2015/08/04

レッサーパンダの名付け親になれる“お礼”も! 地域支援型クラウドファンディング『FAAVO』が大盛況

上京して社会人生活を送る地方出身者ならば、誰でも一度は故郷に思いを馳せた経験はあるだろう。かく言う筆者も九州・宮崎県の出身。ヘロヘロになるまで働いたあと、帰りの電車の窓に映った目の下のクマのひどい自分の顔を見ると、「あぁ......田舎に帰りたい。南国の風を浴びながら、おいしい地鶏をツマミに焼酎を飲んで癒されたい......」と、何度思ったことだろうか。

もちろん、そうやすやすと仕事を放棄して田舎に帰れはしないのだが、地方出身者にとって故郷とは、自分の心のよりどころとなるような場所だ。できることなら、東京に居ながらも、何かしら故郷と接点を持ったり、少しでも故郷が良いまちであり続けてほしいと思うものである。

そんな故郷への思いをかなえてくれるサービスがある。株式会社サーチフィールドが運営するクラウドファンディング「FAAVO(ファーボ)」だ。これは、自分が地域を盛り上げるプロジェクトの発起人となって資金を集めたり、逆に遠方に居ながらも、そうした地域のプロジェクトを支援することができるというもの。クラウドファンディングであるため、もちろん援助した人は"お礼"をもらうことができる。

FAAVO事業部リーダー 八木輝義さん

「2011年の東日本大震災後、社内にいる地方出身社員のあいだで、東京に居ながら自分の地元とつながることができるサービスをつくりたい」という声が上がりました。そこで、地元が今どんなことで盛り上がっているのかを知ることができ、かつその動きを応援できるサービスがあってもよいのではと思ったんです」。立ち上げの経緯を話してくれたのは、FAAVO事業部リーダーの八木輝義さん(愛媛県今治市出身)だ。

現在会員数は1万6,000人ほど。サイト内には常時30ほどの全国各地のプロジェクトが掲載されているという。実際にサイトを見ていると「大島ば元気にするバイ! 九州離島での無料プロレス興行!!」(福岡県)、「日本初!? 夜にお城を探検する『津山城ナイトアドベンチャー』を開催したい!」(岡山県)など、ついつい参加してみたくなるようなプロジェクトがずらりと並んでいる。が、正直気になるのが"お礼"の内容だ。

では、今まででいちばんすごい"お礼"はどんなものだったのか? 「過去には『レッサーパンダの命名権』がもらえるという例もありましたよ」と、八木さん。レ、レッサーパンダ? あの絶滅危惧種の!? そんな稀少なレッサーパンダ君に、私ごときが名前を付けられるんですか!?

これは、福井県鯖江市にある日本一敷地面積の小さいことで知られる西山動物園が、過去に実際に立ち上げたプロジェクトの事例だ。西山動物園は開園以来、入園料無料で運営を行ってきたが、施設の老朽化やエサの高騰で運営が厳しくなっていた。そこでFAAVOで運営資金の援助を募集。10万円を支援した人のリターンのひとつとして、「レッサーパンダの命名権」を用意したのだという。ちなみに、最終的には目標の100万円を大幅に上回り、230万円もの支援金が集まったという。

「プロジェクトのなかには、地元の名産品といった"目に見えるもの"のほかにも、西山動物園のように"目に見えないもの"をリターン品として用意しているケースもたくさんあります。特に、そうした権利や経験といったリターン品をもらった人は、必ず『自分が名付けたレッサーパンダに会いに行こう』と思ったり、『支援したイベントに参加してみよう』と思うことが多いので、地域に人の流れを作るきっかけにもなると思っています」(八木さん)

今後は、新たに「地域の『らしさ』を誰もが楽しめる社会をつくる」ことを目指すビジョンとし、地元だけでなく、学生時代に過ごした地域やおじいちゃん、おばあちゃんがいる地域、配偶者の地元など、自分の思い入れのあるエリアを120%楽しむことができるサービス展開を行っていきたいとのこと。これからも東京のみならず、全国各地に散らばる地域の資源を活かしたエキサイティングなプロジェクトが続々と登場しそうだ。

文:田代くるみ