2016/03/14

【紳士のSNS講座】第1回 「初上陸した話題のレストランに行ったこと」を自慢する

最近、海外の有名飲食店が次々日本に(主に東京に)上陸していますね。テレビでリポーターのかわいこちゃんが巨大バーガーにかぶりつく様子などを観ると、「行きたいな」となるのが人情。で、せっかく行ったらやっぱりSNSにアップしたくなるのもまた人情です。

とはいえ、自慢しているように思われるのはイヤですよね? 「テレビ観て行った」とか「流行りだから行った」とか思われると、顔から火が出るほど恥ずかしい。

ですが恐れることはありません。SNSとはいわば「大人が集う、お自慢サロン」。ひとの行動の動機の何割かは、今や間違いなく「SNSでのお自慢のため」です。それをスムースにファンタジックに実践することができれば、人生はより活動的で、より豊かなものになるでしょう。そしてあなたが先陣を切ってお自慢することで、あなたのまわりもお自慢しやすくなり、互いに暖かいコメントを残し合うことになるのです。

だから「TIME & SPACE」では積極的な「お自慢」を推奨します。合言葉は「オール・フォー・SNSお自慢!」。すべてはSNSでのお自慢のために。

ただし無邪気な自慢は、ときに誰かを傷つけたり、いわれのない妬みや恨みを買うことがあります。「自慢一行、怪我一生」とは、先人もよく言ったもの。大丈夫。ささやかな知識と経験さえあれば、そうした事故を未然に防ぎ、あなたのICTライフは一層豊かになることでしょう。この連載では実例を挙げ、様々な局面ごとの具体的なお自慢の技術をご紹介していきます。

「前から知ってた」けど「そんなに関心なかった」を装う。

さて、作例をみていきましょう。こちらの書き込み、実はおおむね自慢です。

※この事例は実幾万もの投稿の中からモテエッセンスがはみ出されていたタイムラインのコメントを事例に本講師により再現されたものです。

■ポイント①「アメリカにいたとき、とうとう行けずじまいだったあの店」

まず、「前から知っている感」。件のお店の上陸以前に本国に行った経験があれば、このように書いていいでしょう。「いた」としていますが、たとえ現地視察の短期出張や旅行でも「いた」ことに違いはないので、ここは臆せず「いた」でいきましょう。ただし、誰もが日本上陸前に現地にいたという幸運に恵まれるわけではありません。その場合は「噂は前々から」で入っても十分です。こんな紋切り型の表現ひとつで、「テレビを観て知ったわけではない」ということを表明できるのです。

■ポイント②「オープンしたことは風の便りに聞いた」

こちらには2つの効果があります。まずは「知ってましたけど何か?」という立ち位置を明確にすること。そして「秘密の案件でバタバタ」と連携させることで「とはいえ、より大事なのは仕事」をアピール。「情報をフォローし続けたわけではない」「ゆえに行列してることも知らなかった」という展開です。これはとりもなおさず、「流行ってるから行ったわけではない」を強化してくれます。

一方で「海外に行く仕事を任されている」という、ともすればイヤミになりかねないご自慢をさりげなく表現している点でも評価できます。実は冒頭の「行けずじまいだった」もここで効いてきます。つまり現地にいて行くチャンスはあったものの、「仕事でバタバタしていたのだなあ」と、読む者に想起させます。

■ポイント③「たまたま」「近所らしいので」「ついでに参戦」

決してググッて行ったわけではなく、訪問先で話題になったから、という「そういえば感」を3連コンボで畳み掛けます。

■ポイント④「ご近所さんは絶対行った方がいい!」

ここまでで十分なのです。きわめて巧妙に自然に自慢はなされています。ですが、この一文を付け加えることで、エンディングをあまりに鮮やかに演出しているのです。

単に行って来たことの報告(≒自慢)ではなく、「みなさんにも食べて欲しいから紹介しました」感の醸成。おどけた表現を使うことでちょっとした違和感を出します。これは最後のフック。そして最後の一文だけを1行開けて配置することで、本当に言いたかったのはこれなんだよね、ということを明快に表しているのです。

このさわやかすぎるエンディング、フォロワーたちに「ワタシも今度行く〜」的な、ポジティブなコメントを多数寄せさせることになります。


さあ、もう安心。これで「初上陸した話題のレストランに行ったこと」をお自慢するためのスキルは完璧にマスターです。もちろん、「初上陸」にこだわる必要はありません。「単なる話題のレストラン」「近場の新店」などへのダウンコンバートも可能。今まで躊躇していたみなさんも、これを機会にバンバンお自慢してみていただけるとうれしい限りです。

絵:Shu-Thang Grafix

講師:武田篤典

何気ない所作のなかにある「モテ」を顕在化し、好評を博した『スマートモテリーマン講座』著者。SNSなど各種コミュニケーションにおける礼儀作法を研究する「武田流万(よろず)礼法」家元。

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