2015/08/31
「中心のないポータル」ってどういう意味? Syn.の森岡CEOに聞いてみた
8月6日、東京・青山のオフィスに「はてなブックマーク」「NAVITIME」など著名ITサービスのスタッフが集い、アイデアソン※が開催された。テーマは「ウェディング」に関する新たなサービスを考え出すというもの。開催場所となった東京・青山が、都内有数のウェディング関連施設・企業が集まるエリアであることからこのテーマが選ばれ、審査員にはウェディングプランナーであり『学年ビリのギャルが1年で偏差値40上げて慶應大学に現役合格した話』(角川文庫。通称「ビリギャル」)のモデルでもある小林さやかさんが加わった。※アイデアソン=参加者をいくつかのチームに振り分け、特定のテーマに沿ったITサービス、テクノロジーのアイデアを競い合うイベント。ハッカソンは実際にサービスやシステムをつくりだすところまで行うイベントだが、アイデアソンはその前段階となる構想を生みだすもの
審査員としてアイデアソンに参加した「ビリギャル」のモデル、小林さやかさん
「今回、アイデアソンを開催した意図は2つ。1つは、Syn.(シンドット)でアライアンスを組む企業同士のシナジーがもっと生まれれば、という思い。もう1つは、Syn.の現場で働く人々が個人間のつながりを深めてほしいとの思いからです」
プレゼンするアイデアソンの参加者。手前中央で後ろ姿を見せているのは、審査員を務めた森岡CEO
そう話すのは、アイデアソンを主催したSyn.ホールディングスの森岡康一代表取締役CEO。Syn.は「中心のないポータル」を掲げるプラットフォームで、Syn.allianceに加盟するスマホサービス上で展開される「Syn.menu」から相互に情報を閲覧できる仕組みとなっている。構想発表時には13サービスが参画したが、その後食べログなどが新たに加わり、現在では21サービスへと拡大している。アイデアソンに参加した人々もSyn.alliance加盟企業のスタッフだ。
ただ、「中心のないポータル」というキャッチフレーズだけでは、Syn.がどういったプラットフォームか、どんなメリットがあるのか、実感するのが難しいかもしれない。そこで、森岡CEOにSyn.についての話を聞いた。
森岡康一(もりおか・こういち) インテリジェンス、ヤフージャパンを経て、2010年、フェイスブック日本法人に入社。副代表に就任し、日本でのユーザー獲得に取り組む。2013年にKDDIへ移り、新規ビジネス推進本部担当部長としてSyn.構想を打ち出す。2014年、Syn.ホールディングス代表取締役CEOに就任
――「ポータル」というと、Yahoo!、Excite、Infoseekなどを思い浮かべますが、Syn.の掲げる「中心のないポータル」は、それらと同様の感覚で利用できるということなのでしょうか?
「ポータル」を日本語にすると「玄関」という意味になりますが、パソコンでインターネットが見られていた時代は、検索ができる、ニュースや天気予報が読めるなど、ポータルサイトがまさにネットの入口として機能していました。ただ、スマホの時代となった今は、ホーム画面が玄関に近い。ホーム画面は人それぞれカスタマイズされており、人によって必要な情報が異なります。Syn.はYahoo!などのように「Syn.というポータルサイトへアクセスする」という仕組みではなく、21あるアライアンスのスマホサービスの、どこから入っても各サービスがつながっている。それが、「中心のないポータル」の指す意味です。
アライアンスメンバーのサイトにアクセスすると、四隅にサイドメニューを開くボタン(緑の丸で囲った部分)が用意されている
――アライアンスメンバーのスマホサービスにアクセスすると、サイドメニューから「ニュース」「天気」「占い」など、ほかのアライアンスサービスが提供する情報が見られますね。
それが、Syn.が提供するプラットフォームの第1弾「Syn.menu」です。なぜ、こうしたものを作ったかと言えば、本当に良いサービスがインターネットを利用するすべての人に届いていないのではないかと感じていたからです。ネットに対するリテラシーの高い人ならば、アドレスバーから検索するだけで欲しい情報を引き出せます。その一方で、「アプリをダウンロードする」という行為すら難しいと感じてしまう人もいるのが事実。そんな人でもSyn.menuを使えば良質なサービス、情報を手に入れられることを目的に、開発しました。
さらに、2015年7月には、全国の花火大会情報に加え、浴衣の着こなし方など、アライアンスメンバーが保有する花火に関連する周辺情報を集めた合同企画を実施するなど、Syn.menu以外でのサービス同士のつながりを実現しています。
――Syn.menuに表示される項目は、ユーザーごとにキュレーションされているんですか?
現状では、Syn.が良質だと考えるサービス・情報を提供するのみですが、すでに、ユーザーの回遊パターンもいくつか分析しており、将来的にはDMP(データマネージメントプラットフォーム)という仕組みを交えながら個々のユーザーごとのキュレーションやカスタマイズを考えています。今後は、DMPを活用することで、Syn.menuとは違った新しいモバイルインターネット体験をご提案していきます。
――「回遊」という言葉が出ましたが、森岡さんご自身は普段、どのようにSyn.のプラットフォームの中を回遊されているのでしょうか? ユーザーの方の参考にもなると思うので、教えてください。
朝起きてまず、「天気」(ウェザーニュース提供)をチェックすることが多いですね。次に「カレンダー」(ジョルテ提供)をチェックし、その後、最近のトレンド情報などをまとめて確認できるので、「はてブ(はてなブックマーク)」を見るという流れが多いでしょうか。はてブも、ニュースのようにさまざまな情報が入ってくるので面白いですね。
アイデアソンはSyn.ホールディングスのオフィスで行われたが、ここは一部のアライアンス企業も入居するシェアオフィスとなっている
――ビジネスパーソンの方々は、森岡さんと同様に情報収集する回遊パターンが多そうですね。
ええ。社内の分析でもそうした結果が出ています。また、主婦の方ですと「贅沢体験チケット」(LUXA)→「ファッション」(iQON)→「占い」(cocoloni)といった回遊パターンが多いですし、若い方ですと「ゲーム」(ゲームギフト)→「はてブ」→「ランキング」(Qrank)といったステップを踏むことが多いようですね。
――「Syn.」とは、どういった由来・意味なんですか?
開発時は「シナプス」(Synapse)というコードネームでした。脳のシナプス細胞のようにさまざまなことがつながっていくという意味です。ただ、シナプスのほかにも、シナジー(Synergy)、シンジケート(Syndicate)、シンクロナイズ(Synchronize)など、みんなで何かをするという意味の英単語は、Synから始まる言葉になっています。そんな「共有」「共同」「共に」といった意味をSyn.というワンワードで表しているんです。
――最後に、Syn.の目指すものを教えてください。
「Syn.で◯◯するぞ」「Syn.というプラットフォームがあるから便利に使ってみよう」などと、Syn.を意識的に使ってもらうことは望んでないんです。例えば、「インテルが入ってるからパソコンを買う」っていう人よりも、「インテルというものがパソコンの中に入っているらしい」と思う人の方が多いはずですよね。そんな「インテル入ってる」と同じように、Syn.ももっとスマホのなかに溶け込んだプラットフォームでありたい。「あ、今まで使っていたのがSyn.というものなんだ」といった形で、Syn.の各サービスが自然に利用されるようになるのが、理想ですね。
Syn.はauスマホのユーザーでなくても、アライアンスのスマホサービスにアクセスすることで利用できる。まだ試したことがなければ、下記のスマホサービスからSyn.が提供する「中心のないポータル」を実感していただきたい。
〈Syn.allianceメンバー(2015年8月現在)〉
ウェザーニュース/報道ヘッドライン/cocoloni/ジョルテ/NAVITIME/食べログ/フォートラベル/LUXA/iQON/@cosme/ispot/レシぽん/nanapi/はてなダイアリー/はてなブックマーク/ゲームギフト/映画.com/音楽ナタリー/コミックナタリー/Qrank/uP!!!
文:藤麻 迪
撮影:有坂政晴
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