2020/03/05
能登半島の電波対策に密着! 山・海・観光地、自然環境に合わせた工夫とは
北陸新幹線が金沢駅まで開通し、東京から身近な存在になった石川県。なかでも県北部の能登半島は、日本の原風景として世界農業遺産に選定された白米千枚田(しろよねせんまいだ)をはじめ、日本三大朝市のひとつである輪島朝市、海の温泉が湧き出る和倉温泉など、多彩な観光名所がある。
里山里海に恵まれた能登半島は、天然のフグやのどくろなど、豊富な海の幸をはじめ、能登牛や能登豚なども堪能できるグルメ王国だ。また、2015年放映のNHK 連続テレビ小説「まれ」 のロケ地に選ばれたこともあり、ここ数年で観光地としての注目度が増している。
「つながりにくい」、お客様の声から山間部での電波対策がスタート
そんな能登半島では、かつて「つながりにくい」「通話が途切れてしまう」といったお客様からの声が多く寄せられていた。そこで、KDDIは2016年から主に山間部などの居住地で、更なるエリア電波対策を行っている。
電波対策の主要な方法は、携帯電話の基地局を設営することだ。今回、能登半島のエリア対策を管轄するKDDI金沢テクニカルセンターの渡邊啓介と、基地局の設営などに携わるKDDIエンジニアリング金沢支店の船本一弥とともに能登半島の基地局をまわった。
「能登半島では、これまで人口密度が高い主要な観光地を中心に電波対策を行ってきました。しかし、山間部などで『つながらない』という地域住民のみなさんからの要望を受け、少しでも早く電波状況を改善するために、現地をまわって優先的に対策する場所を選定するなどして、2016年から電波対策をスタートしました。3年間で基地局約150局を建設する非常に大規模なものです」(KDDI金沢テクニカルセンター 渡邊啓介)
とはいえ、能登半島は豪雪地域のため、冬の基地局の設営は簡単ではないという。
「冬は工事前に除雪するのが日常茶飯事。除雪作業には時間も体力も費やし、予定通りに進まないことが多く、通常であれば2時間程度で終わる作業が10時間かかったこともあります。また、雪が多いときは除雪車を手配して作業することもあります」(KDDIエンジニアリング金沢支店 船本一弥)
除雪作業で工事が思いどおりに進まないことに加えて、険しい山が日本海に迫る能登半島は、山間部と沿岸部が多く、その自然環境に合わせた特別な対策をする必要があった。
高さ25mの基地局を山間部運んで設置する
今回の取材では、2020年1月に設営したばかりの山間部にある基地局を訪れた。
「山間部は平地と違って、カーブが多く、道が細いところもあるため、トラックでの運搬や機材の搬入が難しい場合があります」(船本)
輪島市の山間部にある基地局へ向かうと、クルマや人とすれ違うことはほとんどない。そんななか、ポツポツと集落があり、その集落を抜けるとまた山道が続く。
「林の奥にある集落に電波を届けたいのですが、周囲を高い樹木に囲まれているため、通常の14.9mの高さの基地局では電波が届きません。そこで高さ25mの基地局を設置し、限られた方向に強い電波を送ることができる指向性アンテナを使用して、樹木を飛び越えた先にある集落に電波を届けました」(船本)
スマホを見てみると、山間部とはいえ電波状況は良好だ。
「通常、基地局の土台となる基礎は地中に埋め込まれています。しかし、こちらは地面がぬかるんでいるため、コンクリート柱が安定しません。そこで、あえて土台を地面から出すことで、しっかりと固定しています。
ほかにも重機を下ろす際に地面や道を傷つけないよう、鉄板を置いてクレーン車を通行させるなど、山間部の基地局設営は工夫や配慮が必要になります。たとえ自然環境が過酷でも、山間部で暮らす人たちへ電波を届けるのが、私たちの使命です」(船本)
沿岸部では“電波の届き過ぎ”が問題に?
能登半島の沿岸部には、地域住民や観光客が利用する主要道路が多くある。能登半島を南北に走る国道249号は輪島市や珠洲市などの漁師町をつなぎ、奥能登地域を周遊する観光道路でもある。山間部とは地形が異なる沿岸部ではどのような電波対策が行われたのか?
「沿岸部は見晴らしが良い場所が多く、比較的、基地局からの電波は届けやすいのですが、逆にその見晴らしの良さが災いして、電波を届ける必要がない場所に電波が届いてしまうことがあるんです。
たとえば、能登半島北部の珠洲市から飛ばした電波が、新潟の佐渡島に届いてしまい、佐渡島側の電波に干渉してしまうケースがありました。もちろん、その後に緻密な調整を行い、電波の干渉は改善しています」(渡邊)
基地局は数が増えればいいというわけではない。お互いの電波が重なり合ってしまうと電波干渉が発生して、かえって携帯電話はつながりにくくなってしまう。
「沿岸部の電波対策は、ほかのエリアに干渉しないように調査や調整を重ねながら、人が住む集落や、道路沿いを狙って指向性アンテナで電波を飛ばすことが多いですね。そうやって能登半島の沿岸部に安定した品質の電波を届けています」(渡邊)
下の写真は輪島市に設置された基地局で、南北に伸びる国道249号線沿いを中心に電波を飛ばしている。
スマホを確認すると、電波状況はもちろん良好。小高い丘にひっそりと建つ基地局が、能登半島沿岸部の町に暮らす人々や、観光地に向かう主要道路に電波を届けている。
朝ドラ「まれ」のロケ地や白米千枚田など、観光地にも電波を届ける
続いて訪れたのは、輪島市大沢町。「間垣(まがき)の里」と呼ばれるこの界隈は、NHK 連続テレビ小説「まれ」のロケ地となった場所だ。
大沢町では海からの強い季節風から家々を守るために、竹を組んだ「間垣」と呼ばれる垣根で集落を囲み、夏は適度な日陰をつくり、冬は冷たい強風を防いできた。
風情ある文化的景観が並ぶこの町にも、観光客や地域住民の携帯電話がつながるように、基地局が設営されている。町全体を見下ろせる丘に基地局が建っていた。
「『まれ』が放送されてから、大沢町にも多くの観光客が訪れるようになりました。ここは見晴らしが非常にいいので、360°全方向に電波を飛ばせるアンテナでカバーしています。地元の方も観光で来られた方も、auを快適に使っていただけるようになりました」(船本)
「観光客の人数によって電波状況は変わります。観光に訪れた人や地元の方が常に快適にご利用いただけるように、これからも柔軟に電波対策に取り組んでいきます」(渡邊)
インスタ映えする観光スポット白米千枚田で電波が必須
能登半島を代表する観光地といえば、「日本の原風景」と呼ばれ、日本で初めて世界農業遺産に認定された白米千枚田がある。
1,004枚もの棚田が並ぶ幻想的な風景の白米千枚田が、実はいまインスタ映えのスポットとして話題になっている。
現場でリアルタイムにSNSを投稿するには、携帯電話の電波が必要だ。そこで輪島市産業部観光課の上濱真紀子さんに、輪島市の観光地における電波状況やその役割を聞いた。
「白米千枚田は春夏秋冬で異なる景色を見せてくれますが、毎年、収穫が終わった10月中頃から3月末頃まで『あぜのきらめき』というLED照明を使ったイルミネーションのイベントを行っています。ペットボトルを再利用した“ペットボタル”というLED照明を使用していて、日没になって徐々にまわりが暗くなると、自動で明かりが灯りはじめます。日中に太陽光で充電しているので、差しっぱなしでいいのでエコなんです。毎年、“ほたるびと”と呼ばれる多くのボランティアの方々が、25,000個のペットボタルを設置してくれています」
イルミネーションはピンク、グリーン、ゴールド、ブルーと15分ごとにゆっくりと色が変わり、どのタイミングでも楽しむことができる。
「『あぜのきらめき』がインスタ映えすると評判で、携帯電話で撮影してその場でアップされる方が多いようです。SNSでシェアしていただいた写真をきっかけに、白米千枚田や能登を知り、訪れる方が増えてくれるとうれしいですね。いまは貴重な体験はその場でシェアするのが主流なので、観光地で携帯電話がつながることは必須です。
また、白米千枚田はいまサイクリングの名所にもなっています。目的地へのナビゲーションやお店の検索、仲間との連絡などにも携帯電話は必需品。私も時間があれば千枚田に行って写真を撮り、その場で『今日の千枚田』をFacebookにアップしています。携帯電話の電波は、観光客のみなさんだけでなく、私たちにとっても欠かせない存在なんです」
観光地での特別な体験はその瞬間に誰かとシェアしたいもの。そんなときにちゃんと電波がつながることは、観光地には欠かせないのだ。
「工場内もつながった!」能登半島の地元のみなさんの声は?
2016年から始まった電波対策によって、能登半島で暮らす地元のみなさんにはどんな変化があったのか。その声を「auショップ 輪島ワイプラザ」のスタッフに聞いた。
「以前、『工場の中では電波が入らない』というお客様がいらっしゃいました。仕事が終わってクルマを走らせてしばらくするとようやく電波がつながって、友人やご家族からのLINEなどが一斉に届いたそうです。電波対策が完了したころにそのお客様がいらっしゃって『工場内の電波がつながるようになった! これは助かる』と、喜んでいらっしゃいました。
また、あるご家族は能登半島内で引っ越した先の電波が弱く、電話が途切れ途切れになってしまうというお話でした。ご自宅の近くに基地局が建ったことで、『auの電波が入りやすくなったから、もう電話が途切れない』とうれしそうにお話してくださいました」(河上)
auショップ輪島ワイプラザでは、自宅や職場などで電波が入るかどうかを事前に知りたい人に、スマホやWi-Fiルーターの電波確認用端末の貸し出しを行っている。※
※auショップ全店舗で貸し出しは行っていません。
「電波確認用のスマホを無料で1週間ほどお貸出しできますので、そのあいだにご自宅や職場などの電波状況をご確認いただけます。もしご自宅の電波が弱かった場合は、『電波サポート24』のサービスで電波状況を改善することも可能です」(池澄)
能登半島でauがつながる場所が増えたことを、スタッフが実感することも多いそう。
「『auショップ 輪島ワイプラザ』は目の前にスーパーがあるので、買い物のついでにお客様がよく立ち寄ってくださいます。そういったときに『つながるようになったよ』と言っていただけるとうれしいですね。これまでつながらなかった場所があるからこそ、能登半島の人は“つながる喜び”が大きいんです」(池澄)
「つながりにくい」という地元のみなさまの声を受け、約150の基地局を設営した。今回の電波対策によって、能登半島の地元の方も観光客も、以前よりも携帯電話がつながりやすくなったようだ。ひとりでも多くの人が通信を使って、楽しさを共有したり、快適に暮らしたりできるように。なにより、つながらないことで不便な思いをしないように。KDDIの電波対策は今後も終わることなく続いていく。
文:TIME & SPACE編集部
※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。