2020/03/04

『MaaS(マース)』を沖縄観光で体験! 移動や支払がスマホで完結する次世代サービスとは

旅行や観光に行くときは、観光地やグルメ、買い物スポットなど、それぞれのルートを検索するのが一般的だろう。しかし、ウェブサイトやアプリなどで個別に調べるのは意外と手間である。

そんな面倒を解決できると言われているのが、次世代交通サービス「MaaS(マース/Mobility as a Service)」である。今回はTIME & SPACEの編集部員が、沖縄で行われているKDDIのMaaS実証実験を体験してきたので、その様子を紹介したい。

シーサー

次世代交通サービスMaaSとは?

MaaSとはITを活用して、バスや電車、タクシー、シェアサイクルなど、マイカーを除くさまざまな交通手段による移動を1つのサービスとしてとらえてつなぎ合わせる、「新たな移動の概念」だ。次世代交通サービスとして、世界中で取り組みが行われている。

今回、KDDIが観光型MaaSの実証実験を開始。2020年2月4日から3月31日の期間限定で、MaaSを体験できる「沖縄CLIP トリップ」アプリが提供された。

沖縄CLIP トリップ

「沖縄CLIP トリップ」は、現地のライターが観光情報を紹介している「沖縄CLIP」に、MaaSの機能を追加したもの。沖縄の観光記事からそのまま複数交通手段(マルチモーダル)のルート検索が可能で、ゆいレールやタクシーのキャッシュレス決済などができる。

沖縄で実証実験を行う背景には、観光問題への課題がある。沖縄では2018年に年間の観光客数が1,000万人を突破。観光客が増加するなか、移動手段に電車がないなかで路線バスを使う人も少なく、観光客のレンタカー利用率が高いため、慢性的な渋滞が起こっている。実証実験では、MaaSによって、公共交通機関の利便性向上などを検証するのを狙いとしている。今回、TIME & SPACEの編集部員が実際に沖縄でアプリを使って、MaaSを活用した「スマート旅行」を体験してきた。

まずは出発前に「沖縄CLIP トリップ」アプリをダウンロード。アプリを起動すると初期登録画面になるので、タクシー配車のための電話番号の登録、クレジットカードの登録(あとで登録も可能)などを行うと、すぐに使えるようになる。では羽田空港から沖縄に出発だ!

空港から沖縄へ

那覇空港から首里城へ。ゆいレールのキャッシュレス決済でスマートに

那覇空港

那覇空港に到着。さっそくアプリを立ち上げてみる。トップ画面には「味わう」「観る」「体験する」「買う」の4つのカテゴリがあり、約130件もの観光スポットが掲載されている。

沖縄CLIP トリップのトップ画面

たとえば、「体験する」を選ぶと、沖縄の体験スポットの写真が複数紹介され、タップすると現地ライターによる紹介記事が読める。

沖縄CLIP トリップの「体験する」

それだけでも充分に楽しめるのだが、ここで「ルート」をタップすると、現在地から目的地までのルートが3つ表示される。沖縄の観光記事を読み、興味を持った場所への最適なルートを確認できるのが、基本的な機能だ。

沖縄CLIP トリップの「ルート」検索

首里城に向かう場合、「ゆいレール」「バス」「タクシー」の3つのルートが表示された。

沖縄CLIP トリップの「ルート」検索

今回はゆいレールで首里城を目指すことに。

ゆいレールの那覇空港駅

ルート内に表示されている「1回乗車券で乗る」をタップすると、乗車券の購入画面に切り替わる。事前登録したクレジットカードでキャッシュレス決済ができ、ひとつのアプリで最大4人まで購入可能。1日乗り放題で通常800円の金額が半額の400円になるから、かなりお得だ。
※2020年2月4日~終了日未定

沖縄CLIP トリップでゆいレール1日乗車券を購入

スマホに表示されたデジタルチケットを駅員に提示することで改札を通過できる。券売所に並ぶ必要がなく、交通系ICカードの感覚で移動できるうえ、金額を気にせず1日乗り放題なのもうれしい。乗り放題の残り時間が表示されているのも親切だ。

ゆいレール1日乗車券を購入で改札を通過

所要時間は27分。無事に首里駅に到着した。

ゆいレールで首里駅へ向かう
ゆいレールで首里駅へ向かう

首里駅から首里城までは徒歩15分。アプリで地図を確認できるので、スムーズに首里城に到着することができた。

首里城へ到着
首里城へ到着 復興が進む首里城へ到着

首里城を観光した後、少し休憩したくなったので、近くでお茶をすることに。今度は「味わう」をタップして、首里城から徒歩15分ほどの場所に「CONTE」というカフェがあるのを発見した。

沖縄CLIP トリップでカフェを検索
沖縄CLIP トリップでカフェを検索

沖縄芸術大学のそばをテクテクと歩き、街のいたるところで発見できるシーサーに驚きつつ、地図が示すルートを進むと、時間通りにカフェに到着した。喉が渇いたのでオリオンビールで乾杯。レンタカーの運転がないのでアルコールが楽しめるのもうれしい。

「CONTE」に到着

その場でタクシーを配車して決済もできる

その後、お土産を買うために国際通り付近にあるテキスタイルショップ「taion」に行くことに。さすがに歩き疲れたのでタクシーを呼びたい。そこで「taion」のルート検索から「タクシーを呼ぶ」をタップすると、現在地から目的地までのタクシーの移動代金や時間が表示された。

沖縄CLIP トリップでタクシーを配車

「この場所で呼ぶ」をタップするとタクシーの配車(注文)が確定。スマホにはタクシー到着時に伝える待ち合わせ番号や、タクシーの車両番号が表示される。たったこれだけでタクシーを手配できる。驚くほどスムーズだ。配車予定のタクシーの位置情報をリアルタイムで確認できて安心感もある

沖縄CLIP トリップでタクシーを配車

5分後にタクシーが到着し、国際通りへ向かう。支払いはアプリに登録済みのクレジットでキャッシュレス決済できるからスムーズ。タクシーを降り、「taion」に到着した。

テキスタイルショップ「taion」

食べログとの連携やアクティビティの予約もできる

そのほかの機能としては、食べログとの連携により、現在地情報をもとにした飲食店の検索も可能だ。お店へのルートがわかるほか、食べログのウェブサイトやアプリへ移動して、店舗情報の詳細も確認できる。

沖縄CLIP トリップで食べログ掲載店を検索

また、気になるアクティビティの予約や、国内旅行保険(au損保)の購入や契約も可能だ。これらは旅の出発前にアプリで予約しておくと便利だろう。

沖縄CLIP トリップの「アクティビティ予約(JAPAWALK)」
沖縄CLIP トリップの「国内旅行保険契約(au損保)」

今回、MaaSが体験できる「沖縄CLIP トリップ」アプリを使ってみたが、行きたい観光地情報からそのまま移動手段や時間がわかるのは非常に便利。さらに3つのルートを提案してくれるので、ゆいレールやタクシーなど、いろんな交通手段による選択肢が選べる点もよかった。

個人的にはタクシーの配車が非常に役立った。観光地で疲れたときにアプリひとつですぐに呼べるので、タクシー探しで疲弊することがなく、行き当たりばったりの旅でもスムーズに目的地にたどり着けそうだ。

また、観光地では、時間が余ったり、違う場所に行きたくなったりすることが多いが、「沖縄CLIP トリップ」アプリがあれば、すぐに現在地から近い店の情報とルートがセットでわかるのでありがたい。観光情報と複数交通手段のルート検索がひとつのサービスで完結できるMaaSの機能は、想像以上に便利だった。

現地で「沖縄CLIP」の運営などを行う、沖縄セルラー アグリ&マルシェの糸洲安一に、観光型MaaSの機能について話を聞いた。

沖縄セルラー アグリ&マルシェの糸洲安一 沖縄セルラー アグリ&マルシェの糸洲安一

「沖縄のリーディング産業である観光産業に貢献できる事業として、『沖縄CLIP』を立ち上げましたが、これまでのアプリでは“タビマエ”に行う観光情報の発信がメインでした。『沖縄CLIP トリップ』でMaaSの交通機能が加わったことで、“タビナカ”である現地での移動がより快適になったと思います。

また、レンタカーではなく公共交通機関が表示されるので、沖縄観光の課題である二次交通(拠点となる空港や鉄道の駅から目的地までの交通)での公共交通機関の利用や渋滞解消などの解決にもつながると思います。私も地元の人間なのでクルマには乗りますが、『沖縄CLIP トリップ』を利用して、これまで以上にゆいレールやタクシーを活用できると感じました」

MaaSがもたらす未来とは?

沖縄で開催された実証実験は、KDDIと沖縄セルラー電話および沖縄セルラーアグリ&マルシェがMaaSアプリを開発し、全体を統括しているが、日本トランスオーシャン航空、沖縄都市モノレール、沖東交通事業協同組合、Japan Taxi、ナビタイムジャパン、カカクコムなど、複数の企業や組合の協力で実現した。MaaSを活用することで、どのような便利な未来が待っているのだろうか。KDDI 経営戦略本部 前田大輔に話を聞いた。

KDDI 経営戦略本部 前田大輔 KDDI 経営戦略本部 前田大輔

「2020年3月から、日本国内で5Gのサービスがいよいよスタートします。5Gにより、ITであらゆるものがつながる時代になり、さまざまな産業が変革します。特に5Gと移動や観光を掛け合わせることに大きな可能性を感じています。たとえば、交通ビッグデーターをリアルタイムで分析して、移動中の旅行者に混雑回避情報を配信したり、混雑していない店舗へ誘導したり。効率化されたスマートな観光体験を提供することが観光型MaaSアプリの完成形だと思います。

また、将来的にはMaaS×5Gによって、人口減少などの理由でドライバー確保が難しい地域に自動運転ソリューションを届ける、渋滞が激しい都心の移動に対して快適な移動ソリューションを提供するといったことが可能になるかもしれません。KDDIはMaaS×5Gで、イノベーションを創造するお手伝いをしていきたいと考えています」

次世代交通サービスMaaSは、地域の課題解決に役立つ可能性を秘めている。なにより、MaaSによって観光はもっとスマートに、もっと自由で楽しいものになるはずだ。

沖縄CLIPトリップについてはこちら。

    沖縄CLIP トリップのバナー
 

文:TIME & SPACE編集部
撮影:玉城徹也

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。