2016/03/09

| 更新

2019/02/06

コネクテッドカーでどれほど便利になるのか? メリットやできること、仕組みを解説

クルマがインターネットにつながったら

このところ、「コネクテッドカー(つながるクルマ)」という言葉が自動車業界のあちこちで出てくるようになった。

自動運転車で移動しながら雑誌を読む女性

2019年1月に米国ラスベガスで開催された世界最大の家電展示会「CES 2019」でも、自動車メーカーや自動車部品メーカーだけでなく、多くの家電メーカーもまた競ってコネクテッドカー(コネクテッドモビリティと呼ぶメーカーも)にまつわる新技術を展示していた。

いったい、クルマはなにに「つながる」というのだろう。それは無線通信ネットワークであり、インターネットだ。クルマがネットにつながると、クルマはどんなふうに変わるのだろうか。

クルマが常時、インターネットにつながるようになると、たとえば、事故が起きてエアバックが開いたときには、すぐにその情報が専用のコールセンターに送信され、オペレーターが救助・救急機関に出動を要請するほか、ドライバーに通信回線を通じて話しかけて安否を確かめたり、アドバイスをすることができるようになる。

また、センサーがクルマの不具合を発見して、自動車メーカーやディーラーのサーバーに報告してくれることで、所有者に修理連絡できるほか、点検時の部品の準備がスムーズになるなど、さまざまなサービスをスピーディーに受けることができ、安全も確保できるようになる

あるいは、カーナビの地図が常に自動更新されたり、GPSで取得した位置情報からAIがおすすめの飲食店をガイドしたり、センサーが感知した運転のクセをAIが学習し、ブレーキやアクセルの利かせ方をリアルタイムにチューニングするといったことも可能になる。

究極の「つながるクルマ」は完全自動運転車

つながるクルマの取り組みは、クルマとメーカー、クルマとユーザーという一対一のつながりにとどまらず、膨大な数のクルマを一挙につなげるネットワーク化への取り組みも盛んに研究されている。

さまざまなセンサーやカメラを搭載したクルマ同士がつながったとき、それは膨大な数の「目」と「耳」を持った巨大なネットワークとなり、その結果、つながっているすべてのクルマの走行位置だけでなく、天候、事故や渋滞の場所など、さまざまな道路情報がリアルタイムに手に入る

そこから得られたデータから、ドライバーはもっとも効率のよいルート情報を受け取ることができるし、運転席から見えないカーブの向こう側の様子を「見る」ことで、交差点での出会い頭の衝突などの交通事故の予防にもつながるのだ。

このクルマの「つながる」化によって蓄積されるビッグデータは、完全自動運転のための緻密でダイナミックなデジタルマップづくりに生かされる。つまり、究極の「つながるクルマ」とは、あたかも自分の意志を持っているかのように、走り回ることができる完全自動運転車のことなのだ。

2020年ごろまでには、高速道路を自動運転できるクルマが、そして2020年代後半には市街路でも走行可能な完全自動運転のクルマが市販されるだろうといわれている。

KDDIによる自動運転車の走行デモ

こちらはKDDIが2018年5月に福岡県で開催した自動運転車の走行デモイベントの模様。走行エリアが限定された環境で、運転席が無人の状態ですべての走行操作をシステムが行う「レベル4」をクリアしている。通信との融合により、自動運転実現の未来は近い。

「CarPlay(カープレイ)」と「Android Auto(アンドロイドオート)」登場

さて、そんな未来のコネクテッド・カー気分を今すぐ味わえる方法がある。それが、Appleの「CarPlay」(カープレイ)とGoogleの「Android Auto」(アンドロイドオート)だ。どちらも、iPhoneやAndroid端末を車載ディスプレイに接続して、スマホの機能を車内で安全に使えるようにするというものだ。

Appleの「CarPlay」
Googleの「Android Auto」 Appleの「CarPlay」とGoogleの「Android Auto」については、それぞれの専用WEBサイトで詳しく知ることができる

「CarPlay」も「Android Auto」も基本的な使い方はほぼ同じ。対応している車載ディスプレイにUSBかWi-FiでiPhone・iPadかAndroidのスマホを接続するだけだ。するとカーナビの画面があたかもスマホの画面のように変身する

すべてのアプリが使えるわけではないが、メールやメッセージ、音楽アプリのSpotify(スポティファイ)やオーディオブックアプリのAudible(オーディブル)など、主要なアプリを車載ディスプレイのタッチスクリーンやハンドルのボタンでコントロール可能だ。もちろん、車載マイクからsiriやGoogleアシスタントも使うことができる。

肝心のカーナビ機能も、「CarPlay」「Android Auto」ともにGoogleマップが使える(「Carplay」ではiOS 12以降)。スマホの小さな画面よりも見やすいうえ、2D表示とバードビュー表示が選べ、混雑に応じて道路が色分けされるのでとても便利だ。自宅でスマホのGoogleマップに目的地を入力し、クルマに乗ってからは「CarPlay」や「Android Auto」のGoogleマップに引き継ぐといった使い方ができるのもありがたい。

今や多くのメーカーの車種がこの「CarPlay」と「Android Auto」に対応している。なかには「CarPlay」と「Android Auto」の利用を前提としたディスプレイだけを搭載し、初めからナビを搭載しないクルマも登場してきている。あなたのクルマにもスマホをつなげて、未来の「つながるクルマ」気分をひと足早く味わってみてはいかがだろうか。

文:太田 穣