2021/02/02

KDDIとNTTが社会貢献活動で連携!ともに災害への対策を行う『つなぐ×かえる』プロジェクト

KDDIとNTTは、2020年秋より「つなぐ×かえる」と題したプロジェクトをスタートさせている。

KDDIとNTTのつなぐ×かえるプロジェクトのロゴ

両社は2020年9月11日に社会貢献連携協定を締結。近年の相次ぐ災害やコロナ禍において顕在化してきた新たな社会課題に対して、両社が連携することで、「より早く」「より多く」の課題解決に貢献していくことを目指している。

このプロジェクトの第一弾として両社で取り組むのは、災害時におけるケーブルシップの相互活用。KDDIとNTTはそれぞれ海底への光通信ケーブルの敷設と保守・修理のための船舶=ケーブルシップを保有しているが、今後、災害が発生した際には被災地に向けてさまざまな災害対策物資を届けるために、ケーブルシップを相互活用していくことになる。

KDDIとNTTが保有しているケーブルシップとは

そもそもケーブルシップとはどういうものか。

いまや国内・国際問わず、通信において光海底ケーブルは欠かせない。国際電話やインターネットだけでなく、スポーツ中継やニュース映像の生配信も、海底に敷設された光ケーブルを通じて行われている。そうした光海底ケーブルの敷設・埋設や修理・保守を行うために運用している船である。

なおKDDIのケーブルシップは横浜・北九州を、NTTは長崎・横浜を母港としており、それぞれグループ会社である国際ケーブル・シップ社、NTTワールドエンジニアリングマリン社を通して保有・運用されている。

これらがKDDIの「KDDIオーシャンリンク」(左)と「KDDIケーブルインフィニティ」(右)。

KDDI保有のケーブルシップ、「KDDIオーシャンリンク」と「KDDIケーブルインフィニティ」 KDDI保有のケーブルシップ。左・「KDDIオーシャンリンク」、右・「KDDIケーブルインフィニティ」

そしてNTTの「きずな」(左)と、「SUBARU」(右)。

NTT保有のケーブルシップ、「きずな」と「SUBARU」 NTT保有のケーブルシップ。左・「きずな」、右・「SUBARU」

近年、これらの船はそれぞれ災害地への支援の手段としても活用しており、2018年9月の北海道胆振東部地震で、KDDIはケーブルシップをはじめて災害支援に出動。停電などにより機能停止した現地の基地局の代わりに、船上から携帯電話の電波を発射するため、「KDDIオーシャンリンク」を苫小牧に向けて出動させたこともある。その際、避難所に届けるための支援物資も併せて運搬した。

2018年の北海道胆振東部地震に出動した「KDDIオーシャンリンク」 2018年の北海道胆振東部地震に「KDDIオーシャンリンク」は出動。船上から電波を発信し、物資の運搬も行った

一度に大量の物資を輸送できること、仮に陸路が遮断されても海から被災地にアプローチできることなどから、ケーブルシップの災害支援への活用は今後ますます期待されているのだ。

災害時に2社の連携で、より早くより多くの支援と復旧を目指す

KDDIとNTTはいかにして連携し、「つなぐ×かえる」プロジェクトをスタートさせることになったのだろうか。プロジェクト発足時からKDDIの代表のひとりとしてNTTと協議してきた、KDDI総務本部の鳥光健太郎に話を聞いた。

KDDI総務部 鳥光健太郎 KDDI総務本部 総務部 鳥光健太郎

2019年に両社の上層部が直接話をする機会があり、そこで「社会課題領域に関しては手を組んでやっていくことが必要」という話題が出た。プロジェクトの開始は2020年の1月から。両社代表メンバーが毎週1回、互いのオフィスを行き来しながら「どんな取り組みが有効か」を協議したという。

「両社が協力し合うとどんな社会課題領域が解決できそうか、幅広く意見を出し合い、そこから課題の大きさと、より通信事業者である我々が貢献できそうな分野という点で絞り込みました。

実際、災害対策は最初の時点から大きな課題としてあったんですが、近年、気候変動などによって災害の規模が大きく頻度が高くなっているなか、両社が持っている船舶は他社にはない大きな資産だとわかっていました。それをうまく相互活用することで、より早く多くの人たちを支援できるのではないかと考えたんです」

NTTのケーブルシップ「きずな」とKDDI運用本部の面々 NTTのケーブルシップ「きずな」の母港・長崎で行った訓練の模様。KDDI運用本部の面々と車載型基地局

その後、2020年9月の社会貢献連携協定締結があり、CMがオンエアされた。

「会社の規模もカラーも違い、普段は競争関係にある両社での調整は難しくはありましたが、いかに早く多くの人たちを支援できるかというゴールはきちんと共有できていましたので、同じ方向を向きながらスピード感を持って進めることができたと思っています」

実際に災害時にはどのように支援を行うのか

KDDIには、通信がきちんとつながっているかどうか、24時間365日サービスを管理し続けている「運用本部」という部署がある。この部署は、平時のネットワーク・サービスの運用・管理だけでなく、災害時、ネットワークに障害が発生した際にも現地に赴いて復旧や支援を行う。

KDDI運用本部の土生由希子は、第一弾のテーマとして災害対策に取り組むことが決まって以降、「つなぐ×かえる」プロジェクトに参加。現場の調整や対応を進めてきた。

KDDI技術統括本部 運用本部 運用管理部 土生由希子 KDDI技術統括本部 運用本部 運用管理部 土生由希子

災害発生時、KDDIはまずどのように対応するのだろうか。

「大規模災害が起きると、運用本部を中心に、より早く効率よく復旧を行うための『運用災害対策本部』が立ち上がります。そこで被災地からの情報を集め、どの地域をどのように復旧させるのかという立案を行います」

可搬型基地局や車載型基地局、といった通信機材を本部が俯瞰し、どの地域にどのぐらいの数を割り当てると効果的で最速の復旧と支援が見込めるかを判断する。とくに車載型基地局は台数に限りがあり全国で日々稼働していることが多いため、本部の判断は重要となるのだ。

横浜のKDDIオーシャンリンクに物資・可搬型基地局を積み込む作業 横浜に係留されているKDDIオーシャンリンクへのKDDI運用本部社員による物資・可搬型基地局積み込み訓練の模様

「船は、簡単には出動できません。というのは、必ずしも母港に停泊しているとは限らないですし、ケーブル工事や補修を行うために外洋に出て作業を行っているとすぐに帰ってくることができないからです。

陸路で物資を届けることができる場合や、被災地に送る物資が小規模な場合は船を出動させる必要はありません。その判断は災害対策本部で行い、出動の必要ありとなった場合は、船を所管する部署に船の所在を確認して出動の依頼を行うことになります」

先に紹介した2018年の北海道胆振東部地震の際に、「KDDIオーシャンリンク」が出動したのは、こうした条件が当てはまり、かつ船の出動により早期の復旧を見込むことができたという、さまざまな要因がうまく積み重なった結果だったのである。

長崎のNTTケーブルシップ「きずな」へのKDDI車載型基地局積み込み作業 長崎のNTTケーブルシップ「きずな」へのKDDI車載型基地局積み込み作業

そのため、このプロジェクトにおいてKDDIとNTTの船舶の相互活用だけが、災害対策における決定的な一手というわけではない。

「そうであったとしてもなお、災害発生時に用いることのできる対応策をどれだけ準備できているかということが重要なのです。すべての通信キャリアが等しく、災害が発生時の対策をシミュレートしていると私は思います。ただ、そのうえでもっとできることがあるならば行いたい。いま準備しているだけではまかないきれないような部分を、いかに丁寧に細かくさまざまな手段を持って埋めていくことができるか。そのひとつが、今回のNTTさんとの船の相互活用だと考えています」

合同訓練の様子は?

この記事に掲載している画像は、CM撮影時のものだが、KDDI、NTTとも担当部署に所属する社員が、実際に訓練する模様を収録したものだ。

横浜の「KDDIオーシャンリンク」への物資積み込み作業 横浜の「KDDIオーシャンリンク」への物資積み込み作業

NTTの船舶「きずな」が係留されている長崎にKDDI運用本部の社員が出向き、車載型基地局やさまざまな物資の積み込みを行い、逆に横浜のKDDIの船舶「KDDIオーシャンリンク」の母港にNTTのみなさんを迎えて同様の作業を行った。

こうして、KDDIとNTTとの「つなぐ✕かえる」プロジェクトはスタートし、少しでも早く、少しでも多くの被災者を救える可能性が広がった。こちらが、その訓練の模様だ。長崎のNTTの船舶「きずな」の母港で、KDDIの車載型基地局が、NTTの船舶にクレーンで積み込まれていく。

長崎のNTTケーブルシップ「きずな」にクレーンで積み込まれるKDDI車載型基地局 長崎のNTTケーブルシップ「きずな」にクレーンで積み込まれるKDDI車載型基地局
長崎のNTTケーブルシップ「きずな」にクレーンで積み込まれるKDDI車載型基地局

また、2020年11月22日には、東京・北区立中央公園で実施された「令和2年度 東京都・北区合同総合防災訓練」にNTTとともに参加。KDDIははじめてNTT東日本・NTTドコモとブースを一緒に出展し、災害時における船舶共同運航の取り組みの紹介を行った。

令和2年度 東京都・北区合同総合防災訓練の模様

「つなぐ×かえる」プロジェクトは続いていく

KDDIとNTTの2社がこのほど災害対策を軸に社会貢献連携を実現した。まずは、保有する船舶にもとづいた第一弾プロジェクトで力を合わせ、今後も両社で社会課題の解決に向けて協力していく予定だ。

災害対策以外に、今後も「就労・就業支援」、「気候変動への対応」、「スマホなどの健全利用」など、さまざまな社会課題解決に対し、両社のアセットを合わせて取り組んでいく。

日本のICTの発展のために今後もビジネスでは競争しサービスを向上する一方で、社会の共通課題においてそれぞれの持つ資産を活用し合うことで、より大きな効果が期待できる分野について、協調して解決に取り組む。

KDDIとNTTは、本プロジェクトを通じて、「より早く」「より多く」の社会課題解決に貢献することで、環境変化に強い社会基盤の構築など、持続可能な社会の実現をめざしていく。

文:TIME&SPACE編集部

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