2020/01/08

安心・安全な登山のためのスマホ活用術 遭難や道迷いなど山での事故を防ぐために

登山中の事故は年々増加傾向に

剱岳の剱沢小屋

大自然の爽快感や山頂にたどりついたときの達成感が魅力の「登山」。趣味の定番として老若男女から愛され、人気の山は週末になると多くの登山者で賑わう。

しかし一方で、登山中の事故も多発しており、その件数は年々増加傾向にある。警察庁の発表によると、2018年の山岳遭難発生件数は2,661件、遭難者数は3,129人。これらは統計の残る1961年以降、もっとも高い数値を示している。

山岳遭難発生件数の推移(出典:警察庁ホームページ) 山岳遭難発生件数の推移(出典:警察庁ホームページ
山岳遭難者数の推移(警察庁発表) 山岳遭難者数の推移(出典:警察庁ホームページ

遭難や迷子など事故のリスクを少しでも減らし、より安全に登山を楽しむにはどうしたらいいのか?

そのひとつが、スマホやケータイを上手に活用すること。スマホやケータイは緊急時における重要な通信手段であるとともに、登山の安全性を高めるツールとしても役立つ。かつては山のなかでは電波が届きにくかったが、近年は各携帯電話会社が山での電波対策に積極的に取り組み、多くの山でスマホやケータイが使えるようになった。

では、安心・安全な登山のために、スマホやケータイをどのように活用すればいいのか。スマホ用の登山GPSアプリで国内シェアNo.1を誇る「YAMAP」を開発・運営する株式会社ヤマップにて営業・企画本部長を務める板橋真さんに、登山におけるスマホ&ケータイ活用術を教えてもらった。

株式会社ヤマップ 営業・企画本部長 板橋 真さん 株式会社ヤマップ 営業・企画本部長 板橋 真さん

板橋さんは登山やトレイルランをはじめとするアウトドアアクティビティ全般が趣味。スマホ用の登山アプリに関わる仕事柄、山でのスマホやケータイの活用にも長けている。

他人事として捉えるべからず

株式会社ヤマップ 営業・企画本部長 板橋 真さん

私が登山を始めたのは13年ほど前、友人に誘われたのがきっかけです。当時の私は30歳の働き盛りで多忙を極め、時間的な余裕も無かったのですが、都会を離れて自然の中に身を置くことがとてもよいリフレッシュになったんです。自分の身体の中身が入れ替わるような感覚というか。最初は関東近郊の低山に登り、のちに八ヶ岳や北アルプスなど標高の高い山を目指すように。暇さえあれば山で過ごすくらいハマっていきました。

ただ、登山経験を積むなかで、危険な目に遭ったことも少なくありません。

例えば、登山を始めて3年目くらいに初めて北アルプスへ行ったときのこと。せっかく取れた休みということもあり、台風が接近する悪天候のなか強行してしまい……。当然ながらその判断は間違っていました。尾根道を登り詰め、稜線に出ると、そこは凄まじい暴風雨。自分ではルート通り進んでいたつもりだったのに、ふと気づいたら切り立った崖の上に立っていて、滑落する一歩手前の状態に。あれはヒヤッとしました。道も視界も悪いなか、焦って強行した自分が招いた結果でした。

また、その後、南アルプスへ行ったときのこと。山頂付近で天候が急変し、濃霧に包まれ、右も左もわからない状態に。いわゆるホワイトアウトと呼ばれる現象です。このときはまだスマホを持っておらず、紙の地図とコンパスを使って現在地と下山ルートを確認し、なんとか事なきを得ました。自然が自分の意思とは関係なく状況を変化させ、登山者にとってのリスクを発生させるわかりやすい例です。

濃霧に包まれる登山道 山の天気は変わりやすい。晴れていたと思ったら突然霧が立ち込め、周囲がまったく見えなくなることもある

登山は魅力的で楽しいアクティビティですが、常に危険と隣り合わせでもあります。天候の急変や予想外の事故・アクシデントは誰にでも起こりうることであり、決して他人事として捉えてはいけません。「もしも自分に何かあったら、自分はどうすべきか?」と常に「想像力」を働かせ、ひとつでもリスクを減らす備えが大事です。

スマホやケータイは登山の安全確保に役立つ

登山中は現在地や登山ルートを確認したり、登山中や山頂で写真を撮ったり、無事に下山したことをメールやSNSで家族や仲間に伝えたり。登山を楽しむうえで、スマホやケータイは欠かせないものになりました。

株式会社ヤマップ 営業・企画本部長 板橋 真さん

登山における事故のリスクを少しでも減らすためにも、スマホやケータイはとても有用だと思います。私たちが提供するスマホアプリ「YAMAP」もそのひとつです。

第一に、電波が届いていれば、スマホやケータイがあることで登山者間で連絡が取れるようになる。これは安全確保のうえでとても大切なことです。例えば、パーティの仲間で別行動を取っていたとしても、「あと1時間ほどで山頂に着きます」「では山小屋で待機してます」と、お互いの現状を伝えながら連絡を取り合うことができます。あるいは、先に登った人が、後から登る人に対して「現在山頂付近は天気が荒れているから、早めに雨具を着たほうが良い/登頂をあきらめたほうがいい」とアドバイスすることもできる。

これらは山の中に電波が届いていなかった時代にはできなかったことです。登山計画を立てる際に、その登山道に電波が届いているかどうかを事前に確認することは、自分の安全を高めることになるでしょう。

au「携帯電話がご利用いただける登山道」では、登山道のどこでつながりやすいか、詳細な地図で確認可能。なおこの地図は登山ルートの確認などヤマップが制作に全面的に協力している au「携帯電話がご利用いただける登山道」では、登山道のどこでつながりやすいか、詳細な地図で確認可能。なおこの地図は登山ルートの確認などヤマップが制作に全面的に協力している

第二に、GPS機能を搭載したスマホの普及により、電波の届かない山の中でも現在地の把握ができるようになりました。「YAMAP」もGPS機能によって成り立っています。「いま、自分がどこにいるか?」を把握することは、登山の安全を担保する基礎であり、遭難や道迷いなどの事故を防ぐ上で最も重要なこと。紙の地図を持っていても読めないと意味がありません。地図読みスキルも並行して身に付けながら、スマホを活用することで自身の安全度を高めていく。私は積極的に活用すべきだと思います。

登山アプリ「YAMAP」

リスク軽減のためにこれだけは備えておきたい

安全に登山を楽しむためには「体力」「知識」「経験」、この3つが欠かせません。

山には登山ルートごとに初心者から上級者向きまでレベルがあり、また季節や天候によってそのレベルも変化します。それらの登山レベルと、自分の「体力」「知識」「経験」のレベルがマッチしていないと、事故のリスクは飛躍的に高まります。

またプラスで必要になると私が感じているのが「想像力」を働かせること。「もしも自分に何かあったら、自分はどうすべきか?」のシミュレーションも忘れてはいけません。自然の中に入る最低限のマナーであり、すべきことだと思います。

「体力」「知識」「経験」(+想像力)に不安のある初心者であれば、そこを補うものとして、スマホは頼もしい武器になります。スマホを活用することで自身の安全度を高めていくためにぜひ積極的に活用して下さい。

注意しないといけないのは、バッテリーが切れてしまってはスマホやケータイは用をなさないので、予備のバッテリーを常に持ち歩くこと。

スマートフォンとモバイルバッテリー

もっと言うと、スマホがない場合でも問題なく動けるように、紙地図とコンパスを使った地図読みスキル含め、可能な限りリスク低減する努力を怠らないことが大事です。

スマートフォンと紙の地図とコンパス

電波マップも同じです。何かあった時に誰かに連絡ができるのは保険と同じ。これから登ろうとしている山の登山道で電波が通じるかを把握しておくことも、事故のリスクの軽減につながります。ぜひチェックしておきましょう。

au「携帯電話がご利用いただける登山道」 au「携帯電話がご利用いただける登山道」

――山における事故のリスクをすこしでも減らすために、そしてひとりでも多くの登山者が安心して登山を楽しめるように、auは日本百名山をはじめとする人気の山の登山道で電波対策を進めている。山に出かける際は事前に上記サイトをチェックしたうえで、スマホやケータイを上手に活用して登山を楽しんでほしい。

文:榎本一生
撮影:有坂政晴(STUH)

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