2022/12/01

日本の衛星通信を支えてきたKDDI

  • ずっと、もっと、つなぐぞ。au
  • 宇宙
  • 低軌道衛星

衛星通信はKDDIから始まった

日本の衛星通信は、当時の国際電信電話(KDD)が1963年に開所した茨城宇宙通信実験所からスタートしました。そして、1969年に誕生したのがKDDI山口衛星通信所(現・山口衛星通信センター)です。現在、KDDIの衛星通信は山口に集約され、国際通信用の静止衛星と交信するためのパラボラアンテナが約20基(2022年12月時点)配置されています。

では、なぜ山口に衛星通信所を設置したのでしょうか。静止衛星は、理論上3機で地球全体をカバーできますが、山口からは、インド洋上の衛星を使ってヨーロッパと、太平洋上の衛星を使ってアメリカ大陸と通信ができる好立地にあります。また、地震や台風などの自然災害が少ないことも理由の一つです。

これまでの60年にも及ぶ日本の衛星通信の歴史の中でKDDIは、「地上局アンテナの開発」「移動衛星通信システムの開発」「衛星最適配置プログラムの開発」「国際イベントでの映像伝送」といったことを、国内のさまざまなメーカーと一緒になって行い、衛星通信の発展に先駆的な役割を果たしてきました。

KDDIの衛星通信の歴史 KDDIの衛星通信の歴史

静止衛星の特徴とユースケース

衛星通信の主流は、静止衛星です。例えば、気象衛星ひまわりの場合、3万6000キロの上空で衛星軌道上を回っていて、地球から見ると止まったように見えます。

前述したように静止衛星は、理論上は3機で地球全体をカバーできます。そのため、一度に多くのエリアをカバーでき、同報性や耐災害性に優れています。一方、デメリットとして挙げられるのが遅延です。地上と衛星間の距離が長いため、光速でも約250ミリ秒かかってしまいます。

衛星通信のユースケースとしては、NHKの国際放送や南極昭和基地との通信が挙げられます。KDDIでは、南極越冬隊員として昭和基地に毎年1人を派遣し、設備の調整などを行い、昭和基地での生活基盤を維持しています。

また、災害時にいち早く通信できる衛星通信端末のほか、au基地局のバックホール区間に衛星回線を利用しているケースもあります。さらに災害時には、船を基地局にすることで海路で被災地に接近し、地上側の通信の復旧も図っています。

静止衛星の特徴 静止衛星の特徴

低軌道衛星時代の幕開け

静止衛星は大きな役割を果たしていますが、今日、新たな潮流が生まれています。それは、地上と衛星間の距離が近い低軌道衛星が身近な存在になっていることです。これには、衛星の製造技術や打ち上げ技術が民主化するとともに、衛星自体が小型化し、製造コストが安くなっていることが背景にあります。

Starlinkの低軌道衛星は、地球との距離が約550キロ(静止衛星のおよそ65分の1)なので、地球全体をカバーするのに大量の衛星が必要になりますが、低遅延で大容量の通信が可能になります。また、衛星の数が多ければ多いほど、地上を結ぶ地上局が必要になります。そこで、衛星間光通信を活用するといったことも考えられています。

一方で、静止衛星の通信を邪魔しないルール制定といった課題もあります。KDDIでは国際電気通信連合(ITU)の世界無線通信会議(WRC)で、技術統括本部 グローバル技術・運用本部 副本部長 河合宣行が議長を務め、静止衛星と低軌道衛星が共存できるルール制定をリードしています。

低軌道衛星と地上との通信 低軌道衛星と地上との通信