自慢」と同じように、「自分にとってかき氷は日常」なのです。その喜びを語り過ぎてしまうと、イベント感が出てしまう。「調子に乗っている」というところは見せたくありません。

だからハッシュタグ。

「大のかき氷マニアである俺が......」なんて書くとすごくいやらしいですが、「#かき氷マニア」というハッシュタグに変えるだけで、途端に体温が下がります。かき氷マニアを自己申告していることには変わりないのに、後者には「みなさんご存じのとおり」みたいな一般性が発生しています。事務的な、業務連絡みたいな佇まい。それでいてお自慢するところはきちんと伝えている。ハッシュタグがある種のプロフィール的な役割を果たしてくれているのです。

あるいは、かき氷についてしか投稿しないと割り切れるのであれば、アカウント自体を「武田暑乗@年間300杯かき氷を食す男」とするやり方も効果的でしょう。

ポイント③さらにはオーディオコメンタリー代わりに、とにかく熱く補足!

その他のハッシュタグでは、#実は冬が旬 とか #冬の方が氷が極薄 とか #冬の方が舌触りが最高 とか #気温によって刃の角度を変える とか #夏場はあっさり系シロップ とかの「かき氷豆知識」を惜しげもなく投下しています。これが、たった4行のさらっとした本文の行間を埋めているのです。かき氷の世界は実はこれほどに奥深くて素晴らしいのである、ということをハッシュタグの業務連絡感を利用して伝えています。言ってみればDVDの特典としてついているオーディオコメンタリー。なんでもないシーンの裏側にスタッフ・キャストのどれほどの苦労があったかを副音声で教えてくれるアレです。

このハッシュタグには、あっさりした感想に力を持たせる機能があります。

「うまい」のたった一言も、海原雄山がいうと重みが違うように。アコースティックギターでかき鳴らすCのコードもエリック・クラプトンがやれば涙が出るように。「ふざけたロスタイムですね」というクレームも松木安太郎がいうと、解説の熱さに聞こえるように。

今回は同時に、#かき氷 #夏 #日本の夏 #夏休み #風物詩 など、特に必要がないように見えるハッシュタグも配置しました。これらは「間口の広さ」の演出です。こうしたベーシックなハッシュタグを検索して、たまたまたどり着くライトユーザーからのレスポンスも期待してのことです。

余談ですが先日、コロンビア大学とフランス国立研究所の調査結果がワシントンポスト電子版で発表されました。曰く、「SNSでは記事を読まずにタイトルだけでレスポンスする人が6割」とのこと。この投稿にタイトルはありませんが、おいしそうなかき氷の写真さえあれば、「いいね!」やシェアが発生する可能性は非常に高まります。ベタなハッシュタグは、多くの人たちに検索され、彼らを誘導する機能を持ちます。

絵:Shu-Thang Grafix

講師:武田篤典

何気ない所作のなかにある「モテ」を顕在化し、好評を博した『スマートモテリーマン講座』著者。SNSなど各種コミュニケーションにおける礼儀作法を研究する「武田流万(よろず)礼法」家元。

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