2014/03/03

au2014春モデル特集『G Flex LGL23』 曲面型スマホの真っすぐな思い

au2014春モデルの中でもひときわ目立つ「G Flex」。画面サイズ約6.0インチのファブレットだが、何よりも特徴的なのは、本体・ディスプレイが「カーブしている」ことだ。春モデル発表会でも一番の注目となった、未来を感じさせる形状はどうして生まれたのか。開発を担当したLG Electronics Japanのユン・チウォン氏と、KDDIの上杉直仁に聞いた。

人間の身体に真っすぐなところはない

目から均等な距離にある点を結ぶと曲面になる。その曲面上にあるものが等距離にあるものであると認識するのが、人間が空間を認識するときの座標系になる。映画館のスクリーンがカーブしているのには、映像を曲面に投影することで、人間が本来感じる空間認識と映像をなじませ、自分がその空間にいるような臨場感を脳に感じさせるという意図もある。

au2014春モデル「G Flex LGL23」

「はじめてG Flexのサンプル品で動画を見た時、頭にすっと違和感なく入ってくる感じがしました。まさに映画館で映画を見た時のような臨場感でした」と上杉は語る。「今までは平らなディスプレイに人間の脳が合わせていましたが、技術革新によってディスプレイがカーブして人間の脳に合わせることで、本来あるべき解に近づいてきたと感じました」(上杉)

本体・ディスプレイをカーブさせたもう一つのメリットが、電話がしやすいことだ。「家の電話に近いシェイプなので、大画面でも通話時に違和感がありません」(ユン氏)。ディスプレイがカーブしていることで、スクロールしても指とディスプレイの距離を一定に保ちやすく、大画面でも上の方が押しにくいといったことがなく滑らかにスクロールができる。

一見奇妙に思える「曲面型ディスプレイ」だが、実際に手にしてみると、持ちやすく使いやすい納得感のある製品に仕上がっている。「考えてみたら人間の身体には真っすぐなところはないのだから、カーブしていることは不自然ではないのかもしれません」(上杉)。

ディスプレイもカーブしている、電池もカーブしている

なぜ、LGは「曲面型スマホ」に挑戦したのだろうか。その理由は大きく二つある。

開発担当者の上杉直仁

一つ目は、スマートフォンの大画面化だ。その背景には、スマートフォンの普及に伴い、音声通話よりデータ通信の役割が大きくなってきたことがある。ウェブを見たり動画を見たりするなら、画面は大きい方がいいので、徐々にスマートフォンは大型化していく傾向にある。だが、画面が大きくなると、本来の電話の機能である「音声通話」には適さない形状になっていってしまう。平らで大きなスマートフォンを耳にあてても話がしにくいし、見た目も不自然になるという問題があった。

二つ目の理由は、スマートフォンの差別化が難しくなってきたことだ。「四角く平らなタッチパネル」でスマートフォンの形がほぼ固まってきた今、LGでは次の時代を感じていただきながら、フラットとは違う新しい価値を提供出来るスマートフォンの形を模索していた。

LGは、大型テレビで曲面ディスプレイ技術を既に持っていた。スマートフォンの次のデバイスの形を模索する中で、「スマートフォンのディスプレイを曲げる」という挑戦は、社内技術のシナジー効果という意味でも受け入れられやすかった。

曲面ディスプレイのスマートフォンを実現するためには、筐体も曲げなくてはいけない。そして当然、薄く曲がった筐体にぴったりおさまるバッテリーが必要だ。G Flexのバッテリーは曲面ディスプレイに沿ってカーブしている、世界初の「曲面型電池」である。LGグループのLG化学の技術で、3,500mAの大容量を持つカーブした電池を実現した。電池とディスプレイがセットになって、はじめて技術要素が揃ったのだ。

開発を担当したLG Eelectronics Japanのユン・チウォン氏

そして、どのぐらい曲げれば一番使いやすいのかを調べるために、何種類もの曲面を使って、ユーザー調査を繰り返した。その結果、割り出されたのが、700Rという曲面だ。カーブしていても耐久性は平面ディスプレイのスマートフォンと変わりない。「うっかり上に座ったり、ひっくり返して平らになっても元の形状に戻るぐらいの耐久性はあります」(ユン氏)。

カーブ形状で壊れることはなくても、凸側にあたる背面には、日常の使用で直線状に傷がつきやすくなる。そこで背面には、スクラッチリカバリコーティングを採用した。普段使いでつく浅い擦り傷程度なら、自然に回復する。自動車のボディにも使われる技術で、特殊なコーティングにより、自然に傷を修復するというものだ。「開発期間中、2カ月ほど使っていましたが、たいていの端末はランダムな細かい傷がつくのに、G Flexはほぼ傷がつきませんでした」と、上杉はその威力を実感している。

3Dとは違った没入感を感じられる曲面ディスプレイだからこそ、映像の色は気になるところだ。通常、有機ELディスプレイは色が青みがかる傾向があるが、世界トップシェアの液晶メーカLGディスプレイとの垂直統合により、G Flexの有機ELディスプレイは色の再現性を高めた。「最初にサンプルを見た時は、『これって液晶だっけ?』と思いました。色の偏りがなく、私たちが通常見慣れている色を再現する技術力がすごいと思いました」(上杉)。

その理由の一つは、ディスプレイのピクセル配置にある。通常の有機ELディスプレイでは、1つのピクセルを2つのサブピクセルで構成する「Pen-Tile」というピクセルタイプで構成するが、G Flexは、RGBの3つの細長いサブピクセルで構成する「Real RGB OLED」方式を採用している。サブピクセルが3つなので明るい上、RGBの3色が揃うので色の偏りなく鮮明に表現でき、ビデオパスやフルセグのテレビ放送をシアター感覚で楽しめる。

「電話としての使いやすさ」をスマートフォンに取り戻す

「大画面化したスマートフォンは電話をしにくい」という課題は、LGが曲面型スマホに取り組む動機のひとつだった。カーブしていることで固定電話や折り畳み式フィーチャーフォンと同じ角度でしゃべれるのは、利用者が安心できるだけではなく実際の音も良くなる。「いくらマイクで調整しているといっても、平面タッチパネルのスマートフォンでは、どうしても口とマイクの距離が開くので音が拡散します。音声通話では、マイクと口の近さこそが正義ですから、曲面ディスプレイのアドバンテージは大きいです」(上杉)。

大画面でも使いやすくするための工夫も、もちろん盛り込まれている。「au +1 Collection」で提供しているLG純正のフリップ式カバーは、ディスプレイ側のカバーに小窓が開いており、閉じるのに連動してディスプレイの表示が変わり、小窓の部分に必要な情報が表示される。ふだんは時計等を表示しておけるほか、カバーを閉じたまま写真を撮影するときは、小窓サイズでカメラのプレビューが表示される。もちろんカバーを閉じたままでも小窓を通して誰からの着信か分かるし、閉じたまま通話もできる。

ホーム画面には、ダイヤルボタンや機能ボタンが大きく表示される「イージーホーム」も利用できる。「ボタンの表示もフィーチャーフォンに近い感じになりますから、今までのスマートフォンに抵抗があった方にも乗り換えていただけるのではないでしょうか」とユン氏は期待する。

「au +1 Collection」で提供しているLG純正のフリップ式カバーを付けて開いた状態。表示しているのは従来型携帯電話ユーザーにも使いやすい「イージーホーム」画面(左)。ディスプレイ側のカバーに小窓が開いており、閉じるのに連動してディスプレイの表示が変わり、小窓の部分に必要な情報が表示される(右)

未来のためのチャレンジ

ロック画面から直接写真やビデオを楽しめる「Qシアター」、ロック画面を傾けると壁紙がインタラクティブに変化する「スウィングロックスクリーン」、ディスプレイを2回タップするだけで画面をオン/オフできる「ノックオン」など、LG独自のUIは、グローバルモデルのG2をベースにしたもの。「ちょっとしたエフェクトや機能の積み重ねで、利用者が自然な動作で使えるようにしてくれるスマートフォンです。これに慣れてしまうと、他の端末では物足りなくなります」と、上杉は評する。

新しい試みが、4K動画撮影機能だ。「今の段階ではテレビに接続して手軽に再生するというわけにいきませんが、未来のために、今の思い出を最高の画質で記録しておくという使い方はあるのではないでしょうか」(ユン氏)。

また、意外なところから評価されているのが、ハイレゾ音源再生機能だ。G Flexは、CDの6.5倍もの情報量を持つ、24bit/192kHzでエンコードされた非常に高品質な音楽データまで再生できる。「このクラスできちんとした音が再生できる機種は珍しいと、音楽雑誌で取り上げられたりしています」(上杉)。1曲あたり数十〜数百メガバイトの容量になるので、現在はWi-Fiでのダウンロードが必須といえるが、未来の高速ネットワークであれば、ハイレゾ音源のストリーミングサービスも誕生するかもしれない。これも、未来を先取りした機能だといえるだろう。

使い勝手が良く、パフォーマンスが良く、スクロールも速く、当たり前に使いやすい、でも「曲面型スマホ」。ユン氏は、「過渡期にあるスマートフォンの新しい形」と語る。「デバイスはたくさんあるけれども、まだ最終的な落ち着きどころが見えていない、今の環境は不思議で楽しいです。可能性がいろんなところにありますから。革新的であり、かつ人にやさしい端末を作るためのチャレンジをこれからも続けていきたいです」(ユン氏)。

「スマートフォンの次に来るものとして、ウエアラブルデバイスのコンセプトモデルが少しずつ出始めていますが、それらのディスプレイはみんなカーブしています。スマートフォンのディスプレイを曲げるというのは、次の時代のデバイスへの変化点なのかもしれませんね」(上杉)。

LGのカーブしたディスプレイとカーブした電池という技術シーズが、ウエアラブルという時代のニーズに追いつき、その接点に生まれたのがG Flexなのだろう。LGとKDDIの次のチャレンジは、どのような形のデバイスとなって形になるのだろうか。

文:板垣朝子 撮影:高橋正典

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