2016/05/13
【ネット系女子!】すべての人にロボットを! 女子大生ロボットクリエイター近藤那央さん
ネットを騒がせている女性をご紹介する「ネット系女子!」。連載第3回目は、ロボットクリエイターとして活躍する近藤那央さん(20歳)。慶応SFCに通う現役の女子大生で、個性的な女の子を発掘するコンテスト「ミスiD2015」を受賞したこともあるメカ系ガールだ。
高校時代に、同級生と共にペンギンロボット研究開発チーム「TRYBOTS」(トライボッツ)を結成し、2013年に出場した水中ロボットコンベンションではなんと優勝! 女子大生ロボットクリエイターとして注目を集める近藤さんに、ペンギンロボットを作った理由、チームへの想いを伺った。
女子高生の好奇心から生まれた、"愛され系"ペンギンロボット
3Dプリンタなどの機材約150点を自由に使える、秋葉原にあるものづくり支援施設、「DMM.make AKIBA」。近藤さん率いるTRYBOTSのメンバーは、ここを拠点に制作活動をしているそう。取材に伺うと、近藤さんとロボット制作真っ只中のTRYBOTSのメンバー・仁科さんと室谷さんが出迎えてくれた。
――これが水中ロボコンで優勝したペンギンロボット「もるペン!」ですね。しかし、なぜペンギンを作ろうと?
「高校の時、卒業研究でロボットを作る課題があったんです。どんなロボットを作ろうか、友達と水族館にネタを探しに行ったとき、水の中を泳ぐペンギンに目を奪われました。『どうして水の中であんなに早く泳げるんだろう? 面白い!』って。これまで、あんな風に早く泳げるロボットは見たことがなかったし、魚のロボットはすでに世の中にありました。だったら、自分たちの手で泳ぐペンギンを作ってみようと思って制作を始めたんです。高校最後の夏休みは、ほとんど制作に費やしていました(笑)。そうしてできた『もるペン!』を水中ロボコンのフリー部門に出場させ、優勝することができました」
――ペンギンが早く泳げる秘密に惹かれたんですね。
「はい。でも、見た目のかわいさも大事だと思っています。ロボットが人間の日常に溶け込むには、愛着を沸かせる必要があると思っているので。たとえばアニメの『ピングー』は喋らないのに動きだけで気持ちがわかりますよね。しかもかわいい。それがロボットに取り入れられれば、より人に受け入れられる存在になると思います」
――モチーフのペンギンはどんな種類ですか?
「マゼランペンギンです。実際にすみだ水族館へ行って本物を触らせてもらったり、サイズを測ったりしました。なので、ロボットのサイズはほぼ実寸です。触ってみて気づいたんですけど、ペンギンの羽ってすごく柔らかいんですよ。最初は、クリアファイルと薄い鉄板を組み合わせて翼を作っていましたが、今は翼の形に切り出したゴムを使っています」
――ゴムの切り出しも自分たちで?
「いえいえ、ゴムを削るのはすごく難しいので、チームの活動に協賛していただいてる企業にお願いしています。ほかにも、廃材をロボットに利用させてもらったりなど様々なサポートを受けているんです。夏休みは工場に行って、ロボットに使える廃材めぐりをすることもありますよ」
――「もるペン!」は第6機目までできていますが、本物に近づけるにはどの点が足りないと思いますか?
「翼の動きですね。本物はもっと滑らかだし、早い。もっと羽ばたきの推進や、動く角度にこだわって作っていきたいです。でも、第6機目は潜水や旋回ができるようになり、最初に描いていた最低限の目標をクリアできました。今後は、心があるように見せる機能や、写真を撮れる機能も搭載したいです」
――その機能をつける目的は?
「より『もるペン!』 を人に楽しんでもらいたいんです! 以前、ロボットを子どもたちに見せたら、とても喜んでくれて。それがすごく楽しかったので、より人とコミュニケーションを深められる機能を搭載して、人に愛される存在になってほしいなって」
TRYBOTSは、ひとつのバンド的存在
――TRYBOTSは、メンバーごとに役割分担をしてるんですか?
「はい。私は全体をまとめたり、PRを担当しています。ほかにも電気系統担当、ソフトウエア担当、構造設計担当、デザイン担当とそれぞれ分かれています。デザイナーには、ロボットの外見のデザインに加え、名刺のデザイン、チームのロゴも作ってもらいました。個人でもの作りをする時にアイコンがあると、普通の学生チームとは一線を画せるので。あと、チーム全体の士気も上がりますしね」
――それぞれに役割があるんですね!
「そうですね、ノリはバンドです(笑)。最初も遊びのような感覚ではじめたんです。でも、どんどんやりたいことや興味が湧いてくる。それが楽しくて続けていたら、少しずつ仕事が来て。遊びが仕事にできる可能性を感じています」
――TRYBOTSのメンバーは個人的にも仲はいいんですか?
「一緒に遊びに行くようなことはほとんどないですね......。みんな、作り終わったらパーッと騒ぐ感じじゃなくて、サッと切り替えてまた次のロボットを作るような、淡々とした人達なので。遊びに時間使うくらいなら工場見学行かない? みたいな(笑)。あ、でも普通にご飯を食べに行ったりはしますよ!」
スマホのような存在になるロボットを作りたい!
――普段はどんな生活を送っていますか?
「家が遠いので、大学で夜遅くまで勉強漬けの毎日です。それが終わったらここ(DMM.make AKIBA)に来て作業しています。メンバー全員が違う大学に通っているので、一緒に作業ができる貴重なスペースなんです。ほかのエンジニアの方々と交流して情報交換することもありますよ」
――そろそろ各々の進路も考える時期だと思いますが、これからTRYBOTSはどのように活動していく予定ですか?
「TRYBOTSの活動は、大学を卒業しても続けていきたいです。『もるペン!』のような人に愛されるロボットを研究して、それを実際に制作したものを販売してたくさんの人に普及させたい。 でも、自分自身は純粋な研究職には向いていないと思っています。ずっと机に向かっているより、アイディアを出したり、人と人を繋げたりする方が好きなので。だから、私ひとりではなく、それぞれができる分野で協力しあって、TRYBOTSが会社として独立できるようにしたいんです。来年は就活の時期なので、就職しなくてもいいように、今年中に大きい結果を出さなきゃって、実は焦ってます(笑)」
今女子大生が萌えるのは"カワイイ"部品!?
――近藤さんは普段、どんなアプリを活用していますか?
「Slackというエンジニア向けのチャットアプリです。プログラム言語がそのまま送れたり、チャットルームをつくって会話ができるんですよ。メンバーの予定も把握できるので、便利なんです。あとは機械を分解して出てきたかわいい部品をインスタグラムに投稿したり......」
――え、かわいい部品?
「かわいい部品に萌えるんです(笑)。最近だと、壊れて放置していたラジオを分解して、かわいいと思ったパーツだけ取り出しました。これなんか、ピッキングにマブチのモーターが2個もついてて、ちゃんと日本で作られたものなんだなって思うと感慨深いです」
――最後に、近藤さんの人とロボットの未来予想図を教えてください!
「スマホのように、ロボットを1人1台持っているような未来です。でもそのためには、安全面や市場の面でクリアしなくてはいけない課題が山ほどあります。だから私は、まずはロボットに対して興味を持ってもらって、日常に受け入れてもらえるようにTRYBOTSの活動を積極的に広めていきたいです。そしてそんな未来が来た時に、私たちTRYBOTSが貢献できることを願っています!」
ロボット作りに対する情熱やメンバーへの想いを、瞳を輝かせて語ってくれた近藤さん。いずれ本物と見分けがつかない「もるペン!」が、ペンギンと仲良く泳ぐ姿を見られる日が来るかもしれない。
文:服部桃子(アート・サプライ)
撮影:有坂政晴
近藤 那央(こんどう・なお)
1995年生まれ、慶応義塾大学環境情報学部在学中。高校時代にペンギンロボット開発チーム“TRYBOTS”(トライボッツ)を結成し、2014年3月すみだ水族館にてペンギンと一緒に泳がせた。Tokyo Designers Week 2014 スーパーロボット展出展、日本テレビテクノロジー番組SENSORSメンバーとして取材も行う。個性的な女の子を発掘するアイドルオーディション、ミスiD2015にて応募者約4000人の中からミスiD2015を受賞。大学では慶應義塾體育 會航空部に所属。最近ハマっている事はグライダーで飛ぶこと。