2015/09/18

『コンピューターおばあちゃん』は実在した

スマホにパソコン、タブレット型PCと、今や誰もが何かしらのデバイスを持つ時代だけど、いわゆるシルバー世代はなかなかついてこれないんじゃないかっていうイメージがあります。実際、筆者のおじいちゃんもIT関連はからきしダメで、検索のやり方を毎回、電話で聞いてくるという本末転倒っぷり......。でも、たとえばメールやSNSで気軽に連絡が取れるようになったら楽しいし、安心にもつながるんですよね......。

今やシニア世代の5割がタブレット!?

というわけで、今回はシニア世代のITライフ事情を調査すべく、「コンピューターおばあちゃんの会」代表の大川加世子さんに話を伺いました。1997年に発足した同会では、シニア世代に向けたパソコンサロンを楽しんでいて、ネットスーパーでお買い物をしたり、アニメをつくったりと、実践的な活動を行っています。過去にはBBCやThe New York Timesなどから取材を受けたことがあるのだとか。

「コンピューターおばあちゃんの会」代表の大川加世子さん。ご自宅には自作PCをはじめ、iPadなどのデバイスが並ぶ

――「コンピューターおばあちゃんの会」はどんな主旨で行っているんでしょうか?

大川「今は高齢者の"おひとりさま"が増えているでしょう。でも、パソコンやインターネットがあれば、孤立しないで仲間とつながることができるんです。うちではメーリングリストを使って、会員の方に24時間オープンの"お喋り広場"を設けています。深夜に誰かが『月が綺麗ね』なんて書くと、3分後に『本当ね』なんてレスがきたりして(笑)」

――レ、レス早い! ではシニア世代がパソコンなどをはじめるにあたって、つまずきやすいポイントはありますか?

大川「会員のなかには80代や90代の方もいらっしゃるので、『手が震える』んです。もちろんキーボードを両手で打つこともできません。でも、それでいいんですよ。雨だれのようにポツポツポツと人差し指で押しながら、ゆっくりと文字を打てばいいんです」

――......「手が震える」は盲点でした。確かに仕事で使うわけじゃないから、ゆっくり自分のペースでいいですよね。ところで、みなさんはパソコンやスマホ、タブレットのなかでなにを使っている方が多いですか?

大川「今は5割くらいがiPadなどのタブレットですね。パソコンを触らずに、タブレットからスタートする人が増えていますよ」

――それは意外! なにか理由があるんですか?

大川「タブレットの方が直感的に操作できるし、画面も大きい。なにより気軽に外に持ち運べるでしょう。シニア世代って、実際に端末を持って外に出かけると覚えが早いんです。以前も、『コンピューターおばあちゃんの会』でタブレット片手にスカイツリーまで遊びに行きました。まずは地図アプリを使ってどのルートで行くか考えて、GPSを見ながらスカイツリーを目指したんです。到着したら、タブレットのカメラでスカイツリーを記念撮影。1日かけて、タブレットの使い方を覚えたんですよ」

大川さんが愛用する手作りのiPadケース。肩から掛けられるよう紐がついており、中には型紙で作ったiPadスタンドも

――身体で覚えた方がいいんですね。

大川「はい。会のなかにはスマホを片手に日本中を1人で旅をしている80代のおばあちゃんがいらっしゃいますよ! スマホで撮影した旅先の写真をみんなに送って『今、○○にいます!』って、報告してくれるんです。それに対して誰かがコメントしたり。もちろん、ホテルもスマホで予約していて、『旅にスマホは欠かせない』ですって(笑)」

――シニア世代のITライフ、想像以上かも......。実はうちのおじいちゃんにもタブレットを使いこなしてもらいたいのですが、なにから始めればいいですか?

大川「メールから始めてみてはどう? あなたに『つながったよ』ってメールを打ってもらって、返信をすれば、おじいちゃんはすごく喜ぶと思いますよ。シニア世代にとっては"みんなとつながることが大切"なんです。たとえば、おじいちゃんやおばあちゃんが台風の夜に家にひとりでいるのは心細いからと、先ほどのメーリングリストで、『台風が過ぎるまでみんなおしゃべりしよう』って盛り上がったこともあります。シニア世代にとって、パソコンやスマホ、タブレットは、誰かとつながるための大切なコミュニケーションツールなんですよ」

シニア向けスマホ教室に潜入!! みなさんの反応は?

意外にも進んでいたシニアのIT事情。続いては、シニアのITビギナー事情を調査します。訪れたのは、福生市シルバー人材センターが主催する「KDDI楽しいシニア向けスマートフォン教室」。同教室は、これからスマホの購入を検討されているシニアに、わかりやすく基本から使い方を教えるもの。もちろん、参加者は「スマホを持っていない・触ったことがない方」ばかりです。

教室にお邪魔すると、そこにはスマホとテキストを真剣な眼差しで見つめる60歳以上のおじいちゃん、おばあちゃんたちの姿が

まずは講座内で登場する専門用語の解説から始まり、1人1台用意されたスマホの電源をON! 最初の難関はロック解除。タッチパネルに慣れていないシニアが多いため、画面に触れる力加減やスライドさせるコツをつかむのには少々時間がかかったけど、先生と一緒にタッチパネルの練習をしていると、徐々に感覚がつかめてきた様子。

続いて、文字のタップ入力やフリック入力、音声入力も習得。電話のかけかたやインターネット検索、デジカメ撮影など、ひと通り基本操作を学びます。ちょうど教室の日が9月1日だったため、「防災の日」にちなんで災害時に役立つ「au災害対策アプリ」の使い方も学んでいました。さて、実際にスマホを操作したみなさんの反応は? 参加した方に聞いてみましょう。

教室では紅一点だったSさん

「手順よく丁寧に教えてもらったので、とても分かりやすかったです。店員さんが相手だと『こんなことも聞いていいのかしら?』と不安になることもありますが、教室でみなさんとお話しをしながら学べたので、緊張することなく、楽しくスマホを触ることができました。自分で買ってスマホを触ってみるよりも、こうした教室で使い方を学んでから触るほうが、ずっと馴染みやすいと思います」(Sさん)

カメラに興味津々だったKさん(62歳)

「ぜひカメラ機能を使いこなしてみたいです。これまで写真を撮りたいと思ったときにはカメラがないとどうしようもありませんでしたが、スマホは普段から必ず持っているわけでしょう。それなら、いつでもどこでも写真が楽しめますよね。それに解像度も高く、画面もきれいですから、写真を撮るのがもっと楽しくなりそうです」(Kさん)

パソコンの経験はあるというHさん(75歳)

「普段からテレビや雑誌なんかで何度もスマホを目にしてきましたが、私としては触ったことがないからサッパリ分からないんです。でも、今回は実際に自分の手で操作できたし、パソコンよりもずっと簡単なものだと感じました。それに、地図やカメラ、文字入力などもボタンひとつ、声ひとつでサクッと操作できるのはとても便利だと思います」(Hさん)

教室でスマホにより興味をもったMさん(67歳)

「スマホのよさは持ち歩けることですね、地図アプリはとても便利そうだと思いました。画面も大きいので、よく見えるのがうれしいです。実はLINEにも興味があるので、いつか試してみたいです(笑)」(Mさん)

シニア世代にはスマホが入りやすい!

講師の大野雅弘さんは、スマホ画面をモニターに拡大しながら、分かりやすく指先の操作を解説していた

大好評だった今回のスマホ教室。当時の講師を務めたKDDI認定講師の多摩市シルバー人材センター会員、大野雅弘さんは、普段はパソコンスクールやデジカメ講座などを開催しているとか。大野さんがシニア世代ということもあり、参加者は親しみやすかったのでは?

大野「今やインターネットやダウンロードなど、シニア世代の方が初めて耳にする言葉がどんどん生まれています。教室でいきなり専門用語を使うと、受講者は置いてけぼりにされてしまうので、教室では最初に用語の説明をしています」

――確かにシニア世代にとっては未知のワードばかりかも。実際、シニア世代がスマホに馴染むためにはなにが効果的だと思いますか?

大川「地図や写真など、身近なアプリを使いこなすことが上達の早道です。スマホを持って散歩をして、道中で気になるものを見つけたら写真を撮るだけでも練習になります。歩数計のアプリで体調管理するのもオススメ。シニア世代は、『スマホは難しい』というイメージをもちがちですが、実際はパソコンよりも起動時間も短く、キーボードなしで操作ができ、買った時点ですぐにインターネットや電話が使えます。ハードルが低いから、パソコンを触ったことがない方でもスムーズに使い始めることができるはず。ただし、怠ってはいけないのがセキュリティ対策。安心して、楽しくスマホを使うためには、余計な個人情報の入力は控える、アプリをダウンロードする際には利用規約をしっかり読むなど、被害にあわないよう心がけることが大切です」

今回の授業ではダウンロードの際に利用規約のこともしっかりと解説していました。逆にスマホに慣れている私たちの方が、利用規約とかちゃんと読んでないかも......。それにしても、なぜKDDIはシニアのITライフをサポートする活動を行っているの?

"シニア世代のみなさんに、ケータイで新しい世界を体験してほしい"という思いから、KDDIは2012年に『ケータイ教室』をスタートしました。それがスマホ教室やタブレット教室に進化し、今では年に200回のペースで定期的に開催するようになりました。シニア世代にとって、スマホやタブレットは、日々の生活をより楽しく快適にしてくれる道具であり、家族や友人、そして地域の人たちをつなぐコミュニケーションツールでもあると思います」(KDDI CSR・環境推進室長 鈴木裕子)

シニア世代のITライフは、これからもっと盛り上がっていくはず! 私もさっそく、おじいちゃんにタブレットをプレゼントしてみようかな!

文:田代くるみ
撮影:稲田 平

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