2016/08/25
【通信×防災①】災害発生時、まずスマホでやるべきこと
災害時、いざというときにはどう対応すればいいのだろう。知っているようで、知らない。備えておかなければと思いながらも、なかなかできていない――。
そんな人たちへ向けて、この連載では今や最も身近な存在と言えるスマホやケータイを使ってできることや、備えを紹介したい。SNSやアプリの活用術など、災害時に役立つ【通信×防災】の情報をお伝えしよう。
災害時、一刻も早く親しい人に連絡を取りたいと考えるのは当然のこと。ひと昔前なら安否確認は電話が主流だったが、最近ではSNSを利用する人が増えている。
実は違う!? 災害時に役立つLINE、Facebook、Twitterの上手な使い分けとは?
「SNSのなかでも、ごく親しい人への安否確認にはLINEが有効です」と教えてくれたのは、ITジャーナリストの高橋暁子さん。その理由とは?
「普及率の高さもありますが、LINEは電話番号を知っているなど、直接のやり取りのある相手を登録することが多いので、大半の人が家族や親しい友人を登録しています。だから親しい人への安否通知に効果的と言えます。メッセージを送ったときに、返事がなくとも既読がつけばとりあえず無事がわかるのも便利です」
実はLINEの既読機能が生まれたきっかけは、東日本大震災。相手に返信する余裕がなくても既読が付けば安心できる、「こんな機能があったらいいね」という考えから生まれたという。では、FacebookやTwitterはどうだろう?
「Facebookは仕事でつながっている人などが多いので、『私は無事です』などと発信すれば、会社関係や取引先などに無事を知らせることができます。
Twitterは、安否確認よりも情報収集や拡散に向いています。災害が発生したときには、情報収集が重要。テレビやラジオも情報も必要ですが、Twitterで現地の人が発信している情報は、交通機関や避難場所の状況がより早く、具体的に伝わるケースも多いです。もちろん、デマに惑わされないために、情報をしっかり見極める能力は必要です。また、自ら被災地域にいる場合は、不特定多数に向けて必要な情報を発信する手段にもなります」
■LINE、Twitter、Facebookの特徴
シニア世代にオススメ! 災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板サービスで安否確認
auの災害用伝言サービス
SNSの特徴を知って活用すれば、災害時の安否確認や情報集に役立ちそうだ。とはいえ、自分の親世代やシニア世代はガラケーだったり、ケータイすら持っていないというケースもある。
「シニア世代には、災害用伝言ダイヤル(171)がオススメです。これは大災害時などに設置されるもので、171(イナイ)にダイヤルをして音声メッセージを録音・再生することができます。ネットの掲示板による同じサービスもあります」
また、各携帯電話会社も災害時には伝言板サービスを開設する。
「災害用伝言板は通信各社がアプリを提供しているので、万が一に備えてダウンロードをしておくと安心です。毎月1日と15日にはサービスを体験利用できるので、ぜひ実際に使ってみてください」
※【通信×防災②】誰でもカンタン! 災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板サービスを体験してみた
災害時には「電話よりもデータ」を活用する
また、災害後は一刻も早く、大切な人の声を聞きたくなるものだが、多くの人が一斉に電話をすることで「輻輳(ふくそう)」という、いわゆる回線のパンク状態が発生する一因になるので、本当に必要な人のために、電話は控えたほうがいい。
「大規模災害などが発生すると、被災地への電話が爆発的に集中し、通信ネットワークの処理能力をオーバーし、電話がつながらなくなります。この状態が輻輳です。つながるまで繰り返し電話をかけ直すことで、より増大します」
東日本大震災でも輻輳は発生しており、その教訓を元に総務省では「災害時には不要不急な電話を控えるように」と周知。安否を確認したり、状況を知らせたりする場合は、音声電話ではなく、データ量が少ないSNSの文字メッセージやメールなどを使うように呼びかけているという。災害後の安否確認は電話ではなく、伝言板やSNSなどのデータ通信を活用するように心がけよう。
スマホの生命線!? 電池の消耗を極力抑える方法とは?
災害後はスマホの電池問題も重要だ。いくらSNSで安否確認をしたくても、電池切れになると手も足もでない。
iPhoneのiOS 9以降は、「設定」の「バッテリー」から「低電力モード」に設定できる
「電池をもっとも消費するのはディスプレイ。使用する際には輝度を落として、画面の自動オフの時間を短くするなどすれば電池を長持ちさせることができます。また、電波状態が悪い場所では電波を探すために電池を消費するので、いっそのこと通信機能をオフにする機内モードにするのもあり。機内モードでは、Wi-FiやBluetooth、GPSの設定もOFFになるので、これらの電池消費も抑えることができます」
最近の機種では、iPhoneでは「低電力モード」を搭載。また、Androidでも、「省電力モード」といった名称で、電池の消費を抑える機能が搭載されていることが多い。
これらを活用すると、前述した電池消費の抑制を一気に適用させてくれることもある。自分が使っている機種にそういった機能が搭載されているかどうかをチェックして、もし搭載されているなら、設定方法をあらかじめ確認しておこう。
「電池の消費を抑えるのはもちろんですが、災害時に備えてモバイルバッテリーを準備しておくこともオススメします。最近は小さくて大容量なタイプも増えているので、お守り代わりにカバンに入れておくといいでしょう」と高橋さん。
防災グッズのなかには、手回し(ダイナモ)発電機や、スマホに直接充電できる小型の太陽光パネルといった商品もある。手回し発電機はどんな場所でも発電することができるが、発電量が弱い。太陽光パネルは置いておくだけで充電できるが、昼閒しか充電できず、また天候にも左右される。どれも長所、短所があるので、災害発生時にはそれらを上手に組み合わせて電源の確保に備えるのがよさそうだ。
スマホやSNSの普及によって、災害時の安否確認や情報収集は格段に進歩しているようだ。連載第2回以降は、より実践的なスマホやSNSを使った防災や災害時の対応などを紹介していこう。
- 【通信×防災①】のまとめ
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- 1.LINE、Facebook、Twitterは目的に合わせて使い分ける
- 2.ガラケー派には災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板サービス。毎月1日、15日は体験利用ができるのでやってみよう
- 3.電話(音声通話)よりもデータ通信を使用する
- 4.省エネモードでバッテリーを長持ちさせる
文:T&S 編集部
取材協力:高橋暁子
高橋暁子
元小学校教員。Webの編集者などを経て、ITジャーナリストとして独立。LINE、Facebook、TwitterなどのSNS、情報リテラシー教育に詳しく、講演や出張授業などで安心安全利用の啓蒙に努める。一方で、企業などのコンサルタントやセミナーを手掛ける。テレビ、ラジオなどのメディア出演多数。最新刊は「Twitter広告運用ガイド」
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