2019/12/03

YouTuberカジサックが実践! 東京モーターショーのドローンレース生中継 5Gと映像の未来

「DTRC2019」のステージでの日向坂46とカジサック

さてこの赤いジャージの男性、YouTuber・カジサックこと、お笑いコンビ・キングコングの梶原雄太さんである。彼が立っているのは、「FAI Drone Tokyo 2019 Racing and Conference」(DTRC2019)の決勝レースの日のステージ。

「DTRC2019」とは、2019年11月1、2日に国内最大の自動車の祭典「東京モーターショー 2019」内で開催された国際的ドローンレース・カンファレンス。

2022年以降のドローンの本格的な産業利用をテーマにした国際会議と、国内で初めて行われた世界のスカイスポーツを司るFAI(Fédération Aéronautique Internationale=国際航空連盟)公認のドローンレースだ。このレースには国内外42名のトップパイロットが参加した。

「DTRC2019」決勝レースの模様
「DTRC2019」決勝レースの模様

パイロットたちの戦いが行われるのはステージ上。会場に隣接されたL字型のコース内を、ドローンに搭載されたカメラから送られる映像をゴーグルで見て操縦する。レース用ドローンの速度は時速200kmを超えることもある。闇の中、甲高い羽音と緑や青の光を残しながら疾走するドローンレースは、すごい迫力。抜きつ抜かれつがにわかには視認できないスピード感は、まるでゲーム映像のような未来感だ。

そして同じステージで、このイベントの公式アンバサダーを務めた日向坂46のライブも行われ、今度は色とりどりのペンライトが客席に躍った。

「DTRC2019」決勝レースの日の日向坂46のライブ

日向坂ファンとドローン愛好家のみなさんがごった煮状態で、会場のボルテージは最高潮に! そしてそれをカジサックさんがさらに盛り上げた。

今回、KDDIは、このイベントの決勝レースの日、会場に5Gのアンテナを設置。1基はドローンのパイロットたちが操縦するステージの上部に、そしてもう1基はドローンレースのコース内折り返し地点から実際に5Gの電波を発信していたのだ。

「DTRC2019」の会場に設置された5Gアンテナ

そして、カジサックさんは5Gの電波を使って超高精細映像で、会場の模様を自身のYouTubeチャンネルから生配信していたのである。それが、今回「DTRC2019」でKDDIが行った5Gによる挑戦のひとつだ。

5G通信を活用した高画質映像のライブ配信

当日のカジサックのYouTube Liveの模様

カジサックさん、ドローン資格認定機関DPAのライセンスを持つドローンアイドルの永島聖羅さんをパートナーに会場を大いに盛り上げた。ステージに上って客席を煽ったかと思いきや、客席脇で永島さんによるレースの見どころ解説にチャチャを入れる。

当日のカジサックのYouTube Liveの模様

そしてこれらのすべてを、超高精細映像で、5Gを活用してYouTube Liveで配信。

当日のカジサックのYouTube Liveの模様

なお、5Gの時代には、こうした現場からの4K動画生配信も可能となる。4K映像の動画生配信は現在でも行われている。ただ、それはあくまで「屋内から」。Wi-Fi×光通信という環境による4K映像の生配信は一般的だが、いざこれを屋外から行おうとするとえらく大変。大掛かりな通信設備を搭載した中継車などが必要になるのだ。これが、5Gが普及すれば、配信側に必要な機材は基本、スマホのみ。

当日のカジサックのYouTube Liveの画面

「僕も生配信の経験はありますが、こういうかたちではやったことないですね!」とカジサックさん。配信が始まると、会場内に自らのスマホで視聴する人もチラホラ。YouTube Liveで自分の姿を見つけ「おおオレ出てる!」なんて、盛り上がるお客さんの姿も見受けられた。

そして、視聴者からは「画質いい」「映像きれい」のコメントも多数。

当日のカジサックのYouTube Liveの画面

現場でも実際にYouTube Liveを視聴してみたが、正直、未知の高画質! 5Gの時代になると、こうしたイベント会場からもスマホ1台で4K映像の生中継ができるようになるのだ!

そんな未来にどんなビジョンを持つのか、カジサックさんと永島聖羅さんに聞いてみた。

「5GはYouTubeとテレビの間の壁を壊すかも」カジサック

カジサックさんこと梶原雄太さんは、お笑いコンビ「キングコング」として2007、2008年に日本一の若手漫才師を決める「M-1グランプリ」決勝に進出。テレビでの活躍の一方、2018年の開始からわずか1年でチャンネル登録者数100万人を突破したYouTuberとしても知られている。

5Gについて語るカジサック

「まず、YouTuberとして現実的な話ですが、どこにいても動画のアップロードの時間が圧倒的に短くなるのが素晴らしいと思います。1回配信した動画に修正したい点があったりすると、一度非公開にして編集し直すんです。僕の動画って、普通のYouTuberさんより長時間のものが多いので、それをまたアップロードする際にも時間がかかるんですね。

作った動画はできるだけ最適なタイミングで見てもらいたいので、あまりタイムラグがあるとイヤなんです。これが5Gになると、どこからでも短時間でアップできるのが、正直、最強だと思います」

スマホ越しのカジサックのYouTube Liveの模様

カジサックさん、現状のテレビバラエティによくあるひな壇形式では芸人さんの実力は発揮しきれていないと考えている。だから自らYouTuberとなり、プロの芸人さんを招いて、たっぷり時間をとって見せ場を作る番組づくりを展開している。

「芸人さんは本当は面白いんだ、ということをテレビを見なくなった子どもたちにも伝えたいんです。僕、前からずっといろんな人たちにYouTubeやってほしいと思ってるんです。5Gになったら間違いなくチャンスは広がると思いますよ。たとえば、芸人さんのライブを生で配信するのがすごく簡単になりますよね!

僕の今のYouTubeのスタイルとは違いますけど、生配信は緊張感も伝わるし、視聴者からのリアルタイムのコメントももらえて芸人さんが真に実力を発揮するのに最適だと思います。今後もっともっといろんな人にYouTubeに進出してもらって盛り上げていければ、テレビのほうでももっとYouTubeを意識して、番組作りのスタイルが変わるんじゃないですか。逆にYouTube発信の人たちがテレビにもっともっと進出すれば、テレビとYouTubeの間にある壁は壊れるかもしれないですね」

「5Gとドローンの組み合わせで、どんどん面白い中継が」永島聖羅

5Gドローンについて語る永島聖羅

元乃木坂46であり、日本初の歌って踊ってドローンを飛ばせるアイドル、永島聖羅さんは5G通信とドローンの未来について、希望を語ってくれた。

「私はお仕事でドローンを操縦して撮影したりするんですが、5Gになると撮った映像をロケ先からすぐマネージャーさんやスタッフさんに送れるので、その部分の手間が格段にラクになるのが本当にうれしいです。5G時代になるのが、待ち遠しいくらい(笑)。

今後は、ドローンに搭載した4Kカメラで撮影しながら、実況もできるかもしれないですね。5G通信はすごく夢が広がります。来年以降、今よりももっと世の中に、ドローンを活用したきれいなライブ映像が流れる機会が増えると思うんです。スポーツ中継でも、ドローンの4Kカメラが使われたりしてほしいな。

5G通信なら実況もすごく簡単になるということなので、ドローンと組み合わせて、これまでにないマイナーな競技なんかも取り上げられるようになると面白いですね! 私自身、ずっと気になっているので、5G通信とドローンの組み合わせは今後も注目していきます」

こちらが当日のYouTube Liveの模様。1時間にわたる長丁場ながら、さすがの芸人力で面白く見せてくれるのである。

5Gのもうひとつの挑戦 ドローンから4K映像をリアルタイム中継

今回、カジサックさんのYouTube Liveとは別に、もうひとつ5Gを使った挑戦が行われていたのだ。それは「5Gドローン4Kリアルタイム中継」。

レース当日、ステージ上のスクリーンにはドローンレースの模様が4Kライブ映像としてリアルタイムで映し出されていた。右上の表示をご覧いただきたい。

「DTRC2019」決勝レース当日のステージ上の模様

ステージ上のスクリーンに映し出されていたのは、レースの模様を4Kで撮影した映像をリアルタイムで配信したものだ。

この映像を撮影していたのも、実はドローン。

4K映像を5Gで伝送するための撮影用ドローン

この大型ドローンには4Kカメラと5G端末を搭載。コース内から、発光しながら猛スピードで飛行するドローンの模様を高精細カメラで捉えた。

4K映像を5Gで伝送するための撮影用ドローンとコース 画像左側が撮影用ドローン。画像右の赤い光の帯と、中央部緑の光がレース用ドローン

目まぐるしく変わるレース展開を会場でリアルに伝えるため、会場内では、5G通信に加え「超低遅延4K伝送」を実践した。

超低遅延4K伝送の仕組み

5G通信でも、大容量の4K映像を生中継しようとすると遅延が生じる。そのため、送信側でエンコーダという装置を使って映像を圧縮。容量を小さくしてから送り、そのデータを受信側のデコーダという装置で解凍して4K映像に戻すという工程が必要なのだ。それでもこれまでは、0.5秒の遅延が発生していた。その圧縮と解凍の工程を見直すことで、スピードを5倍に上げることに成功した。

ドローンレースのように、高速で目まぐるしく順位が入れ替わるスポーツの中継で、実際のレースと場内モニターの映像にタイムラグがあると、客席のテンションが下がるかもしれない。しかし5Gと「超低遅延4K伝送」により、今回のレース中継映像はリアルタイムでステージ上のスクリーンに映し出され、会場の盛り上がりが途切れることはなかった。

2020年春以降、5Gサービスが始まると生活はどう変わるのだろうか

今回は東京モーターショーの会場という限定的な空間で5Gの電波を飛ばした。2020年春以降は、徐々に利用できるエリアが増えていくだろう。最後にKDDI担当者に5G実用化以降のビジョンを聞いた。

「5Gはエンタメのあり方を大きく変えます」KDDI・松木友明

5Gの運用について語るKDDI・松木友明 KDDI 次世代基盤整備室 松木友明

KDDIで5Gを中心とした新たなプラットフォームの活用の仕方について追求し、今回のイベントを仕掛けたKDDI 次世代基盤整備室の松木友明は、5Gの今後についてこう語る。

「KDDIでは、2020年春ごろから5Gサービスを提供していく予定です。これまでの通信が高速・大容量・低遅延になるということだけでなく、これまでにないまったく新しい体験を提供していきたいと考えています。

これから5Gが始まることにより、いろいろなことが変わっていきます。たとえば今回の『5Gドローンによる4Kリアルタイム中継』では、会場のお客さまに中継映像で、現場ならではの臨場感と映像ならではの迫力というものを同時に楽しんでいただくことができたと思っています。

また、エンタメというと受け手としての楽しみを想像する人が多いかと思いますが、5G後の世界では、誰でも簡単に自分の好きなコンテンツをライブ配信できるようになる。誰もが簡単に送り手の側に立ち、自分の好きなコンテンツを広める喜びを体感する。そんな世界を目指していきたいと思っています」

次なる通信システム・5Gは、未来ではなく「今」

今回、「東京モーターショー 2019」内で行われた「DTRC2019」の会場には次世代通信5Gの電波が実際に送信され、さまざまなサービスが実施された。2020年春には、いよいよ5Gは実用化されていく。

5Gはもはや未来の話ではない。これから訪れる新しい通信は、間違いなくこれまでにないワクワクをもたらす。それはまもなく。期待してお待ちいただきたい。

文:武田篤典
撮影:中田昌孝

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