2014/07/08

不当な弾圧から身を守るための『パニックボタン』

Panic Button(Amnesty International)

国際人権団体であるアムネスティ・インターナショナルが提供するAndroidアプリ"Panic Button"は、逮捕、誘拐、拷問などの危険に直面した人権活動家の命を守るためのアプリだ。オープンソースで、ソースコードはgithubに公開されている。

アプリの使い方はこうだ。まず、事前に信頼できる3名の電話番号を登録しておく。非常時には、スマートフォンの電源ボタンを操作するだけで、数分置きに登録した電話番号あてにSMSを発信する。GPS機能をONにしていれば、位置情報も記載される。

非常時に、あらかじめ登録した宛先にSMSでアラートを送るアプリは多数あるが、時には暴力的に行われる拘束時に「スマートフォンの画面を見ながらアプリを起動してボタンをタップ」なんて悠長な操作はしていられない。このアプリは、画面を見なくてもスマートフォンを手に持ち電源ボタンを手探りで押すだけで、あとはバッテリーと通信回線がある限り、バックグラウンドでメッセージを送信してくれるところが、より実用的だ。

活動家が拘束された場合、最初の数時間以内に救出に向けて、警察への電話による釈放要請や弁護士や組織を動員した国際的なキャンペーンを開始できるかどうかが、無事に釈放されるかどうかの分かれ目になるのだという。そのためには、まず「事件が発生した」ことを一刻も早く信頼できる人に知らせるだけでなく、アラートを受けた人たちは、その時どのように行動するかを平時から話し合っておく必要がある。

アプリは17カ国に住む100名のユーザーによる3カ月間のプライベートβテストを経て、パブリックβ版がGoogle Play Storeに公開された。現在は4カ国語に対応している。

なお、筆者がこのアプリをダウンロードしてアラートを試してみたところ、送信先に指定した番号あてに、一晩で100通以上のSMSが送信されていた。また、アプリの紹介サイトには、「パニックボタンを使うことであなたの位置情報と信頼できる人の情報が漏洩する可能性がある」といった注意書きがある。興味本位でダウンロードして起動するのは決してお勧めしない。だが、身の安全を確保するために、このようなアプリを必要とする人たちが世界にはまだ数多くいるということを忘れないようにしたい。

著者:水島 みなと

IT系コンサルティングファームを退職後、フリーのITコンサルタントとして独立。エンタープライズICT分野を中心に執筆も行う。趣味は散歩、特に建物めぐり。最近猫を飼い始めて、ペット関連サービスの情報を収集中。