2021/11/15
地域が主役の地方創生を目指して 子どもたちの新たな学びを支援するKDDIの取り組み
都市部への人口や経済の集中により、地方では人手不足や高齢化をはじめとするさまざまな課題が生じている。そんななかKDDIは、ICTなど先端技術を活用するとともに、教育や人材育成の支援といった“人づくり”の観点で地方創生活動に取り組み、地域が抱える課題解決を進めてきた。今回は、長野県の学校と連携した取り組みを紹介しよう。
長野県上田高校とKDDIによる取り組み
ここは長野県上田市の「長野県上田高校(以下上田高校)」。120年以上の歴史を持つ県内屈指の名門校だ。校地は江戸時代の上田藩主の屋敷跡。伝統を感じさせる格式高い「古城の門」は同校のシンボルとなっている。
講師として教壇に立つのはKDDI地方創生推進部の横幕秀明。KDDIは長野県教育委員会と連携し、2020年度からKDDI社員による授業を上田高校で実施している。2020年度に実施した授業のテーマは「デザイン思考」。これからの時代に必要な能力として、発想から実現にいたるまでの思考のプロセスを中心とした学びを提供した。そして2021年度の授業のテーマは「課題研究」。この日は「課題研究テーマの見つけ方」についての授業を行う。
授業を受けているのは上田高校1年生の生徒たち。授業の様子は同学年の全教室にオンラインで配信され、同学年のすべての生徒が同時に授業を受けた。また、映像は他校からもリアルタイムで視聴された。
課題研究とはなにか?研究テーマはどのようにして見つけるのか?講師の横幕は課題研究を進めるうえでの基本的な考え方やテーマ設定のポイントを解説していく。
スライドを交えた説明を終えると、今度は生徒たちが考えた研究テーマのキーワードをワークシートに記入していく。
「まずは自分が関心のある分野から課題の種を探し、そこからキーワードを細かく分解しながら問いを立てていけば、研究テーマが見つけやすくなる」と横幕は話す。
それぞれが記入したワークシートを見せ合い、お互いの意見を言い合う生徒たち。経済格差、人種差別、地球温暖化など、導き出したキーワードは多種多様。活発にディスカッションを交わしながら、研究テーマに関する自分の考えをまとめていった。
生徒だけでなく教師にも刺激に
上田高校がKDDI社員による授業を導入したのはなぜか。そして、それは生徒や学校になにをもたらしているのだろうか。狙いや成果について先生方に伺った。
「不確実性が高まる社会のなかで、子どもたちが自立的に未来を生きていく力を養うため、長野県の高校では“学びの改革”を推進してきました。そんななか2020年8月、長野県教育委員会と長野県立大学、そしてKDDIさんの三者による包括的連携協定が締結されました。それぞれが連携しながら、より主体的かつ探究的な学びを深めることが狙いです。
KDDIさんは通信事業者ですが、私たちが期待しているのは通信の技術的な話はもちろんだが、物事の捉え方など私たち学校関係者が持っていない視点や発想を持ち込んでほしいということ。KDDIさんとの取り組みを通じて生徒たちが新しい学びが得られることを願っています。
また、上田高校は文部科学省のWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業において、先進的なカリキュラムの開発拠点校として指定されています。KDDIさんとの取り組みを通じて得られたカリキュラム開発の知見を校内にとどめることなく、県内のほかの高校へ広げる役割を果たしていきたいと考えています」(長野県上田高校 校長 北澤 潔さん)
「KDDIさんとの取り組みを通じて、生徒のあいだに意識改革が起きています。たとえば、横幕さんの授業を受けた生徒が、その内容に刺激を受け、地域の社会活動に参加するというケースも生まれています。生徒には、デザイン思考や課題研究といった探究型の学習で得た新しい学びのプロセスを、ぜひほかの教科学習にも生かしてほしいです」(長野県上田高校 髙野芙美先生)
「上田高校で探究型の学習を始めてからまだ日が浅く、私たちも試行錯誤しているところです。企業における課題解決の経験を踏まえてお話しくださる横幕さんの授業は、生徒だけでなく、私たち教師にもいい刺激になっています」(長野県上田高校 白鳥敏秀先生)
「KDDIさんとの取り組みは上田高校にとって非常に有意義なものですが、それを今後にどうつなげていくかは私たち次第。そこで得た新しい視点や考え方を、これからの学校教育に生かしていきたいと思います」(長野県上田高校 小林まゆ子先生)
一方の生徒たちは、KDDI横幕の授業を通じてなにを感じたのか。感想を聞いてみた。
「課題研究は正解がひとつではないところが難しいと感じました。でも、横幕さんの説明を聞いて、研究テーマの見つけ方のコツがわかり、とても勉強になりました」(長野県上田高校 山越彩乃さん)
「課題研究の進め方がよくわかっていませんでしたが、今日の授業を聞いて、自分で問いを見つけること、誰かのためになることを考えることが大切だとわかりました。また、ほかの授業と違って、先生に答えを教えてもらうのではなく、ヒントをもとに自分で考えを導き出すことが大事だと思いました」(長野県上田高校 花村瑠美奈さん)
「普段の教科学習と頭の使い方が全然違うと感じました。研究テーマを決めるのは難しいですが、今日教わった内容をもとにじっくり考えて、自分なりのテーマを見つけたいと思います」(長野県上田高校 増田悠梨さん)
不確実な時代を生きるための力に
一般の教科学習とは異なるアプローチで探究型の学びを提供する、KDDIと上田高校による取り組み。講師を務める横幕はどのような思いで子どもたちと向き合っているのか。
「KDDIはこれまでの企業活動のなかでさまざまな課題解決に取り組み続けてきました。私自身も30年におよぶ会社員生活で積み重ねてきた知見や経験があります。その考え方やプロセスを、高校生にもわかる文脈で伝えていきたい。そして生徒のみなさんには、課題研究という探究型学習で得た学びを、不確実な時代を生きるための力につなげてほしい。そう願っています」(KDDI 地方創生推進部 横幕秀明)
地域が主役の地方創生を目指して
そもそも通信事業者であるKDDIが、なぜ地方創生に力をいれているのか。また、とりわけ教育や人材育成の支援に注力するのはなぜか。KDDIで地方創生業務を担当する経営戦略本部・副本部長の宇佐見典正は次のように語る。
「KDDIは、5G、IoT、AI、ドローンといった最新のICTを駆使してさまざまな地域の課題解決に取り組んでいます。KDDIが地方創生に力を入れているのは、ICTによる課題解決を通じて地域の持続的発展に貢献することが社会的役割だと考えているからです。
地域の持続的発展のために重要なのは、一過性ではなく継続的に取り組むこと。そして、あくまでも地域が主役であることです。そのためには、地域に根差して活動する“人”が欠かせません。地域の課題解決を主体的にリードする“人づくり”を中長期的な視点でお手伝いしていきたい。そのためにKDDIは、地域での人材育成支援の取り組みを各地で進めています」(KDDI 経営戦略本部 副本部長 宇佐見典正)
人手不足や高齢化といった課題が山積するなか、地域を担う“人づくり”が地方創生の鍵となる。そして“人づくり”には時間がかかるため、継続的な取り組みが不可欠だ。KDDIはこれからも、地域の持続的な発展に貢献するため、人材育成の支援を続けていく。
文:TIME&SPACE編集部
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