2022/04/20

豪雨災害の復興イベントを支援 参加者の安全のために山間部へ電波を届けたKDDIの取り組み

2022年3月5日〜6日、熊本県の球磨川(くまがわ)流域の山々を舞台にしたトレイルランニング大会「球磨川リバイバルトレイル」が開催された。

球磨川リバイバルトレイル「球磨川コース」のスタート
球磨川リバイバルトレイルのランナー

トレイルランニングとは、登山道や林道などの不整地を走る、近年人気のアウトドアアクティビティ。今大会では球磨川源流の水上村から八代海を目指す「球磨川コース(距離172km・制限時間42時間)」と、球磨川の支流である川辺川(かわべがわ)が流れる五木村から八代海を目指す「川辺川コース(距離106km・制限時間24時間)」のふたつのコースが設けられ、500人を超えるランナーたちが超長距離の難コースに挑んだ。

球磨川リバイバルトレイルのコースマップ 球磨川リバイバルトレイルのコースマップ

豪雨災害の被災地の復興のために

この大会の開催の目的は、2020年7月の豪雨災害の復興支援と、災害を忘れないために球磨川流域の自然を活用すること。開催地の水上村、五木村、山江村、八代市を流れる球磨川は、流域の人々の暮らしを潤してきた一方で、2020年7月の豪雨では甚大な被害をもたらした。

2020年7月の豪雨災害で被害を受けた道路 2020年7月の豪雨災害発生直後の様子

そんな球磨川の源流から河口までを1本のトレイルでつなぎ、そのトレイルを舞台にした大会の開催を通じて、人と自然の関わりを見つめ直し、被災地の復興を後押しすることがこの大会の狙いだ。

球磨川リバイバルトレイルのランナーたち
球磨川リバイバルトレイルのコース上の崩落箇所 寸断された線路や道路など、今大会のコース上には災害の爪痕が残る箇所も

トレイルランニング大会の開催を通じて、被災地の復興を後押しする。そんな趣旨に賛同し、大会の協賛企業に名を連ねたKDDIは、2020年7月の豪雨災害の発生時、基地局の速やかな復旧対応や避難所での充電設備の設置などの被災地支援活動を行った。

2020年7月の豪雨災害で被害を受けた基地局の復旧作業にあたるKDDI社員
2020年7月の豪雨災害で被害を受けた基地局の復旧作業にあたるKDDI社員 2020年7月の豪雨災害の発生時、基地局の復旧対応にあたるKDDI社員たち
2020年7月の豪雨災害時に避難所で提供されたauの充電サービス 被災地の避難所では充電サービスを提供した

そしてKDDIは、今大会でも通信環境の整備を通じて、大会の運営を支援した。ここではその模様をレポートしよう。

電波が届きづらい山間部に臨時の基地局を設置

トレイルランニングの大会ではコース上に「エイドステーション」と呼ばれる休憩ポイントが設けられ、選手たちは飲み物や食べ物を補給できるほか、救護所やトイレなどが利用できる。

球磨川リバイバルトレイルのエイドステーション
球磨川リバイバルトレイルのボランティアスタッフ 地域住民の方々がボランティアとして携わり、大会運営を支えた

今回の「球磨川リバイバルトレイル」ではコース上の計15カ所にエイドステーションが用意された。KDDIはそのうち山間部に位置する2カ所のエイドステーションに携帯電話の臨時の基地局を設置。大会を運営するスタッフや参加するランナーに電波を届けた。

球磨川リバイバルトレイルのエイドステーション
auの可搬型基地局
auの可搬型基地局

こちらは「可搬型基地局」と呼ばれる小型のタイプ。必要最低限の機材がパッケージ化されており、ヘリコプターでも運搬が可能。災害時には自動車が入っていけない場所でも運搬して組み立てることで設置できる。

auの車載型基地局
auの車載型基地局

こちらは「車載型基地局」と呼ばれるタイプ。アンテナ、無線機、電源など通信に必要な設備があらかじめ搭載されているため、運搬・設置がスピーディに行える。車両エンジンを使って給電が可能。

これら「可搬型基地局」と「車載型基地局」はどちらも衛星回線を使うため、災害現場のような回線がない場所でも設置することができる。

エイドステーションへの基地局の設置を担当したKDDIエンジニアリングの織田知樹は、今回の電波対策にかける思いについて次のように語る。

KDDIエンジニアリング 西日本運用本部 西日本支社 福岡フィールドグループ 織田知樹 KDDIエンジニアリング 西日本運用本部 西日本支社 福岡フィールドグループ 織田知樹

「2020年7月の豪雨災害の際には、KDDIの基地局も被害を受け、たくさんのお客様にご迷惑をかけてしまいました。そこでは通信を確保することがどれほど重要かを再認識しました。

トレイルランニングは山々を舞台に行われるため、コース上に電波が届いていない箇所も少なくありません。KDDIとして、今大会の非常用通信を何としても確保する必要があると考えました。エイドステーションに設置するにあたり、現場はまだ復旧途中の箇所もあり、大会運営のスタッフの方々やランナーの方々の安全・安心を確保したいという思いから、最適な設置箇所や方法を何度も探しました。結果、2020年7月の豪雨災害でも活躍した可搬型基地局や車載型基地局を使って電波対策を実施し、無事に通信をつなぐことができました」

また、KDDIは3カ所のエイドステーションにスマホを充電できる「充電ボックス」を設置。ランナーや大会運営スタッフに充電サービスを提供した。

球磨川リバイバルトレイルのエイドステーションに設置された充電ボックス
球磨川リバイバルトレイルのエイドステーションに設置された充電ボックス エイドステーションに設置された充電ボックス

通信をつなぎ、命をつなぎ、暮らしをつなぐ

携帯電話のつながりづらい山間部が、つながりやすくなる。それは大会の運営においてどのような意味を持つのか。球磨川リバイバルトレイルの実行委員を務める一般社団法人トラックセッションの村上勝紀さんに聞いた。

球磨川リバイバルトレイル実行委員 一般社団法人トラックセッション 村上勝紀さん 球磨川リバイバルトレイル実行委員 一般社団法人トラックセッション 村上勝紀さん

「大会を運営するスタッフ間で連絡を取り合うための通信手段として、携帯電話は欠かすことができません。とりわけ重要なのは医療救護態勢の確保です。ランナーが負傷して救助が必要なときに携帯電話がつながらないと、対応が遅れてしまいかねません。場合によっては命にも関わります。そこで今回の大会では、KDDIさんに相談し、事前の調査で携帯電話がつながりづらいことが確認された山間部のエイドステーションに臨時の基地局を設置していただきました。つながりづらかった場所がつながりやすくなったことで、スタッフ間の連絡をスムーズに行うことができ、大会運営において大きな安心につながりました」

球磨川リバイバルトレイルの通信面での支援を担当したKDDI九州総支社の田本道夫と古賀理一は、この大会における取り組みや被災地への想いを次のように語る。

KDD九州総支社の田本道夫と古賀理一 KDDI九州総支社 田本道夫(左)、古賀理一(右)

「今大会における電波対策は、ひと筋縄ではいきませんでした。特に苦労したのが、球磨川コースの43km地点にあるA2高塚山登山口のエイドステーションへの可搬型基地局の設置です。そこは標高が高い山間部にあり、クルマでアクセスするのもひと苦労。しかも斜面に位置しているため、衛星からの電波を受信するアンテナの設置場所が限られるうえ、時期的に路面凍結の恐れもある。現地を視察した担当者が『ここに基地局を設置するのは無理かもしれない』と音を上げかけたほどです。しかし、粘り強く工夫を重ねることで基地局を設置し、大会運営のスタッフの方々やランナーの方々に電波を届けることができました」(田本)

球磨川リバイバルトレイル A2高塚山登山口
auの可搬型基地局を設置している様子
auの可搬型基地局 A2高塚山登山口のエイドステーションへの可搬型基地局の設置は困難を極めた

「球磨川リバイバルトレイルのテーマは『忘れられない、つなぐ旅』。“つなぐ”という言葉は私たちKDDIにとっても重要な意味を持ちます。命をつなぐ、暮らしをつなぐ、心をつなぐ。いずれもKDDIが果たすべき社会的使命であり、私たちのつなぐ力を社会に役立てていきたいと考えています。私自身、2020年7月の豪雨災害の発生直後に現地へ駆け付け、壮絶な被害状況を目の当たりにした経験もあり、特別な思いを胸に今回の大会の支援に携わりました。被災地の一日も早い復興のために、これからも通信をつなぎ続け、みなさんの命、暮らし、心をつないでいきたいと思います。」(古賀)

球磨川リバイバルトレイル実行委員の村上勝紀さん、KDDI九州総支社の田本道夫、古賀理一

通信は人と人をつなぐコミュニケーションツールであると同時に、いざというときに命を守り、暮らしをつなぐライフラインでもある。KDDIはこれからも、利用者の安心・安全のために、通信を守り続ける。

文:榎本一生
撮影:小池彩子

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。