2014/03/17

おそらく世界一のベッド

ミネソタ州ミネアポリスのSleep Number社は1987年創業のベッドメーカーで、エアマットレスなどを利用して、寝ている人に合わせてマットの固さや傾きを変えられるベッドで有名だ。同社が2月に発表した「Sleep Number x12」は、"おそらく世界一のベッド"だ。x12のサービスマーク(SM)は、"Probably the best bed in the world"とされている。当初はパイロット販売で、全米での発売は数カ月後になる。

x12は、BAM Labs社(カリフォルニア州ロスガトス)とのパートナーシップで生まれた。BAM Labs社は、ベッドの下に敷くセンサーで心拍数や睡眠時無呼吸を計測するシステムを病院用のベッドに提供してきた。同社技術が消費者向け製品に応用されるのは、これが初めて。

SleepIQと呼ばれる技術で、寝ている人の睡眠状態をモニタリングし、ベッドの形状をどう変えればよいか、さらには日常生活をどのように改善すればよいかまでレコメンド(推奨)してくれる。呼吸や心拍数も記録する。

トラッキングした情報は睡眠の質に変換されて、スマートフォンまたはタブレットのアプリにSleepIQスコアとして表示される。こうした数値の経時変化に、利用者が入力する生活習慣、たとえばコーヒー消費量とかエクササイズの実施などの相関が視覚化されて、どのような生活が良き睡眠をもたらすかはっきり分かるようになるらしい。

また、x12に採用されているFlexFit技術は、内蔵された2つのエアマットレスを駆使して、ベッドの傾きなどを心地よい形状に変化させる。ベッドは音声コマンドで操作できる。価格は、クイーンサイズで7999.99ドル。耐久年数を25年とするなら、年間320ドル弱(約3万3000円)となるが、これを高いと見るか安いと見るかは、睡眠に対する考え方で変わってくるだろう。

BAM Labs社の病院用ベッドは、当初はセンサーのみを提供していたが、昨年から姿勢制御機能を搭載したそうだ。導入した病院では、看護師や介護士が患者のベッド内での動きを把握できるため、転落防止に役立ち、見回りの手間も相当省けたらしい。

x12は一般消費者向きベッドで、病院用と同じく、眠る際にヘッドバンドやリストバンドを巻く必要もなく、寝るだけで状態をトラッキングしてくれるし、メーカーによればFlexFit技術によって「究極の心地よさ」が得られるそうだ。何しろ、"多分、世界一のベッド"なのだから。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。