2015/04/30

ゼロ戦の復活からゆるキャラまで! 『READYFOR?』に見る、日本におけるクラウドファンディングのいま

ここ数年で、急激に耳にする機会が増えた「クラウドファンディング」という言葉。現在の日本ではプロジェクトを公開して出資者を募り、目標金額を達成した際にはリターンを返す、という「購入型」が主流だ。

プロジェクトは、企業が募集する「アニメ作品のスマホケースの作成」や「映画作品のフィルムのレストア」といったものから、個人発信の「地元の古民家をカフェに改装したい!」といった案件まで、多種多様なものが探せばいくらでも出てくる。

数千万円規模のプロジェクトの成功例も

クラウドファンディングサービス「READYFOR?」米良はるか代表

「『クラウドファンディング』の認知度は調査を見るとまだまだですが、この1年ほどで急速に広がってきた感触はありますね。2014年8月以降は、毎月のように総額1,000万円以上のプロジェクトが成功するようになってきています」と話すのは、日本初の購入型クラウドファンディングサービスで、10万人の会員数を誇る「READYFOR?」を運営する米良はるか代表。

「READYFOR?」で1,000万円以上の資金集めに成功した「くろがね四起」復元計画の画面キャプチャ

実際、「幻の国産車『くろがね四起』の復元計画」や、「唯一日本人が所有しているゼロ戦を日本の空で飛ばしたい」という企画が数千万円の資金を集めるのに成功している。「古いものを残していきたい、というプロジェクトは共感が集まりやすいですね」と言うが、ほかにもLGBTをはじめとするセクシャルマイノリティのイベントや、ゆるキャラのプロジェクトなどの成功例が増えているという。

そんな中、似たようなプロジェクトでも、資金集めが順調なものと苦戦している案件で明暗が分かれることもある。
「プロジェクトの実行者には当社のキュレーターが付いて、リターンの設定などを相談して決めていきます。例えば『くろがね四起』の場合、助手席に乗って会場内を何周か回れる権利のようなプレミア感のある体験価値が人気です。もちろんリターンの設定も重要ですが、最も大事なことは、『なぜそのプロジェクトをやりたいのか』という思いの強さや熱を伝え続けることだと思います」

スマホからでも支援は可能

2014年に達成額が急激に伸びたという「READYFOR?」だが、同年春にはモバイル版の運用を開始。スマートフォンからでも、気に入ったプロジェクトを支援するところまで可能になった。ただ、実際にプロジェクトへ出資している人は、まだPCの方がスマホよりも多いのだという。
「電車に乗っている時などにスマホで見る場合も、自宅に帰ってからPCで支援するプロジェクトを決めるケースが多いようです。今後はかんたん決済の導入など、スマホからもカジュアルに応援できるようなユーザービリティの改善を行う予定です」

「アート ファッション カルチャー」を応援

数ある日本のクラウドファンディングサービスの中でも、「READYFOR?」は社会貢献や海外支援といった「意識が高い」プロジェクトが目立つ。これには米良代表も「そういうプロジェクトを出すサービスだと考えている人が多いかもしれません」と認め、「もちろん必要なことなのですが、ジャンルにこだわらずに敷居も下げていき、いろいろな人に使ってもらえるサービスにしたいですね」と語る。

ジャンルを限定することで、幅広い層からの流入を計ったキャンペーンも展開

こういった課題に対して取り組んでいるのが、テーマごとにプロジェクトを募集するキャンペーンの実施。4月30日まで募集を行っていた「アート ファション カルチャー応援キャンペーン」は、より個人の趣味趣向を生かしたプロジェクトの参加を期待した企画。これまでもアートブックや音楽CDの制作といった案件は少なくなかったが、ここに「ファッション」が加わることが注目される。

「例えば、美大の学生さんが、服を作って販売してみたいというような、いろいろな人のバラエティー豊かなプロジェクトを見せていきたいです。『READYFOR?』は誰もがやりたいことをできるようにするのがミッションで、『お金がなくて実現できないこと』を排除していきたい。今回のように、これまでにないジャンルに広げて、可能性を感じてもらえるとうれしいですね」

プロジェクトを自身で公開するには「PCやタブレットがないと難しい」というが、いちユーザーとして見れば、スマホからアクセスすると達成金額順や、あと少しで100%になりそうなものなどをすぐにチェックでき、画像中心のプロジェクトのページを眺めているだけでも楽しめる。

そこからさらに一歩進めるユーザーを増やすことができるか。クラウドファンディングがより定着するためには、サービスのモバイル対応がカギを握ることになりそうだ。

文:ふじいりょう