2015/01/16

1,200回のケータイ教室を実施したプロが教える、家庭でできるスマホ教育 ルールとペアレンタルコントロールで子どものスマホを安全に

新学期を前に、子どもに新規にスマートフォンを持たせたり、フィーチャーフォンからスマートフォンへの機種変更を検討している家庭は多いだろう。一方で、深夜までスマートフォンを手放せずに、学業に支障をきたす子どもや、ネットいじめ、SNSへの投稿が原因となったトラブル、出会い系サイトや危険ドラッグ販売サイトなどの有害情報にアクセスしてしまうなど、スマートフォンのトラブルに関するニュースを見聞きし、躊躇している保護者も多いのではないだろうか。

スマートフォンは便利なツールだが、子どもたちが安全に使うためには、ルールやマナーを守り、危険な目に遭わないための使い方を知ることが大切だ。KDDIでは「安心・安全な取り組み」の一環として、子ども向けの「ケータイ教室」を小・中学生および保護者・教員に実施しており、2006年からこれまでに全国各地で12,000回を超える出前授業を行った。子どもたちが携帯電話を利用する際に守ってほしいルールやマナー、携帯電話やインターネットにかかわるトラブル、事件、事故の事例を紹介することで、子どもが自分の判断でリスクを回避する能力などを身につけてもらうことを目的としたものだ。

KDDI CSR・環境推進室の大久保輝夫は、ケータイ教室の立ち上げ時から講師として携わり、延べ1,200回の講座を実施してきたケータイ教室のプロともいえる人物だ。定年退職後も再雇用制度を利用して講師を続けており、今も年間250回程度の講座をこなす。日本全国を飛び回り、多い時には1日3カ所で講座を行うアクティブシニアだ。8年間、「子どもとケータイ」を間近で見てきた大久保に、子どものスマートフォン利用の注意点を語ってもらった。

ツールが変わっただけでトラブルの内容は同じ

小学5年生を対象に、東京都内の小学校で開催されたケータイ教室「安心・安全講座」

ケータイ教室が始まった2006年頃はちょうど、「プロフ(プロフィールサイト)」などのサービスで個人情報を公開してしまったり、喧嘩が発生するなど、子どものケータイをめぐるトラブルが顕在化してきた時期です。当時の講習の内容は「ネット上に個人情報を出してはいけません」「掲示板などに人の悪口を書いてはいけません」「映画館では電源を切りましょう」などといった、シンプルなマナーが中心でした。

やがてSNSなどの情報発信ツールが登場して、子どもたちが使うツールもケータイからスマートフォンに移っています。今、一番トラブルが多いのは無料通話アプリ(LINEやカカオトークなど)ですが、ツールは変わってもトラブルの基本的な内容はあまり変わっていません。ただ、その数は圧倒的に増えていますね。

昔に比べると、SNSなど、最近のサービスは機能が多く、子どもは使いこなせても保護者や先生といった周囲の大人はよく分かっていないというのが現在の問題点です。分からないから教えられない。ですから、私たちが実施しているケータイ教室へのニーズが増えてきています。

子どもたちは、一見いろいろな情報発信ツールやデバイスを使いこなしているように見えますが、それは表面上のことで、その裏に潜んでいる危険までは知りません。またトラブルに直面したときの対処方法も分かっていません。トラブルに巻き込まれると、誰にも相談できずに一人で悩んでしまうことが多いのです。

子どもたち自身も、スマートフォンの使い方やマナーよりは「どんな危険が潜んでいるのか知りたい」と思っていますし、ジュニア向けケータイ教室を受講した後は行動が変わることが多いのです。

ペアレンタルコントロール(保護者による機能制限)とルールは車の両輪

「ジュニア向けケータイ教室」ベテラン講師であるKDDI CSR・環境推進室の大久保輝夫

以前は、「子どもにケータイを持たせるか持たせないか」が家庭における大きな課題でしたが、今は「持たせない」という選択は難しい時代です。高校生や大学生では、スマートフォンを使いこなせなくては学校生活にも支障が出てきます。現状は保護者の方も理解していて、「スマートフォンを持たせるならどんな使わせ方をすればいのか」ということを具体的に知りたがっています。自分で使いこなしているという保護者の方でも、子どもにはどう教えればいいのか戸惑っている場合もあるのです。

保護者の方を対象にした講習では、「家庭でスマートフォンを使うルール」のサンプルをお見せしています。中学2年生の女子が作ったルールを手直ししたもので、「食事中は使わない」「Wi-Fiは決められた場所でしか使わない」「アプリは夜9時以降使わない」「ルールを破ったら1週間お母さんにスマートフォンを預ける」というものです。とてもシンプルですが、具体的でよく考えられたルールです。

ルール作りにはポイントが3つあります。1点目は、決してルールを押し付けるのではなく、子どもとよく話し合い、考える場を与え、できれば子ども自身が「このルールを守る」と決意するようにすること。2点目は、できるだけ具体的なルールにすることです。具体的でないと、守ったのか守っていないのかが分からないので、抜け道ができてしまいます。そして3点目は、「ルールを破ったらどうするか」を決めることです。これは罰則ではなく、あくまでも「守れなかった時に自分がどう責任を取るのか」を決めることです。一緒に考えたルールを口約束ではなく書面にして、親と子がきちんとサインをすることで、子どもは自分で考えたルールは自分で守る、破ったら自分で責任を取るという心構えができます。ルール作りは、自己責任意識や規範意識を養うものでもあるのです。

KDDIが公開している「ケータイ教室」ウエブサイト

もう一つの軸になるのが、「ペアレンタルコントロール(保護者による機能制限)」の活用です。スマートフォンの利用時間制限、アプリの利用時間制限といった機能を活用してください。危険なサイトやアプリの利用を制限する「フィルタリング」には、制限対象となっているサイトなども、家庭で個別に制限を変更できるカスタマイズサービスがあることを、ぜひ保護者の方には知っていただきたいです。子どもがネットを使うなら、ペアレンタルコントロールの考え方がベースにあるべきです。インターネットには危険がたくさん潜んでいます。フィルタリングがなければ、簡単に危険ドラッグの販売サイトや出会い系サイトに子どもがつながってしまいます。例えば、「LINEが使えないから」と子どもにせがまれてフィルターを外すのではなく、LINEは使えるようにフィルターをカスタマイズすることで対応できます。

子どものマナーやルールについては、個人的な感覚では、昔に比べて悪くなっていると感じます。原因は、「歩きスマホ」に代表されるように、見本を示すべき大人のマナーが悪いからでしょう。子どもにルールを守らせるには、まず大人が自分のマナーを見直すことが大切です。

先生と子どもの「逆情報格差」の克服が解決のカギ

学校教育の現場でも、スマートフォンを子どもにどう教えるのかは課題となっている。子どもとインターネットの関係に詳しい兵庫県立大学の竹内和雄准教授は、KDDIケータイ教室の教材を監修しているほか、KDDIと連携し、研究室の教員を目指す学生らをKDDIケータイ教室の講師として学校に派遣するトライアルを行っている。

竹内准教授に、教育現場でのスマートフォン利用に関する悩みについて聞いた(以下、敬称略)。

「若い先生」でも子どもが何をしているのかは分からない

兵庫県立大学の竹内和雄准教授

—生徒のスマートフォン利用に関して、現場の先生の一番の悩みは何でしょうか。

竹内:一言でいうと「分からない」ということです。先生方が一番困っているのは無料通話アプリ(LINEなど)で、そこで何かが起こっていることだけは知っているけれども、具体的に何が起こっているのかは分からない。スマートフォンについては、一番よく分かっているのは子どもで、先生が「どうも危険なものらしいからやめなさい」と言っても、「知らないくせに」と先生を馬鹿にして、言うことを聞かない。それが現状です。

—そんな子どもたちに対して、大人はどうすればよいのでしょうか。

竹内:一つは、「大人の常識」を子どもに教えること。何となく危ないではなく、何をするとどうなるかと、具体的に、子どもたちが実感できるような形で教える必要があります。もう一つは、子ども同士でルール作りをする機会を作ってあげること。例えば、「夜遅いからもうLINEをやめたい」とみんなが思っていても、自分からは仲間はずれが怖くて言い出せない、そんな子どもたちが話し合えるきっかけを大人が作ってあげることです。

—学校では道徳の時間にスマートフォンについては教えているのですか?

竹内:もちろん教えています。スマートフォンのトラブルは非常に多いので、対処は社会全体で考えなくてはいけません。携帯電話会社だけでなく、社会全体で考えるべき大きな課題だと思います。日本では、KDDIも他の通信事業者もCSRとして子ども向けの教育をしていますが、世界的にはまだまだ珍しいです。この仕事は世界的に見て評価されるべきだと思いますし、より良いものにしていけば、親も子も「スマートフォンの問題は携帯会社に聞けばいい」と思うようになるでしょう。重要で大変意味があることだと思います。

—通信事業者であるKDDIがケータイ教室を実施することの意義はなんでしょうか。

竹内:子どもたちも、「先生は分かってないけど、携帯電話の会社の人が言うことなら聞こうかな」という気になります。ポイントは子どもたちが知っていることの"少し上"の内容を提示すること。ちょっとしたお得感、「そうなってるんだよ、分かる?」という部分を見せてあげるのがポイントだと思います。もちろん、年齢に合わせて内容を選ぶことは必要ですが。

大学生をケータイ教室講師として派遣

—研究室の学生らを学校に派遣してKDDIのケータイ教室の講師をするトライアルをされていますが、反響はどうですか。

竹内:話す技術で言えば、私のほうが学生よりずっと上なのですが、学生が話すほうが子どもにメッセージが浸透します。ちょっとしたニュアンスの違いで、言葉がリアルに届くのでしょうね。学校の先生方からも、学生に来てもらって良かったと言われます。最初は「竹内先生じゃなくて大丈夫でしょうか」と言われるのですが、終わると「学生だから良かった」と見方が変わります。今の学生たちの中でも、21歳より上はフィーチャーフォンでメールを使っていた世代、20歳より下は大学に入った時からLINEを使っていたスマホ世代。大学生の中でさえ、断絶があるんです。そりゃあ、先生が言っても話が通じないでしょう。今はスマホが爆発的に増えて、先生にとっては一番苦しい時。こういう時だからこそ、ケータイ教室が必要なのだと思います。もう少し時間が経って、今の学生が先生になる時代になれば、今の"逆情報格差"もなくなってくるのでしょうね。

—教える側の学生には、ケータイ教室はどのように受け止められているのでしょうか。

竹内:学生にも良い学びの場になっています。教員になりたい学生にとっては、直接子どもの反応を見ながら話ができるのは大変貴重な機会ですし、教員を目指さない学生にとってもプレゼンテーションの機会になります。また、企業の社会人と直接接し、プレゼン資料の作り方、メールの書き方などを教えてもらうのは、研究室の学生らにとって、とても良いキャリア教育です。学生とどんな人を出会わせるかは教育者としての私の責任でもありますから、KDDIとの出会いはとても良かったと思っています。今年度はまだトライアル的な位置づけですが、この成果をまとめて、来年度以降の本格実施につなげていきたいと考えています。

構成:板垣朝子

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