2016/05/24

プログラミングできるお酒? 「I Love You」はウォッカボトルで伝えよう

シリコンバレーのソフトウエア技術と、オランダ産の高級ウォッカ。一見、なんの関係もないこのふたつが融合して生まれたのが、世界初のプログラミングできるウォッカボトル「Medea Vodka(メデア・ウォッカ)」だ。

アプリで入力したメッセージがボトルに流れる!?

提供:MEDEA Vodka

透明なウォッカボトルの真ん中に、青いLED電飾ディスプレー用の"電光掲示板"が帯状に巻いてある。専用のアプリをダウンロードすると、Bluetooth経由でアプリからボトルにアクセスできる。「HELLO」や「I LOVE YOU」、「HAPPY BIRTHDAY」など、すでにプログラムされた計6つのメッセージがあり、そのひとつを選ぶと、LEDで青く発光したメッセージがボトルに流れる。

一度表示されたメッセージは45分間自動的に流れ続け、そのあとは自然にオフになる。しくみはシンプルだが、メッセージが青白く光りながらグルグル回るのを見ると、単純に面白い。このボトルをホームパーティーに持っていけば、注目度は非常に高そうだ。

「パーティーでみんながいちばん盛り上がるのは、個人の名前をディスプレイ表示して遊ぶこと。自分の名前がボトルにグルグル表示されると、特別な感じがして嬉しいんですよ」

そう話すのは、Medea社のCEOのブランドン・レイドロー氏だ。

提供:MEDEA Vodka

たとえば恋人や家族などの名前をLEDで表示して驚かせたい場合には、スマホのアプリ上で名前を入力するだけ。プログラミングの知識はまったくまったくいらず、誰でも使える。最大254文字まで自由にメッセージを入力できるので、かなり長いメッセージも表示可能だ。装着されたLED電飾の使用時間の寿命は20時間で、カスタマイズしたメッセージを含め、全部で10種類のメッセージを表示できる。寿命が尽きたあとは、通常のボトルとしてリサイクルに出すことが可能だ。

ちなみにこの「Medea Vodka」は、サンフランシスコの「世界スピリッツ・コンペティション」で、味とパッケージデザインの両方でゴールドメダルを受賞している。味の方もお墨付きというわけだ。

LEDバンドは特許取得済み! 鉄板メッセージは「今日はお招きありがとう」

そもそもなぜ、プログラミングできるウォッカボトルを作ろうと思ったのだろうか?

「うちの社はカリフォルニア州のベイエリアに本社があり、土地柄、テクノロジーを使って、まだ誰もやっていない面白いことを提案しようというのが狙いでした」と、レイドロー氏。

18世紀からオランダのスキーダム地方で製造されていた老舗ウォッカを販売する同社で、飲料分野のキャリアを積んでいたレイドロー氏が出会ったのは、元ピープルソフト重役のマーガレット・テイラーだった。ピープルソフト社は、ソフトウエア大手のオラクルに100億ドル以上の価格で買収されたソフトウエアメーカーだ。そのブレーンのひとりだったテイラー氏がMedea社の役員として迎えられ、プログラミング技術を応用し、カスタマイズされたボトルを作ろうと提案した。

「うちのLEDの電飾バンドに使われている技術はすでに特許を取ってあるので、ほかの飲料メーカーが真似しようとしてもできません」。

提供:MEDEA Vodka

価格は1本28ドルから33ドルと、通常のウォッカよりもやや高めの値段。このボトルにはLED電飾だけでなく、GPSが搭載されており、位置もトラッキングできる。パーティーなどで自分のボトルが行方不明になってしまったり、万一、誰かに盗まれたとしても追跡可能なわけだ。

ターゲット客はクラブやバー通いに熱心な20代の若者だけではないという。

「40代から70代の層が、ホームパーティー用にギフトとして買って持っていくことが多く、なかには90代のお客さんもいますよ」とレイドロー氏。

ホームパーティーに招かれて、玄関を入るときに「お招きありがとう!」というメッセージを電飾で流しながら入っていけば、間違いなく人気者になれるとのこと。昨年秋に売り出され、すでに2万1,000個を出荷している。

ボトルには温度センサーを搭載している。飲み頃の温度に冷えたら、冷蔵庫の中のボトルからスマホのアプリに直接アラートが送られるしくみだ。「自分の好きな適温をあらかじめ入力しておけば、ボトルがその温度に達したときにアラートが送られるので便利」とレイドロー氏は言う。

さらに、ボトルにセンサーを取り付け、注いだウォッカの量をトラッキングできる機能も開発中だ。トラッキング機能はバーのオーナーにとって、在庫管理の強い味方になりそうだ。

「ひとりひとりのバーテンダーがウォッカをどれだけの量注いでいるのか、細かいデータが集積できるので、注ぎすぎを防ぐこともできるし、コスト管理がしやすい」とレイドロー氏は言う。

また、消費者が気軽に遊べるようなソーシャルゲームなどの機能も今後、付け加えていきたいという。 IoTのなかでも、アルコールという極めてソーシャルな要素が高い「モノ」と技術を融合させているだけに、ソフトウエアのアップデート次第でさまざまな用途の可能性がありそうだ。

日本でも日本語の文字の電飾メッセージを流せるボトルを今年の冬ごろには販売したいとのこと。少し気が早いが、今年のクリスマスのパーティグッズの目玉になるかもしれない。

文:長野美穂