2022/10/20

四輪バギーやドローンなど 悪路を進むKDDIの災害対策

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近年増えている地震・台風・豪雨などの自然災害。そんな時にも通信をいち早く復旧できるよう、KDDIでは災害対策訓練を欠かさない。

東日本大震災から10年後となる2021年2月25日、KDDIは、今後万が一未曾有の大災害が起きた場合でも一刻も早く通信を復旧できるよう、宮城県仙台市で災害対策訓練の内容を披露した。

今回の訓練では、震度7、マグニチュード9クラスの地震が起こったときを想定。大規模な災害が起こったとき、まず行うのは情報収集だ。KDDIでは発災から30分以内に指令となる運用災害対策本部が立ち上がる。訓練では、そこから被災地の現状を確認し、全国にある「車載型基地局」や「可搬型基地局」「ポータブル発電機」など移動可能な機材の出動を準備。車両が近づけない場所では、実証実験中の「ヘリコプター基地局」や「水陸両車」「ドローン」の派遣など、刻一刻と変わる被災状況に合わせて、いち早く通信を復旧するための最適な手段を選択する。

運用災害対策本部での訓練

災害発生後の初動時に活躍するのは、車載型基地局と可搬型基地局だ。
車載型基地局はアンテナなどの通信に必要な設備を搭載した車で、発災後にいち早く災害現場に向かい、現地で基地局を設営して臨時で電波を届ける。

災害発生後の初動時に活躍する車載型基地局は、10年前の東日本大震災時の所有は15台だったが、2021年3月現在では50台に増加。3人から2人での設営が可能になった新型車載型基地局も導入し、少しでも早く被災地へ向かえる体制を整えている。

新型の車載型基地局

もうひとつの可搬型基地局は、基地局の各設備を小型化して持ち運びができるもので、2021年3月現在は137台を所有し、車で移動できない被災地に持ち込める体制を整えている。

KDDIが所有するバッテリー

この可搬型基地局の稼働には発電機を使用しており、これまで3時間しか稼働できないことが課題だったが、外部に燃料タンクを設置するタイプを採用したことで、連続24時間の運用が可能になり、電力供給の再開までの間、通信を途絶えさせず維持できるようになる。

このように基地局の稼働には電気が欠かせない。現在KDDIでは24時間運用できる基地局バッテリーを2,200局所有し、災害時の停電も備えている。

また、豪雨災害など近年、激甚化(げきじんか)している自然災害に備えて、国内通信事業者として初めてとなる、陸路も水上も走れる水陸両用車を導入。車載型基地局での移動が難しい場合は、この水陸両用車を派遣する。

水陸両用車

水陸両用車は、津波や土砂崩れで浸水した場所や散乱物に覆われた悪路などでも、ボート型のキャリアを牽引して荷物などを運搬することが可能で、隔離された被災地に機材を運ぶだけでなく、被災地支援として水や食料などを積むこともできる。

水陸両用車

そのほかにも、KDDIでは、状況に応じて小型で走行性能が高い四輪バギーや、機動力や操作性に優れたオフロードバイクを用意。

雪上用のキャタピラを装着した四輪バギー

オフロードバイク

がれきで基地局に近づけないときや、寸断された道路の先の状況を確認するときには、ドローンを使用する。遠隔作業システムと連携し、撮影した映像を離れた場所からリアルタイムに確認。対策本部と被災地現場で対策の検討を行う。

ドローンを活用した災害訓練

なお、ドローンはドローン基地局として通信エリアの復旧や災害救助の支援など、さまざまなシーンでの活用を予定している。

また、災害や海難捜索救助などにおける要救助者の発見を支援するため、軽量コンパクトな基地局を搭載した「ヘリコプター基地局」の実証実験も行われている。

ヘリコプター基地局から電波を送ることで、遭難者の携帯電話とヘリの間での相互通信が可能になり、避難者の状況などの情報を収拾できる。
また、ヘリコプター基地局と可搬型基地局を連携させることで、通常の携帯電話ネットワークに接続することも可能になり、迅速かつ効率的な救助活動につながる。

ヘリコプター基地局の体験搭乗

全国の災害対策や訓練を取り仕切る担当者はこう語る。

「東日本大震災では“携帯電話を持って逃げる人が多かった”と聞いています。携帯電話を持っていた理由は、連絡できるという安心感だったようです。東日本大震災では1,933の基地局が機能を停止し、エリアが復旧したのは震災から約40日後でした。そのあいだ、被災された方はものすごく不安だっただろうと思います。だからこそ、我々は早期に通信を復旧できるように訓練と改善を行ってきました。東日本大震災から10年後に仙台で災害訓練対策を行ったのは、『いまはより安心して携帯電話をお使いいただけるようになっています』と、東北のみなさんにお伝えしたかったからです」

毎年のように起こる自然災害。自然の大きな力に抗うことは容易ではないが、大災害が起こったときでも、通信があれば人々に「安心」を届けることができる。
だからこそ、少しでも早く通信を復旧できるよう、KDDIは災害にも強い通信ネットワークを構築し、通信を守り続ける。

※この記事は2021年3月25日の記事を再編集したものです。