2021/11/19
登山を安全に楽しむための「通信」の重要性とは?国際山岳ガイド・近藤謙司さんが解説
趣味の定番として老若男女から愛される「登山」。密を避けられることから、コロナ禍においてその人気はさらに高まりつつある。しかし一方で、装備の不備や経験不足による遭難事故があとを絶たない。リスクを回避し、安全に登山を楽しむためにはどうしたらいいのか?これまでエベレストをはじめとする8,000m峰の山頂に多くの登山者を導いてきた国際山岳ガイド・近藤謙司さんと秋の木曽駒ヶ岳を登りながら、話を聞いた。
TIME&SPACEでは近藤さんのインタビュー記事を全3回にわたってお届けする。今回のテーマは、安全な登山のために準備すべきことや、スマホをはじめとする情報通信ツールの重要性について。
登山の安全は「準備」で決まる
――登山の人気が高まりつつあるなか、事故も多発しています。その原因はどういったところにあると思いますか?
近藤:登山の基本を知らずに、自分の経験やレベルに見合わない山に登ろうとする人が増えていると感じます。それが遭難や道迷いといった事故の増加につながっているのではないでしょうか。
安全な登山には「準備」が欠かせません。抜かりなく準備しておけば、登山は高確率でうまくいきます。逆に、準備不足のまま臨んでしまうと、失敗する可能性が高くなります。
――登山の準備をするうえでのポイントや心構えを教えてください。
近藤:いちばん大事なのは、きちんと「計画」を立てること。そして、そのための「情報」を収集することです。どの時期に、誰と、どういうルートで、どの山に登るのか?当日の体調や天候は大丈夫か?そういった情報をひと通り集めたうえで、綿密な計画を立てる。これは登山を安全に楽しむための基本中の基本です。
もちろん体力も重要です。普段あまり身体を動かしていないのであれば、近所を散歩するなど、日常に軽い運動を取り入れてみる。北アルプスのような標高の高い山に行くのであれば、事前に低山歩きから準備をはじめる。登山者にはそういったアドバイスをするようにしています。ただ、低山でも遭難事例は少なくないので、侮ってはいけません。特に日照時間が短い秋や冬は要注意です。
また、登る山の標高や時期にあわせて装備を揃えることも、重要な準備のひとつです。装備の不備は命にも関わりますから。
装備は「命に関わるものほど良いものを」
――登山の装備は種類が豊富で、高価なものも多く、「なにから揃えればいいのかわからない」という人もいます。装備選びのコツを教えていただけますか?
近藤:私がよく登山者の方にアドバイスするのは、「命に関わるものほど、良いものを揃えてください」ということ。
いちばん重要なのは、自分の肌に直接触れるもの。つまり「アンダーウェア」です。汗や雨でアンダーウェアが濡れてしまうと、低体温症のリスクが格段に高まります。最悪の場合、死に至ることも。それくらい「濡れ」は登山において大敵なんです。
登山における“三種の神器”といわれる「雨具」「ザック」「登山靴」が大切であることは言うまでもありません。「雨具」は身体や服が濡れてしまうのを防ぎ、「ザック」は大事な道具一式を収納し、「登山靴」は大地と人間を結びます。
その次に重要なのは「情報通信ツール」です。情報は登山計画を立てるうえでも大事ですが、登山中も最新の情報を得るためのツールが欠かせません。
スマホは安全な登山のための必需品
――近藤さんが登山で利用している情報通信ツールにはどのようなものがありますか?
近藤:私が登山をはじめた40年ほど前は、無線機で通信したり、ラジオから情報を得たりするしかありませんでした。ヒマラヤ登山では巨大な気象衛星用ファクシミリを持っていっていたことも。それが携帯電話の登場で飛躍的に小型軽量化し、持ち運びがグッと楽になりました。最近だとスマホですね。大量の情報を瞬時にやり取りできるスマホは、いまや登山の必需品であり、重要なライフラインのひとつです。
――山でスマホが使えることはどのようなメリットがありますか?
近藤:仲間と連絡を取り合ったり、登山ルートを確認したり、最新の天気予報をチェックしたり。登山における安全確保のために、スマホは重要な役割を果たします。かつては登山道や山頂で電波が届かないことが多かったですが、最近はつながりやすくなったように感じます。ちなみに、標高5,000mを超えるエベレストのベースキャンプにも電波が届いていて、みんな地上と同様にスマホでSNSやメールを使っています。
私は登山において、情報通信ツールなどの電子機器は常に複数持ち歩きます。万が一の紛失時や故障時のバックアップのためです。スマホも2台以上持ち歩きますが、最近はauが山でつながりやすいという実感があります。今年の夏、何度か北アルプスを訪れたところ、登山者の少ない山奥でも思っていた以上につながって驚きました。
近藤さんのおすすめの百名山を紹介!
――近藤さんは国際山岳ガイドとして活躍されてきましたが、日本の山にもよく登りますか?おすすめの山があれば教えてください。
近藤:コロナ禍で海外へ行けないなか、ガイドとして日本の山に登る機会が増えました。好きな山はたくさんありますが、今日来ている木曽駒ヶ岳(長野県・標高2,956m)のほか、安達太良山(福島県・標高1,699m)、立山(富山県・標高3,015m)は特におすすめです。いずれも日本百名山。ロープウェイやバスなどの交通機関で一気に標高を稼げるため、体力に自信のない方でも比較的登りやすいと思います。
ただ、いずれの山も冬から春は積雪があり、一般登山者が登ることはできません。おすすめの季節は登山適期の夏から秋にかけて。自分の体力や経験を踏まえたうえで、無理のない計画を立てて、登山を楽しんでください。
次回は「安心・安全な登山のためのスマホ活用術」をテーマに、近藤さんおすすめのアプリやガジェットを紹介する。乞うご期待!
auがつながる日本百名山をチェック!
auは、登山者が安全に登山を楽しめるよう、日本百名山をはじめとする人気の山の登山道や山小屋で電波対策を進めている。また、auのサイトでは、登山GPSアプリ「YAMAP」による監修のもと、今回近藤さんが登った木曽駒ヶ岳や、おすすめの安達太良山、立山をはじめ、日本全国の百名山の電波状況を確認できる詳細な登山地図を提供している。
山に出かける際は、下記のサイトにアクセスし、その山の登山道の電波状況を事前にチェックしたうえで、スマホやケータイを上手に活用して登山を楽しんでほしい。
文:榎本一生
撮影:小池彩子
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