2014/04/15

いよいよやってくる『Firefox OS』(1) Mozilla

スマートフォンを動かすためのプラットフォームは、世界では、Appleの「iOS」が約1.5割、Googleの「Android」が約8割を占め、主流となっている。また、日本国内では、「iOS」が約7割、「Android」が約3割と2極化していている。そうしたスマートフォンOSの普及が進む中で、新しいプラットフォームが着実に芽を伸ばしてきている。それがMozillaの「Firefox OS」だ。FirefoxOS搭載端末はすでに海外で提供が始まっており、日本でもKDDIが、2014年度中の製品投入を目指して準備を進めている。

それでは、スマートフォンのプラットフォームとしてのFirefox OSとはどのようなものか? 現状と今後の展望は?――まだ製品がない日本ではなじみが薄いFirefox OSについて、連載でひもといていこう。第1回は、Firefox OSの開発元であるMozillaの日本法人 Mozilla Japan テクニカルマーケティングの浅井智也氏に、Firefox OSの思想と現状についてお話をうかがった。

世界に普及しているWeb技術でスマートフォンを動かす

まず、Firefox OSとはどのようなプラットフォームなのか、浅井氏にたずねた。

「Mozilla は、パソコンやスマートフォンなどで多く使われているWeb ブラウザの"Firefox"を提供しています。Webの技術は進歩を続けていて、ブラウザの上でいろいろなことができるのはご存じでしょう。Gmail も Google Map もブラウザで動きますし、Office365 のようなオフィスソフトでさえもブラウザ上で実現できています。このように進化した Web 技術を使えば、スマートフォンのために専用のプラットフォームを用意したり、専用のアプリ、いわゆるネイティブアプリを書かなくても済むようになります。標準化された Web 技術を使ったスマートフォン向けのプラットフォームが Firefox OS なのです」

Mozilla の日本法人 Mozilla Japan テクニカルマーケティングの浅井智也氏

HTML5 に代表される Web 技術を使った Firefox OS では、パソコンやその他の多くのデバイスで使うのと同じプログラムを動かすことができる。Web 技術は長い歴史があり、開発者の数も iOS やAndroid 向けの開発者の数と比べてケタ違いに多い。Web 技術をベースにすることで、低コストで新しいアイデアに満ちたアプリが登場する可能性が高いというわけだ。

Firefox OS を搭載したスマートフォンは、2013 年 7 月にヨーロッパで販売が始まった。その後、ブラジルやメキシコなど中南米でも発売されている。

「すでに 4 つの通信事業者が 15 カ国で端末を提供しています。Firefox OS を支持する通信事業者は KDDI を含めて 21 社に上り、2014 年には 30 以上の国や地域で搭載端末が展開される状況です。Mozilla としては、2013 年度は製品の市場へのローンチが目標でしたから、大きく目標を超えた成果を得たといえます。アナリストの推測によると販売から半年で約 50~75 万台が販売され、中南米では、端末シェアの 1~3 割を占める国もあるといった記事もありました」

Firefox OS が急速に存在感を高めている理由の1つは、低価格で端末を提供できたことにある。Web 技術をベースにした Firefox OS端末は、iOS や Android 端末よりも簡単に製造できる。現在、ZTE、Alcatel One Touch、LG から提供されており、端末価格が 100 ドル前後のローエンド端末だ。これが、これまでスマートフォンを購入できなかった低所得者層に受け入れられた結果だ。

ローエンドにとどまらず多方面への展開を目指す2014年

しかし、Firefox OS はローエンドモデルを提供するだけのプラットフォームとして作られたのではない。浅井氏はこう続ける。

「Mozilla は、世界中のすべての人が等しく Web を使える社会の実現を目指しています。低価格で Web を使えることも、その方向性の1つです。2014 年 2 月には端末価格 25 ドルでの提供を見据えたチップセットを発表しました。これにより、さらに多くの人に Webを利用してもらえるようになるでしょう。一方で、上位モデルへの拡張も進めます。同じく 2 月に 7 機種の製品を発表しましたが、これらはデュアルコア CPU を搭載した端末が中心となりました。クアッドコア CPU を搭載するモデルもありますし、タブレットも含まれています。2014 年は、ウルトラローエンドからミッドレンジモデルまで、Firefox OS 搭載端末が広がる年になります」

さらに、2014 年 1 月には、Firefox OS を搭載したスマートテレビをパナソニックが商品化することを発表。またキーボードやディスプレイを接続することで、パソコンのように使えるデバイスへの展開も進む。Firefox OS は、単にスマートフォンの OS に留まらず、Web につながる多くのデバイスの OS として利用できるという側面も持っているのだ。

「スマートフォンを見ても、だんだん製品ごとのパフォーマンスの違いが分かりにくくなってきています。きれいな描画、ハイエンドのパフォーマンス、大画面、高解像度を求める人もいるでしょうが、もっと違うところに魅力を感じる人もいるでしょう。W3C(WorldWide Web Consortium)で標準化された Web 技術を使い、オープンな環境で仕様が議論されている Firefox OS は、さまざまな要求に応えることができます」

オープンなプラットフォームだからこそ、メーカーや通信事業者、さらに開発者やユーザーのコミュニティーが標準化を推進している。また、W3C による標準化を待たずとも、特定の人に必要な機能を、後付けではなく OS へ標準搭載された機能として実現できる柔軟性を備えているわけだ。標準搭載された機能ならば、OS のバージョンアップの際にもメンテナンスがなされるため、将来にわたって安心して利用できる。

「通信事業者からの提案による標準搭載の機能の例に、FM ラジオがあります。Firefox OS では FM ラジオが標準機能として搭載されていますが、これはブラジルでは携帯電話には FM ラジオが必須だということから、Telefonica の要望で実現されたものなのです。標準機能として実装するなら、Mozilla と共同で実装できますし、将来的なサポートも怠ることはありません。さまざまなメーカーや通信事業者、コミュニティーの知恵が標準機能の開発に生かされることで、ユーザーに自分たちの夢を実現する端末を提供できる環境が整うと考えています」

実際に、Firefox OS を搭載したスマートフォンを操作させてもらった。先述の通り、スペックからいえばローエンドに相当する端末だが、3D ゲームでもしない限り、通常の使用でストレスを感じることはない。それよりもむしろ、Web と端末がシームレスにつながった新しい操作性に驚かされた。何かを知りたい・したいと思ったら、検索ボックスに入力するだけで、いちいちアプリをダウンロードしなくても、必要な情報やサービスをすぐに利用できる。オフラインでも利用したいサービスは、もちろんアプリとしてダウンロードしておくことも可能だ。また、複数の作業を並行して行なうなど、現在のスマートフォンならアプリを切り替えて利用しなければならないシーンでも、画面の右フリック・左フリックで作業の間を行き来できる。すべての情報や作業をストレスなくスムーズ利用でき、Firefox OS がまさに新世代のスマートフォンプラットフォームであることを実感させられた。これは、開発者やユーザーの声を次々と取り入れていくオープンな開発環境のおかげで、最先端のアイデアを導入できた賜物だろう。

Firefox OS のエコシステムを日本でいち早く作る

それでは Mozilla にとって、日本とはどのような市場だろうか。まだ、端末が市場に投入されるまではしばらく時間がある。そうした中で 2014 年の Mozilla Japan は、Firefox OS の普及にどのようなスタンスを取るのだろうか。浅井氏の答えはこうだ。

「日本は 1 国を対象にした Mozilla 財団の直轄の支部がある、珍しい国です。それは Mozilla 財団が日本を重視していることの表れです。Firefox OS は、スマートフォンはもちろん、それ以外の情報機器や情報家電、さまざまなサービスでも生かされるものです。情報機器や情報家電のモノ作りで、日本は世界をリードしています。Mozilla では、オープンなモノ作りができる Firefox OS により日本企業がグローバルで活躍できる環境を提供したいと考えています。日本企業の"何かやりたい"という思いを強力にサポートすることが、Mozilla Japan のミッションなのです」

2014年2月24日〜27日にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2014」での Mozilla ブースの様子

日本でも具体的な動きも進んでいる。2014年2月にバルセロナで開催された展示会では、楽天とリクルートホールディングスがFirefox OS 向けのアプリ、サービスを発表した。

「サービスやアプリを日本国内から盛り上げていきたいと思います。楽天、リクルートホールディングスの両社はグローバルパートナーとの位置づけです。加えて Web 標準技術によるアプリケーションプラットフォームに賛同する、NTT コミュニケーションズ、毎日新聞社、LINE など 10社を超える日本国内のコンテンツプロバイダーと協力して、Firefox OS 向けのアプリの作成やエコシステム作りを進めていきます」

国内でスマートフォンやスマートテレビが市場に投入されるときには、こうして下地を作っておくことでエコシステムが機能する場合が多い。開発者のコミュニティーも巻き込んで、これからの1年に勝負をかける。

4月19日に京都で開催される「Developers Conference」の申し込みはコチラから

「オープンソースとは、開発者や利用者一人ひとりの声も大切にして、コミュニティーによって熟成されていくものです。MozillaJapan もそのための取り組みを進めています。例えば、Firefox OSの勉強会は、東京に加えて大阪や名古屋でも開催されるようになりました。Mozilla Japan は、最新情報の発信だけでなく、アイデアから場所の提供まで積極的に支援しています。また、東京・六本木の Mozilla Japan オフィスは、土曜日は原則としてオープンにしており、Firefox OS で開発したい人はもちろん、Firefox OS を触ってみたい人まで、誰でも歓迎しています。4 月 19 日には、京都で 250人規模のカンファレンスを実施します。コミュニティーはもちろん、コンテンツプロバイダーやキャリアの人も巻き込んで一緒にエコシステムを作っていきたいと思います。日本を Firefox OS の情報発信基地にすること、それが Mozilla Japan の願いです」

Firefox OS は、スマートフォンの新しい OS としての期待はもちろん、そのエコシステムが拡大することによって、日本のモノ作りやサービスの発展にも寄与する可能性を秘めたプラットフォームといえそうだ。

文:岩元直久

presented by KDDI

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