2019/04/01
ガラケーから聞こえるおばあちゃんの肉声に涙 おもいでケータイ再起動 in 札幌&京都
札幌・京都で古いケータイを再起動するイベント開催
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赤い屋根の建物は、あの有名な札幌時計台。この横断歩道を渡ったところに北海道新聞の本社があり、そこの1階がイベントスペースになっています。
「おもいでケータイ再起動」が3月1日〜3月3日に札幌で開催されました。会場は時計台のはす向かいにある「道新プラザDO-BOX」。そして、その1週間後の3月8日〜10日には京都の「au KYOTO」でも開催。
「おもいでケータイ再起動」は2017年夏の名古屋を皮切りに、これまで全国26カ所で開催。 古いケータイは、充電をせずに放置していると、そもそも充電すらできなくなってしまうこともあります。このイベントは、そんな電源の入らなくなってしまった古いケータイをお持ちいただき、バッテリーを復活させて再起動させるというもの。古いケータイを再起動すると、入っている写真やメールや留守電メッセージといった古いデータも復活して見られるようになるんです。auだけでなく、他社ユーザーのみなさんでも、もちろん再起動OKです!
このイベントでは、これまでにのべ2,300名のみなさんのケータイをよみがえらせてきました。
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人生のある時期をともに過ごし、メールや写真など極めてプライベートな事柄を共有してきた携帯電話。そこにはたくさんの大事な“おもいで”が秘められています。「あのときのあの写真をどうしても見たい」という方もいれば、完全に忘れていた自分史の扉が突然開かれて戸惑いながら涙を流して喜ばれる方も。
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どんな人のどんなケータイとおもいでが再起動し、なにが起きたのか。3月に行われた札幌〜京都のイベントでの涙あり笑いありの模様を紹介します。
札幌編・カッコいい着メロと今は亡きおばあちゃんの肉声と
■「ルパン三世」の銃声 岸本加すみさん
高校1年生のときに初めて手にしたケータイなど、計5台を持ってきてくれた岸本さん。
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いちばん再起動させたかったのは、いちばん右のシルバーのケータイ。
「子どもの頃、父の機種変後にいらなくなったケータイおもちゃとして譲り受けたものです。これに最初から入っていた『ルパン三世』の着メロが大好きで。だって……銃声までちゃんと入ってるんですよ!」
それが大好きで大好きで、時々その着メロを聞くためだけに充電していたそう。それがとうとう電源が入らなくなってイベントに持ってきてくれました。そして再起動を試みると……無事に電源が入りました!
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「おおおおおおー」と、ケータイに見入る岸本さん。たとえば……。
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「父の日かなにかのときに、姉妹で焼いた父の顔型のパンだと思います(笑)」
こちらのケーキは……、
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「おばあちゃんの誕生日に作ったんだと思います。なんで全部の面に生クリームを絞り出しているのかは謎(笑)」
これは?
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「わー、めちゃくちゃヤバいですね(笑)。たしか看護専門学校時代の課題だったと思います。“自由に表現せよ”みたいなテーマで、洋服とか雑誌の切り抜きを人型に並べたんです。『爆発まで10秒前』ってタイトルつけたんですが、自分でもワケわからないです」
と、復活した写真たちの醸し出す青春時代のサブカル感に思わず頭を抱える岸本さん。で、お目当ての着メロはというと……、
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ありました!
もちろん銃声入り。再生しては、息を潜めてメロディーに聴き入り「バキューン!」が鳴るたび、現場スタッフ大興奮。「ね! いいでしょ!」と岸本さんも笑顔に。このケータイには岸本さん自ら打ち込んだ「カエルの歌」と中学校の校歌の着メロという、本人も忘れていた“おまけ”とも再会できました。
■だってユウキの写真しか撮らないもん! ユウキくんとその母
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23歳の息子ユウキくんと一緒にやってきたお母さんには、復活させたいものがありました。それは、ユウキくんの小学生時代のGIFアニメ。インターネットのサービスで、職業や動物のキャラクターが用意されており、顔ハメ看板みたいに顔部分は空白。そこに自分のケータイから写真をアップすれば、キャラクターが自分の顔になって愉快に動き出す、というもの。
「それにハマりまくっていて、新しいキャラクターが公開されるたびに息子の顔でつくってたんです」
どんどん成長するユウキくんの傍らで、時々再生しては「かわいかったなあ」と感慨に浸っていたお母さんでしたが、ついにそのケータイに充電ができなくなり機能停止。それ以来、「もう見たくって見たくって(笑)」。
静止画ですが、そのアニメの写真がこちら。
作品名は「ゆっきサンバ」と、
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「ゆっき消防士」。
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なお“ゆっき”はユウキくんの子どもの頃の呼び名とのこと。ほかにも、ヒツジやトナカイなど、本当にさまざまな息子さんのアニメが復活。それだけでなく、お母さんのアルバムはほとんどユウキくん。
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「オレの写真しかないじゃん(笑)」
「だって、ユウキの写真しか撮らないもん!」
今はさすがにユウキくんのほかにも撮影しているというものの、「小さいころの息子の画像がまた見られて嬉しいです」というお母さんに「こっぱずかしいよ!」とユウキくん照れ隠し。現場のスタッフの顔もほころんでしまうほど、仲のいいご家族でした。
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■旅支度にケータイ6台詰め込んで 坂元淳子さん
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こちらの女性、なんと大阪から来てくれました。昨年11月の大阪開催に参加できなかったとのことで、京都でのイベントへの参加を予定していたそうなのですが、「北海道の知り合いを訪ねるついでに」と、ケータイを6台持参してのご参加。
「13年間一緒に暮らしたミニチュアダックスフントのマロンの写真をどうしても復活させたかったんです。機種変更のときに写真はPCに移したんだけど、そのPCのほうがクラッシュしてしまって」、若かりし日のマロンくんの姿はもうお手元にはないとのこと。早速、持参されたケータイを見てみると、これがすごい!
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すべて食品用保存袋に大事に保管。その機種のマニュアルや保証書も同梱されていました。使用時期もきちんとラベリングしてあります。今回、旅先に持参するにあたってこうした処置をしたのかと思いきや「ううん、うちの古いケータイは全部こうしてとってあります」とのこと。そのなかから、マロンくんが写っている可能性のある年代のものを持ってきたのだそう。
かくして見事にマロンくんが動画で復活。おお、カワイイ! 性格の良さそうなワンちゃん!
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「いえいえ、全然! 吠えまくりのコでしたよ」。坂元さん、久しぶりの“再会”に涙を浮かべつつもにっこり。そしてそのまま、今回動画が入っていたケータイを入れてきた袋のラベルに「マロンくん動画」と書き加えるのでした。
■妻の故郷の札幌を終の住処に 松下忠雄さん
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今年、77歳の喜寿を迎える松下さんは、滋賀県生まれ。現役時代は転勤が多く、全国様々な街で働いてきたそう。そんななか、東京で理想の女性と出会い、家族となったのが32年前。それから“松下家”として日本各地を一緒に移動しながら仕事に勤しみました。
「61歳で私は定年退職したんですけど、そのときの勤務地が札幌だったんです。カミさんの生まれ故郷だったので、退職のタイミングにこの街に居を構えました。すでに子どもたちも独立して東京で暮らしていて、定年後は仕事ではなくプライベートで日本のあちこちに旅しようとカミさんと話していたんですけど……」
奥様は13年前、60歳の若さで亡くなってしまったといいます。
「妻が病に臥せて2カ月の入院の末に亡くなったんですが、そのときの携帯電話を再起動させたくてきたんです」
再起動したケータイには、奥様とのメールのやり取りが残っていました。
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そして、まだ元気だったころの奥様の写真をその場でプリントアウト。
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「妻の年金の口座をつくって、これからは旅行三昧だぞって言ってたんですけどね(笑)。でも妻の死後、東京に勤めていた子どもたちも札幌への転勤願いを出して、今は近くに住んでくれています。……私は自分の身のまわりのことはちゃんと自分ひとりでできますが、でも、みんながそうして私のことを考えてくれてると思うと、ありがたいですよね。妻もきっと安心してくれていると思います」
■“下のおばあちゃん”まさかの肉声 笹谷真弓さん(母)、優紀さん(中・姉)、優花さん(左・妹)
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再起動したケータイを見てはキャッキャウフフと女子会状態の女性3人。
「あー、ポエムみたいな直筆の待ち受けやってたねー」(姉)
「“絶対ムリ”なんて言った瞬間すべては終わる! みたいな熱いメッセージ書いてたよね!」(妹)
「この写真、なんかパパ超痩せてない?」(母)
「あ、これ、エレクトーンの発表会!」(妹)
「エヴァだよね、エヴァ!」(姉)
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発表会で「残酷な天使のテーゼ」を弾くために、綾波レイのコスプレをして臨んだ小学校6年生当時の妹・優花さん。
3人が持ち込んだのは、10年ほど前のケータイ。盛り上がってはいましたが、本当に見たかったのは亡くなってしまったおばあちゃんの写真。とくに母方のおばあちゃんは、二世帯住宅で長らく同居。1階に暮らしていたので、「下のおばあちゃん」と呼んで姉妹2人ともとても懐いていたそう。
ほどなく、父方のおじいちゃんとおばあちゃんの画像は無事に復活。
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3人分のケータイを3人でつぶさにチェックしても、母方のおばあちゃんの姿は見つけることができませんでした。「まあ、でも楽しかったからいいよね」という雰囲気になりつつあったとき、妹の優花さんがハッと息を飲みました。
「伝言メモがある!」
はたして、お母さんのケータイには同居していたおばあちゃんからの留守番電話の伝言メモが3つ残っていたのでした。うち2つは苦しそうな息づかいの向こうから「至急きてください」という内容を伝えるメッセージ。
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もうひとつは打って変わって、クルマのナンバーについて言及する元気な声。
次々とケータイを受け渡しながら、おばあちゃんの声を聞く3人の目にみるみるうちに涙があふれます。
2人の娘たちの前で、母・真由美さんは声を震わせました。
「母はレビー小体のアルツハイマーだったんです。残っている伝言メモは半ば幻覚を見ながら話している内容でしたが、それでも久しぶりに聞いた声だったので、とても懐かしかった。会いたい。会いたいです!」
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大盛り上がりの女子会から始まり、不意のおばあちゃんの声に涙し、満面の笑顔に終わった笹谷さん一家の再起動なのでした。
京都編・若くして亡くなった妻の“おもいで”がいっぱい
さて、札幌の1週間後、3月8日〜10日に行われた「au KYOTO」での「おもいでケータイ再起動」では、どんな“おもいで”がよみがえったのでしょうか。
■主人のこんな顔、初めて見ました 中川さん一家
お越しいただいたのはママ、中学生の娘さん、おばあちゃんの3人。おばあちゃんはそもそも来る予定ではなかったのですが、「せっかくなので」と参加。それが感動の涙へとつながりました。
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3人がそれぞれ持ち込んだケータイを再起動。懐かしい昔の写真にほっこりしているなか、再起動の作業はいつしか、お孫さんが昔使っていたキッズ向けケータイに。そこから思わぬ写真が出てきたのです。
「主人のこんな顔を見たのは初めてでした」とおばあちゃんが言うのは、2年前に亡くなった旦那さんが入院中に病室で撮った表情。入院中の暇つぶしにと、当時もうすでにお孫さんが使わなくなっていたケータイをおじいちゃんに渡したのだとか。なんと、それでおじいちゃんは病室で自撮りしていたのです。
まったく予想外のおじいちゃんの表情が出てきたとき、おばあちゃんとお母さんは泣き崩れました。
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「主人はいつも、家族には穏やかな笑顔しか見せていなかったのが、ひとりのときにはこんなに緊張した顔をすることもあったんだな、ということを今にして知りました。今日はもしかしたら、孫のケータイの中の最後の表情を見せるために、主人がここに連れてきてくれたのかもしれません。一生の宝物になりました」
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■ともちゃんの“おもいで” 塩崎正人さん
塩崎さんが持参したコンビニ袋からごそっと出てきたケータイには、「ともちゃんの“おもいで”が詰まっている」とのことでした。
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「ともちゃん」とは、塩崎さんの奥様。「ちなみに自分は“まーくん”と呼ばれていました」と、照れながら語る塩崎さん。奥様は、塩崎さんより5歳年上で、9年前に41歳の若さで突然亡くなったそう。心臓麻痺でした。
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au KYOTOに塩崎さんが訪れた3月10日は、奥様の命日の2日前。
「自分は大阪の堺市に住んでいて、4月末にウチからも近い大阪の『au ABENO』でこのイベントがあるのは知っていたんですけど、ともちゃんの命日までに再起動できたらいいなと思って京都まで出てきました」
そう語る塩崎さんの手には、ずっとタオルが。
実は再起動する前、来店されたときから塩崎さんは口元を覆って涙をこらえていました。そうしてよみがえったのは、奥様との何気ないやりとり。
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そして2匹の愛犬。
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「丁寧に対応してくれてうれしかったです。嫁とのメールや写真も復活したし、ほんまありがとう……まわりの友だちにこのイベントのこと紹介してまわればいい? 」
終始、目を潤ませていた塩崎さんも最後にはご機嫌な笑顔に。
わずか3年半の結婚生活だったそうですが、塩崎さんからは奥様へのいまだに変わらない愛をひしひしと感じました。そして、塩崎さんは再起動したケータイを奥様の仏壇にお供えしたそうです。
というわけで、今回開催した札幌・京都でも、笑いあり、涙あり、ケータイにまつわる様々な“おもいで”と出会うことができました。参加人数は合計266人。再起動したケータイは476台。参加していただいた方、待ち望んでいただいた方、本当にありがとうございました!
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次回は4月に「au ABENO」、夏に「au SHINJUKU」で開催予定!
これからも「おもいでケータイ再起動」続きます。
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次回は4月19日~21日に大阪の「au ABENO」で、夏に東京の「au SHINJUKU」で開催予定です。
スタッフ一同、あらゆるケータイを再起動するためお待ちしております。みなさんは近くにこのイベントが行く日まで、どうぞ、ぜひとも大事にケータイを取っておいていただければ。きっと損はさせません。
写真:TIME & SPACE編集部
文:武田篤典
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