2021/07/26
au5Gの取り組みとは?JR山手線と大阪環状線の全駅ホームで5Gが利用可能に
2021年6月30日、KDDIが、山手線と大阪環状線の全駅ホームで5Gエリア化したと発表した。au「鉄道路線5G化」を宣言し、2021年度末までに関東21路線、関西5路線で5Gを利用できるよう拡大していく。
その「鉄道路線5G化」の狙いや対策内容、今後の取り組みについて、KDDIの担当者に話を聞いた。
au 5Gに対する取り組みとは
「鉄道路線5G化」として最初に5Gのエリアとなったのは、JR東日本の山手線全30駅と、JR西日本の大阪環状線全19駅だ。このすべての駅のホームにおいて、au 5Gが使えるようになった。
このau5Gに対する取り組みについて、KDDIで5Gを企画・推進する次世代ビジネス企画部の長谷川に話を聞いた。
「5Gエリアを拡大するにあたり、お客さまにとってまずどこで使えるのが良いのか。基地局数も大事な指標ですが、どこで使えるようになるか、その場所も重要視しています」(長谷川)
その考えのもと、まずは利用者の多い代表的な路線として、山手線と大阪環状線から5G化し、2021年度末までに関東21路線、関西5路線へと拡大していくというわけだ。
もちろん、5Gを広げていくのは鉄道だけではない。駅を中心に、利用者の多い全国の商業地域も並行して5G化を進めるが、電波は目に見えないものなので、いかにわかりやすくその利用可能なエリアを伝えていくか。その課題を解決するため、auの5Gエリアマップに、新たに路線と商業地域の専用マップが追加された。
「今までも5Gのエリアマップを用意していましたが、地図上の色付けだけでは実際にどこで使えるのかわかりにくい部分があったので、よりわかりやすく伝える専用のマップを用意しました」(長谷川)
その専用マップがこちらだ。
■5Gを利用できる路線
5Gを利用できる商業地域
このように路線図は駅ごとに5G対応しているかどうかがひと目でわかりやすく、また商業地域も主要な建物名が記載されることで、どこで使えるかがわかりやすくなった。
「路線に関しては、ホームだけでなく改札など駅構内や、また駅と駅の間の路線間でも使えるかどうかをわかりやすく伝えていきたい」(長谷川)
また、見えづらい5Gエリアの伝え方として、5Gエリアで見ることができる「3D ARスヌーピー」とのコラボレーションを開始した。空間にARコンテンツを表示するスマホアプリ「XR CHANNEL」を起動し、5G対象のエリア内で5G対応のスマホをかざすと、かわいく動くスヌーピーを撮影することができる。
スヌーピーが出現する期間は2021年6月30日から9月中旬までの予定で、4Gスマホでも場所や日時に応じて変化するスヌーピーを体験できるが、5G対応のスマホではダンスを踊る限定スヌーピーを見ることができる。
今回のスヌーピーの表示には、AR上に向きと位置を固定できるVPSという技術を使っていて、スヌーピーが向いている位置も場所ごとに決まっている。なかには巨大なスヌーピーが出現する場所もあるので、ぜひベストな角度で撮影できるポイントを探してみてほしい。
5Gの特性とエリア設計の難しさ
では、今後5Gエリアを拡大するにあたり、課題になるポイントはどこなのか。5Gエリアの設計を担当するKDDIエンジニアリングの加藤純人に話を聞いた。
「5Gで新たに割り当てられた高周波数帯の電波は減衰しやすく、回り込みにくい性質があるため、4Gより基地局配置の場所と数を確保することが課題です」(加藤)
ここであらためてKDDIが利用する5Gの周波数について解説しよう。KDDIが5Gで利用する周波数は、大きく分けて「ミリ波」「Sub6(サブシックス)」「NR化」の3つの周波数帯がある。
・ミリ波:28GHzの周波数帯。高速・大容量通信が可能。
・sub6:3.7/4GHzの周波数帯。高速・大容量通信が可能。
・NR化:700M〜3.5Ghz(4G LTE)の周波数帯。NR規格を適用して5Gに利用。
「NR化」は現在4G LTEで使っている周波数帯で、既存の基地局を活用し、より早く5Gエリア化できるという特長がある。一方「ミリ波」と「Sub6」は、5Gとして新たに総務省から割り当てられた周波数帯で、高速・大容量通信ができる反面、周波数帯が高いほど減衰しやすく、透過しにくい。
「低周波数帯は音の特性、高周波数帯は光の特性をイメージしていただくとわかりやすいのではないでしょうか」(加藤)
たとえば低周波数帯の電波は、壁の向こうで話している声が漏れ聞こえるのと同じように、ある程度の障害物を回り込める特長があるため、壁の向こう側にも届けやすい。
一方、高周波数帯の電波は、壁があると遮断される光のように、障害物があるとその向こう側には届けにくい性質がある。
「このような電波の特徴があるため、5Gエリアの設計には、基地局から5G化したいエリアまでの見通しを確保することが重要です」(加藤)
このように5G電波の性質を考えると、既存の4G基地局と同じ場所に5G基地局を建てるだけでは、ビルなどの障害物によって5Gが届かない場所が出てくる。
そこで5Gでは、新たに障害物の影響を考慮した基地局設計が必要になるというわけだ。
もうひとつの課題は、電波の干渉だ。
「新たに割り当てられた5Gの周波数帯は、携帯電話専用のものではなく、他の事業者も使っている周波数帯です。そのため、既存事業者への干渉対策が必要となりました」(加藤)
このように今回の5G対策にあたっては、電波の出力や方向、角度を調整することで、できるだけ既存事業者と干渉しないアンテナ設置を苦慮しながら進めている。
「お客さまへの快適な通信品質を提供しながら、他の事業者への影響を最小にする。その両立を目的として、最適なエリアを設計していきます」(加藤)
一方で、既存周波数帯のNR化では、通信速度がそこまで出ないのではないかという懸念もあるが、その懸念についてはどのように考えているのだろうか。
「速度については、ひとつの基地局でなく、複数の基地局でどれだけそのエリアをカバーするかという点も大事です。NR化の周波数帯でも基地局数が増えていけば、十分な速度を確保できます。通信量が多い場所では5G向けの新周波数帯を、より広い場所に電波を届けたい場所では既存の周波数帯を活用するなど、複数の周波数帯を組み合わせることでお客さまに快適な通信環境を提供できればと考えています」(長谷川)
上記の課題を考慮しつつ、実際にJR東京駅の山手線ホームに設置されているアンテナがこちらだ。
このホームでは、線路と平行に、上野方面と品川方面に向けてアンテナが設置されている。設置場所や設置数については、乗降客数やホームの広さによって最適な設置を行っているとのこと。
実際にデモ機でスピードテストを実施した結果、ダウンロード速度は1.1Gbpsを記録した。5Gの電波特性である高速通信を十分に体感できる結果となった。
5G化後にも続く通信エリアの品質管理
この品質を担保するには、5Gエリアになった後も、パケ止まり(データがまったく流れる様子がない)などが起きないよう基地局の設定を調整し、品質を維持することが重要だ。このエリアの品質管理について、KDDIエリア品質管理部の小野田に話を聞いた。
「特に調整が必要になるのが、基地局から遠い場所で利用する5G電波です。基地局に近い場所では問題ないのですが、基地局から遠い場所だと電波の減衰がおこり、5Gの電波は弱ってしまいます。そんな基地局から遠い場所でスマホが5G電波を掴んでしまうと、スマホの表示は5Gでも、パケ止まりのリスクが出てきてしまいます」(小野田)
「そうなるとスマホの電波が切れやすくなってしまうため、なるべく4Gに切り替えることで、お客さまに安定した通信をご利用ただけるよう調整をするのが私たちの仕事です。結果として5Gエリアは狭くなるかもしれませんが、お客さまに快適にご利用いただくことが最優先と考えています」(小野田)
このように5Gエリアになったあとも、実際に利用するお客さまが快適に使えているかどうかまで品質を管理しているというわけだ。通信エリアの5G化に終わりはない。
KDDIは2021年のスローガンに「ずっと、もっと、つなぐぞ。au」を掲げ、つながり続ける通信サービスの提供を目指している。今回の主要鉄道の5G化を起点に、今後の5Gエリアの拡大に期待してほしい。
≪本イベントは終了いたしました。≫
■HAND!×au 5G 山手線でちょっと未来の乗車体験
・公式サイト:https://www.au.com/5g/hand/
・開催期間:2022年1月18日(火)~2月1日(火)
車両内の中吊り広告にスマートフォンをかざすと、山手線各駅の未来を表現したARアートや日光の重要文化財を案内するバーチャルトリップを体験いただけます。
また、1月23日(日)~1月28日(金)の期間には、JR上野駅構内でXR体験イベントも開催いたします。
詳細は公式サイトにてご確認ください。
文:TIME&SPACE編集部
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