2014/08/29

漁業ハッカソンで水産資源を守る

「FAST COMPANY」の記事によると、世界の漁業権のある漁場の4分の3は乱獲、つまり再生産される量よりも多くの魚が獲られている状態と言われているそうだ。その一因とみられているのが、密漁だ。規制する法律は各国にあるものの、摘発する手段がない、あるいは摘発するにはコストがかかり過ぎるのが課題となっている。

アメリカ国務省はフィシャッカソン(Fishackathon=fish+hackathon)なるイベントを開催して、ハッカーたちに挑戦(=協力)を呼びかけた。守るべき対象は米国内とは限らず、世界の、特に途上国の持続可能性と小規模漁業従事者だ。

フィシャッカソンは、6月にシリコンバレー、ボストン、ボルチモア、ニューヨーク、マイアミの5カ所で同時開催され、優勝したのは、カリフォルニア大学バークレー校のチームによる「フィッシュDB(FishDB)」。西アフリカの漁業を対象にしたアプリで、漁師が漁船を登録し、漁業免許を申請できるウェブベースのモバイルアプリ、スマートフォンでなくても漁師が同様の登録・申請ができるSMSベースのシステムと、各国政府が免許申請を処理できるウェブアプリからなっている。漁師が密漁船などを見つけたら通報することもできる。フィシャッカソンでは、ほかにも密漁をかんたんに報告できるアプリが開発されている。

フィシャッカソンで開発されたアプリがすぐに利用されるようになってすぐに密漁が激減するとは思えないが、こうした取り組みの先に本当に有効な手段が生まれてくる可能性もある。さらに漁業の専門家たちとハッカーたちがつながることで、多くの課題について協力し合えるネットワークが形成される点も重視されているようだ。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。