2015/01/27

失敗から生まれた画像SNS『Instagram』 ~ケビン・シストロム~

ケビン・シストロム/Instagram共同創業者

【何をした人?】写真共有アプリ「Instagram」の共同創業者(CEO)。
【何ですごいの?】「Instagram」をわずか8週間で誕生させ、大ヒットさせた。
【今は何をしているの?】Instagram社CEO兼ウォルマート社の取締役。TIMES誌の「最も影響力を持つ100人」にも常にランクイン。実業界の若きトップの一人として活躍している。

2014 年12月、Instagramは月間アクティブユーザー数が3億人を突破し、1日に7,000万件を超える写真や動画がシェアされていると発表した。オバマ大統領をはじめ、海外セレブにも人気があり、日本でも安藤美姫や、きゃりーぱみゅぱみゅの写真が話題になったことは記憶に新しい。この世界最大規模の写真コミュニティーは、たった8週間で開発された。それを生み出した男が、ケビン・シストロムだ。

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■2歳にして、興味を抱いたプログラミングの世界

1983年12月、シストロムは米国・マサチューセッツ州に生まれた。2歳の頃からプログラミングに興味を持ち、独学で楽しみながらコンピューターと親しんでいたという。高校卒業後はスタンフォード大学へ進学しコンピュータサイエンスを専攻するも、途中から経営科学・経営工学専攻に変更、最終的に経営科学・経営工学の理学修士号を取得して同大学を卒業した。

■イタリアで学んだ美へのこだわり

大学卒業後、シストロムはイタリア・フィレンツェに写真を学びに渡航。なぜなら、彼はアナログな写真をこよなく愛していたから。デジタルカメラがどんどん高機能になっていく中で、彼はアナログなインスタントカメラやトイカメラの持つ、ノスタルジックな温かみのある写真に夢中になっていた。写真を愛したその気持ちと、イタリアで培った美に対する感覚は、後にInstagramに発展する。

■位置情報アプリの失敗により誕生した「Instagram」

Instagramが生まれる前、シストロムは大学の同窓、マイク・クリーガーとともに起業。そしてInstagramの前身・位置情報アプリ「Burbn(バーブン)」を開発した。シストロムはこのアプリを、「分かりにくく、差別化されておらず、そして遅かった」と述懐するが、Burbnによって50万ドルの支援を受けることに成功する。しかし、Burbnはシストロムいわく「数名のユーザーが何度も使ってくれたが、その他のユーザーはすぐに去ってしまう状況であった」と言う。そして問題点を追求する中で、Burbnが写真共有に使われていることに着目する。

■アプリ開発の期間はわずか8週間

位置情報アプリに写真機能があったBurbnから一転、写真機能の中に位置情報を加えた写真共有アプリを開発することにしたシストロム。機能もあえて限定し、写真の「撮影」、「加工」、「共有」に焦点を絞った。また、iPhoneで利用することを前提に、画質にはこだわらず、画角はコダックのインスタマチック、ポラロイドのインスタントカメラの両方に敬意を払い、正方形のみとシンプルに。これはシストロムなりに生かすもの、捨てるものを考えた結果だった。こうして、写真に特化した、シンプルで必要なことが兼ね備えられたアプリ「Instagram」が生まれた。その開発期間は、わずか8週間だったという。

■リアルタイム性を求めた写真共有により大ヒット

2010年10月6日、アップルのApp Storeに登場したInstagramは、2カ月後には100万人の登録ユーザーを獲得。翌2011年6月までに500万人を突破し、リリースから1年を待たず1,000万人に到達。2012年4月には、Facebook社がInstagramを10億ドルで買収することを発表した。Instagramは、買収後も独立して運営され、TwitterなどFacebookと競合するSNSサービスとの連携も、これまでどおり継続することとなった。

■大きな影響力を持つ若きニューヒーロー

シストロムは、瞬く間にスターダムにのし上がった。2011年以降、Fortune誌の「40歳以下の40人」、TIMES誌の「最も影響力を持つ100人」にも常にランクインしている。そして2014年には、米小売り最大手・ウォルマート社の15人目の取締役に抜擢された。このウォルマートの取締役会には、ヤフーのマリッサ・メイヤー CEOも参画している。こうして、実業界のトップの一人となったケビン・シストロムは現在31歳(2015年1月現在)。IT業界の若きニューヒーローの一人である彼の情熱やソーシャルメディアに関する深い知識が今後、どのように社会を変えていくのか。彼から目が離せない。

文:赤坂匡介(with HK)