2014/07/11

『木づかいサイクルマーク』を国内通信事業者として初めて取得 林野庁を訪ねて国産材の利用の意義を聞く

KDDIは、「au取扱説明書リサイクルの森 八戸」から産出された間伐材を用いてカタログスタンドを製作し、国産材を利用した製品に付けられ、林野庁が推奨する環境への貢献度を示す「木づかいサイクルマーク」を、国内通信事業者として初めて取得した。カタログスタンド製作を担当したKDDI プロダクト企画本部の柳 良樹が、木づかい運動を担当する林野庁 林政部 木材利用課の涌井幸子氏を訪ね、日本の木材の現状について話し合った(以下、敬称略)。

日本の木材の利用が日本の森を守る

木づかい運動を担当する林野庁 林政部 木材利用課の涌井幸子氏

カタログスタンド製作を担当したKDDI プロダクト企画本部の柳 良樹

柳:KDDIが今回、参加させていただいた木づかい運動について、林野庁ではどのようなきっかけで進めることになったかを教えていただけますか。

涌井:木づかい運動は、国産材利用を促進する国民運動として平成17年度から展開しています。きっかけは、地球温暖化防止などの環境貢献の観点から、日本の森林の現状について知っていただき、日本の木材をもっと使ってもらいたいという時代を迎えているからです。世界で森林面積が減少しているというニュースを聞くことで、国民の皆さんの間にも、木は伐っちゃいけないものという意識が広まっていると思います。実際に世界では毎年、九州の面積を上回る500万haもの森林が失われているといわれています。しかし日本では主に戦後、先輩方が一生懸命に植林を続けてきてくださった結果、利用に適した木が豊富に育っている状態です。日本の森林資材が1年で増える量は、およそ1億立方メートルですが、日本の年間の木材消費量はおよそ7,000万立方メートルです。1年間で育った分だけで、年間の木材需要は十分賄えておつりが来るくらい日本は森林資源が豊富な状況にあります。

柳:日本の森林の状況は、世界レベルの森林の状況とは逆なんですね。

涌井:そうなんです。ところが戦後、外国産木材が市場に定着していたり、住宅のスタイルが大きく変わってきた中で、国産木材の使用量は長年低迷しており、木材自給率は3割を切っています。木材が使われなくなると、林業は衰退してしまいますし、結果、間伐などの森林整備も進みません。そうなると、森林が持っているさまざまな機能が失われていくことになりかねません。日本の森林を守るためには、日本の木を使ってもらうことが大事なのです。

柳:今回、木づかい運動に参加させていただく過程で、森林がCO2吸収能力を発揮するには、木材を利用して活力ある元気な森のサイクルを回すことが必要なんだというお話をうかがいました。

涌井:日本は国土の7割弱が森林、という森林大国ですが、そのうち約6割を占めるのは人工林です。人工林では、植えた木を間伐するなどの手入れをしたり、成長した木を伐採して利用していかないと、日の光が差し込まない暗い森林になってしまいます。そのような環境では、木は健康に育たず、ひょろひょろの細い木ばかりになってしまい、その木は用材として利用できなくなってしまいます。また、そればかりでなく、森林自体も、一本一本の木の根が発達せず下草が生えないことで雨水を蓄えられなくなったり、土壌が流出し土砂崩れが起こりやすくなったりする可能性があります。また、手入れが行き届かない高齢の森はCO2の吸収能力も低下している為、地球温暖化防止機能も低下してしまうのです。さらに、林業自体とそこに息づく山村地域も衰退してしまいます。ですから、植える、育てる、伐る、使う、そしてまた植えるという森林のサイクルを回していくことが、健全な森林を作っていくために必要なんです。

柳:そうなんですね。日本では、間伐などの手入れをしたり、高齢木を伐って苗木を植えていかないと、どんどん森林がダメになってしまうということから、この運動を始められたんですね。

涌井:そうです。そこで、国産材をどんどん使って、日本の森を元気にしていきましょう、という趣旨で、木づかい運動を展開しています。日本の森の現状や木材を使う意義について、各地でイベントを行っていたり、シンポジウムが開かれていたりしていますので、ぜひ多くの方に参加していただきたいですね。

東北の森からの間伐材でカタログスタンドを製作

間伐材で製作した「カタログスタンド」

「木づかいサイクルマーク」を国内通信事業者として初めて取得。
クリックで拡大

柳:当社は、もともとは取扱説明書に使用している紙のリサイクルから始まって、それで得た収益を森に還元したいという思いから、全国各地で森林保全に参加させていただいています。今回、東北地方の震災復興支援という思いも込めて、そのひとつである青森県八戸市の「 au取扱説明書の森 八戸」の間伐材でカタログスタンドを製作して、本社、仙台市にある東北総支社、東京・原宿のKDDIデザイニングスタジオに設置しました。

涌井:どうですか、木のカタログスタンドの反響は。

柳:すごく評判が良いんです。最初はどんなものが送られてくるんだろうと思われていたらしいんですが、実際に箱を開けてみたときに、すごく良い杉の香りがする。実際に置いてみたら、木の良さが感じられるので、「もうひとつないの?」と言われたり。金属製品が多い時代なので、こういう自然の素材を使っているほうが癒やされるという話を聞いています。

涌井:なるほど、とっても良い反応が返ってきたんですね。

柳:これまでは間伐材でスマートフォンスタンドや卓上カレンダーなどのノベルティを作ったことはあったんですが、間伐材から大きなものを作ったことはなかったんです。どうやって間伐材から家具を作るのか、製造過程がぜんぜん分からないところからでしたので、すごく良い勉強になりました。

涌井:あらためてすごいですね。ふだん木材を扱っていない通信会社が、最初から全部やられるというのは。

柳:私の部署は携帯電話をメーカーと企画・開発している部署なので、携帯電話の製造工程は分かるんですけど、カタログスタンドについては、森から間伐材を切り出すところから始めて、製材や輸送方法、製造まで、初めてのことだらけでした。角材の大きさや単位など、そもそも言葉が分かりませんでしたし、木は水分を含んでいる自然のものなので、2カ月以上乾燥させて製材するという過程を聞いて、「なぜこんなに乾燥に時間がかかるの?」って、納期を考えて、ちょっとどきどきしながら何回も問い合わせてしまったり。設計図を見ながら、カタログの入る量を考えてサイズの調整をお願いしたり、木片のサンプルを取り寄せて色やコーティング剤を考えたりと、細かな調整を重ねて完成しました。

カタログスタンドを製作する製造過程

柳:今回、日本の製造技術ってすごいんだなって改めてよく分かりました。携帯ショップに、木のものがあると癒されますよね。

涌井:ぜひぜひ、全店舗に置いていただきたい。

柳:今回は青森県の木材を使いました。そうすると、東北総支社から、ちゃんと東北の木材で作ったものなんですねという反応が返って来たんです。復興支援の一環として東北の木材を使ってよかったなと思いました。

涌井:木づかい運動は国民運動という位置づけで、私たちはそれをPRするという立場ですが、「木を使え使え」というのではなくて、木材そのものの良さを分かってもらうようなPRもしていきたいなと思っています。その中で、小さなころから木に親しみが持てるようにということで、「木育」に取り組んでいます。木材に親しんで、木材の良さ、あったかさを身体で感じて、日本の木は良いなと思ってくれる人が育ってくれるといいなと思っています。学校の校舎を木造にするとストレスの緩和やインフルエンザになりにくくなるとか、そういう研究も報告もありますので、こちらでも情報収集をどんどんしていきたいなと思っています。

ロゴマーク取得を契機に木づかいの輪を広げる

木づかいサイクルマーク

柳:涌井さんには、このカタログスタンドで「木づかいサイクルマーク」を取得する際に、いろいろとご相談に乗っていただきました。木材関連でない会社がこのロゴマークを取得するのは珍しいことなのでしょうか。

涌井:そうですね。通信会社ははじめてですね。国産材を使うことが森を守ることだという、利用の部分も理解してくださっていて、ロゴマークも取得していただいてありがたいことと思っています。

柳:これまでの森林保全活動では、間伐とか苗木を植えるというところまではお手伝いしてきたのですが、間伐材から製品を作るというところまでは、なかなかいけなかった部分がありました。でも、実は間伐した木材が余っているという話を聞いて、何かに利用ができないかと、少しずつ手を広げてきました。

涌井:木材を売らないと、伐る費用が得られないんですね。森林・林業というのは、植える・育てる・伐る・使うのひとつでも欠けてしまうとバランスが崩れて立ち行かなくなってしまうんです。林野庁でも、どうやったら木材を使ってもらえるのかを考えて、いろんな施策を行っているところなのですが、木づかい企業が、まずはできる範囲で無理なく木材の利用を広げていただけたらすごく良いな、こういう輪が広まれば良いなと思っています。

柳:木づかい運動への参加で、当社の印象は変わられましたか。

涌井:普段、いろんな企業からお話を伺うことが多いのですが、主に普段木材を扱っておられる企業が多いんですね。最初にお電話をいただいたときには、「KDDIの方から? 私、何か滞納したかな?」と思いましたが、実際にお会いしてお話をうかがったり、ホームページなどを拝見したりしたら、すごく多岐にわたるCSR活動をしておられて、その一環として木づかい運動にも取り組んでいただけて、ありがたいと思っています。

柳:私たちも、林野庁をはじめとして行政の方や異業種の方からお話をうかがうことができ、たいへん勉強になります。木づかい運動に賛同しておられる企業には、どんな企業がありますか。

涌井:普段から木材を扱っている企業・団体が多いですね。4月末で355社の企業が登録されていて、住宅・家具関連企業、紙・パルプ関連企業・流通企業といったところが多いですね。今回、御社が「木づかい企業」になられたことは、木材業界の方も気になっておられるようで、問合せをいただいたりもします。普段木材を扱わない企業にも取り組んでいただけるというのは、とてもありがたいことですし、業界全体にとっても良い刺激になるのではないかと思います。

柳:そういうお話をうかがうと、参加して良かったなと思います。

涌井:木づかいサイクルマークは、製品だけでなくホームページなど、いろんな使い方があるかと思いますので、さまざまな業種の方との交流の場にもなるのかなと思います。御社には、木づかいメンバーに入っていただきましたので、これからホームページやCSR活動の中で、木を使うことの意義について伝えていただければと思います。

柳:当社でもお客さまに木を使うことの大切さを伝えていく機会を作りたいと思います。

涌井:ありがとうございます。携帯電話と同じように木も身近なものであってほしいですし、国産材利用の良さ・意義を知ってほしいなと思います。

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

presented by KDDI