2016/07/05

【ICT×MUSIC #4】『ビョーク』がVRと融合? まるで歌を独り占めにできる最新テクノロジーとは

こんにちは、J-WAVEの小松です! インターネットや通信と音楽の新しい可能性を探る連載企画「ICT×MUSIC」第4回は、アイスランドが世界に誇るスーパーディーバ、Björk(ビョーク)を紹介します。

最新テクノロジーとともに進化するアーティスト

曲を聴いたことがなくても一度は見た・聴いたことがあるであろう「ビョーク」という名前。ですが彼女はいまさら、ではなく、"いま"紹介すべきアーティストなんです。というのも彼女は最新テクノロジーを駆使し、進化し続けるアーティストだから。みなさんは彼女にそんなイメージありますか?

まずはビョークのイントロダクションを。アイスランド出身、1965年11月生まれの現在50歳(50歳に見えない! かわいい!!)。ギターポップバンド、ザ・シュガーキューブス解散後、1993年にソロデビューアルバム『デビュー』を発売。2000年には映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』に主演。劇中での音楽も担当しました。2003年、2013年には「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演。サウンドはもちろん、ビジュアル、パフォーマンスでも最新テクノロジーを大胆に使用し、聴く者、見る者すべてを虜にする世界的アーティストです。

私のビョーク体験として最初の記憶は高校生のころに見た、映像作家・クリス・カニンガム(奇才!)による「All is Full of Love」のMV(ミュージックビデオ)。まるで人間の顔をしたロボットの映像と、壮大な曲とのアンバランスさには、恐怖にも似た感情を抱きながらも目が離せなかった記憶があります。そして2013年の「FUJI ROCK FESTIVAL」でのライブ。大自然のなかで魅せる、力強く圧倒的な歌声とパフォーマンス。それに会場中のオーディエンスが応えての大合唱は忘れられません。

スマホ登場とともにアルバムをアプリ化

ビョークがデビューした90年代前半は、スマホはもちろんなく、インターネットも普及していない状況で、盛り上がっていたのはMV、まさに映像時代。ビジュアルや映像のテクノロジーはどんどん進化し、新しい表現が次々に出てきました。先述のMVもまさにそのひとつ。ビョークはまず、映像技術と音楽のミックスを試みました。そして、時代がインターネット、コンピュータ時代へと突入するのに合わせて、ビョークも進化します。音楽のなかにそれらを取り入れるのはもちろん、販売方法にもネット配信を導入し、私たちを驚かせました。

2011年にリリースされたアルバム『バイオフィリア』は通常のCDに加えて、アプリアルバムとしても発売。『バイオフィリア』はアルバムであり、アプリであり、ライブであり、ウェブサイトでもある。なんのこっちゃと思うかもしれませんが、いまでは私たちが当たり前に使うタッチパネルを使用し、10曲入りのアルバムをアプリとしてリリースしたわけです。そのアプリでは曲も買えるし、曲のスコアや歌詞も見ることができる。ウェブサイトとしての機能も持ち、ゲームだってできちゃうプロジェクトとして、大きな話題になりました。現在では、北欧の学校のカリキュラムにも採用されている、まさに最新のテクノロジーによるアプリ。詳しくは実際にダウンロードして楽しんでみてください。

ビョークとVRの融合

「Bjork Digital -音楽のVR 18日間の実験」オフィシャルビジュアル

そんなビョークが昨年リリースした最新アルバム『ヴァルニキュラ』を中心に展開するプロジェクトが「Bjork Digital -音楽のVR 18日間の実験」(日本科学未来館にて6月29日〜7月18日まで)です。現在進行形の最新テクノロジー、VRとの融合による多彩な作品を多数展示。『ヴァルニキュラ』収録曲のVR映像作品3点、『バイオフィリア』のアプリ体験、そしてビョークのこれまでの作品を5.1chでリマスターした2時間におよぶ映像上映という5つのコンテンツで構成されています。

とくに私が注目しているのはVR体験。『ヴァルニキュラ』に収録されている「Stonemilker」「Mouthmantra」「Not Get」の3作品がVRで楽しめるんです。「Stonemilker」は、アイスランドの吹きっさらしのビーチでひとりっきりで歌い踊る映像を360°撮影した作品。こちらはすでに公開されていますが、VRで体験したならば、まるでビョークの歌を独り占めにできる感覚。なんと贅沢な!!

「Mouthmantra」はこちらも公開済ですが、ビョークの歌う口の中を撮影した、観るのに少々覚悟のいるもの。不気味だけど病み付き!! そして日本初公開となる「Not Get」は、ビョーク扮する蛾の女がすぐ近くで歌うCGによるVR作品。こちらは、実際に展示で体感してください! いずれも、最新テクノロジーとビョーク作品を存分に楽しめる贅沢な体験であることは間違いなしです。

ミュージシャンとしてのブレない指針

オープニングで行われたトークショーで語るビョーク
©Santiago Felipe

「Bjork Digital -音楽のVR 18日間の実験」は、実は現在進行形のプロジェクトなんです。今後、ヨーロッパを2〜3年かけて巡回し、各所でコンテンツを増やしていき、最終的には『ヴァルニキュラ』の全作品をVR化するというプロジェクトの一環なんだとか。ますます目が離せません。そして、この展示のオープニングに際して来日したビョークは、トークショーでこんなことを言っていました。

「私はミュージシャンである以上、自分に与えられた役割というのは、人間らしさ、人間臭さ、人間ならではのソウル、それをいかに伝えるかということだと思うの。それが音楽活動を続けていく何十年ものあいだ、ずっと揺るぎないものだったわ。表現するツールがたとえ生の楽器であろうと、あるいは最新のテクノロジー、コンピュータであろうと、それはブレない指針なの」

超自然大国アイスランドで生まれ、革新的なアイデアで私たちを魅了してやまないビョークの今後の活動に置いていかれないよう、いまだからこそチェックしてみてください。

文:小松祐太(J-WAVE)

Björk(ビョーク)

アイスランド出身のシンガー、ソングライター、プロデューサー、女優。1980年代後半より、ザ・シュガーキューブスのヴォーカルとして活躍し、UK、ヨーロッパを中心にブレイク。1993年のソロデビュー以降、これまでに8枚のスタジオアルバム、映画のサウンドトラック、リミックス盤、ライブ盤など20作品以上をリリースし、その先鋭的かつ多様なサウンドで世界中の音楽ファンから絶大な支持を得ている。今年6月29日より日本科学未来館にて、最新アルバム『ヴァルニキュラ』の360°VR映像作品の展示プロジェクト「Bjork Digital -音楽のVR 18日間の実験」を開催。