2013/06/13

第2回察知人間コンテスト最終プレゼンテーションリポート 人の五感を拡張するARの新しい可能性を代官山で見た

第2回察知人間コンテスト最終プレゼンテーションリポート。人の五感を拡張するARの新しい可能性を代官山で見た

第2回察知人間コンテスト受賞者と審査員

5月17日、東京・代官山のシアターサイバードで、「第2回察知人間コンテスト」の最終プレゼンテーションと表彰式が行われた。

察知人間コンテストとは、エンジニア、クリエイターをはじめ、一般の方々を対象に、AR(Augmented Reality、拡張現実感)を身近にすべく、技術評論社とKDDIが実施しているコンテストで、KDDIが提供するAR開発キット「SATCH SDK」を利用して開発された、あるいはARブラウザ「SATCH VIEWER」で再生可能なコンテンツが応募対象だ(*)

昨年11月から今年1月までの応募期間中に応募された総数約50のアイデアの中から、今回、最終審査に残ったのは6チーム。審査委員長のAR三兄弟長男・川田十夢氏からの「二次審査では僅差の状態で、今回のパフォーマンス次第ではどのチームが大賞を獲得してもおかしくないので、気持ちを楽にしてプレゼンテーションしてほしい」という言葉を受け、プレゼンテーションと審査がはじまった。

発想の広がりを見せた作品群

それでは、審査結果と6作品の内容を紹介しよう。

グランプリ(賞金100万円)
エントリーNO.6:乗っ取りカメラ(乗っカメ制作チーム)

3台の端末でARモードと乗っ取りモードをデモンストレーション

「他人の視覚を察知する」をコンセプトに、複数のデバイスにインストールすることで、相互にカメラの映像を共有できるアプリ。自分の端末に、カメラを向けた方向にいる複数の人のカメラ映像をAR表示する「ARモード」、ARモードで表示された中から選んだカメラの映像を自分のカメラの映像のように手元で表示できる「乗っ取りモード」が利用できる。AR表示では、端末の向きと位置情報から、ほかの端末の位置と距離を割り出してマッピングする。

利用例としては、写真シェアに続くコンテンツとして「リアルタイム映像のシェア」が可能になる。また、スポーツ観戦やライブなどで、他の位置や方向から見ている人の視覚を手元で見て別の角度からの視点を楽しんだり、オリンピックのように複数会場で同時に開催されているイベントで、自分がいる場所以外の競技を楽しむなどが考えられる。さらに、鬼ごっこやサバイバルゲームなど、複数人で行うゲームに持ち込むと、「見ている風景と方向から、相手のおおよその位置を察知」することができるので、これを利用して探したり、逆に視界に入らないように逃げるといった新しいゲームができる。

乗っカメ制作チームの秋山裕志氏は、「コンテストのバナー広告を見て、おもしろそうだと思って応募した」とのこと。幽体離脱のように他人のカメラに乗り移れたらおもしろそう、という思いつきを形にした。iPhoneアプリの開発も開発ツールの使用もまったくの未経験だったが、SATCH SDKを使って短期間に開発を実現した。

川田審査員長は「二次審査ではできなかったことが可視化されており、とても楽しかった。いろいろと広がりが考えられる素晴らしいアイデア」と高く評価した。

準グランプリ(賞金20万円)
エントリーNO.3:てづくりARすごろく♪(チーム M.Lab)

てづくりすごろくの「ます」がARマーカーになっており、スマートフォンで撮影すると、AR表示されるますの内容がランダムに変化するすごろく。ますに止まり、カメラで撮るたびに、「何が出てくるかな」とわくわくドキドキできるのが特徴だ。ルールはマスごとに設定されたポイントを獲得して、一定のポイントに達したら上がりとなる「ポイント制」なので、遊ぶ時間の目安が設定できる。

マスの種類は5種類あり、その組み合わせとゴールポイントの設定によりさまざまなパターンのすごろくが作れる。プレゼンテーションでは、協力しながらすごろくを作り、一緒に遊ぶ子供たちの映像が紹介された。

審査員の阿部淳也氏(株式会社ワンパク)は、かわいいマーカーや音など、子供向けのワークショップ用キットとして使える完成度を評価。「二次審査から3週間でクオリティをよくここまで上げてきた」とコメントした。


惜しくも受賞を逃した各チームの作品の概要は以下の通り。

エントリーNO.1:音色カメラ(田中雅也氏)

「AR=画面表示に限らない」というコンセプトに基づき、画面ではなく音でARを実現する。マーカーを認識してマーカー内の色の配列に応じた音階の音(曲)を再生する「オートモード」と、カメラで撮影した場所の色に対応した音を短音で再生する「マニュアルモード」がある。音色は、ピアノ、ギターというように切り替えることもできるほか、音声を再生することもできる。マニュアルモードでは、クレヨンで描いた色の点を追うことで曲を演奏したり、信号の絵を認識させて「止まる」「動く」としゃべらせるといったデモも行なった。

今後の課題としては、ホワイトバランスの変化に対応した色の認識精度向上、和音への対応、リズム対応などを挙げた。また、音色設定ツール、マーカー設定ツールを公開し、誰でも新しいマーカーや音色を創ることができるようにしたいとした。

川田委員長は、「二次審査の時に比べ、音色が追加されるなどかなり進化していた」とコメントした。

エントリーNO.2:モアイどこ置く?(どこ置く制作チーム)

「日常生活に遺跡をプラス」をコンセプトに、世界中の遺跡や建造物を日常生活で見慣れたものと重ねることで、その大きさを感じることが目的。コンパスや加速度センサーの情報を利用して遺跡をさまざまな方向から見たり、モアイの向きを変えたり、カメラの高さ0m、20m、634mと変えて、上から見下ろすこともできる。

消防署にモアイを置いてみた画像や、綱島街道を望むスフィンクス、モアイと並ぶスフィンクスといった画像のプレゼンテーションに続いて、デモンストレーションでは会場内にモアイやピラミッドを出現させ、「大きすぎて見上げるしかない」ことでその大きさを実感させてみせた。

審査員の山根 淳氏(株式会社人間)は、「ARの技術よりもモアイをどれだけ格好よく見せるか、という目的意識の強さに驚いた」とコメント。また、同じく審査員の鴨志田博礼氏(KDDI)は、「外でぜひ見てみたい」とコメントした。

エントリーNO.4:折り紙AR(弘田月彦氏)

「折り紙のパッケージについている折り方説明の図がわかりにくい」「さまざまな折り方があるのに知られていない」という課題を解決する作品。ARマーカーの役割を果たす専用シートの上に置いた折り紙にスマートフォンをかざすと、現在どこまで折られているかを認識して、次の折り方が説明と3DCG動画で表示される。

また、作品完成した後も楽しめるよう、作品をカメラにかざすとアクションが起こるようになっている。デモンストレーションでは、折りあがった「ハト」がはばたいて鳴いていた。今後の課題は、認識精度を向上することと、作品のバリエーションを増やすことである。

審査員の馮 富久氏(技術評論社)は、「二次審査の時よりも作品が増えておりバリエーションが増やせそう。また、折り紙というなつかしいものを新しいテクノロジーで、親子が一緒に楽しめる」とコメントした。また、川田氏は「できあがった作品が最後に命を与えられるのが、ストーリーとしてよい」と評価した。

エントリーNO.5:Trap Hole Drawing Game(H.P.s.b.I)

上から落ちてくる立体物を、描画用のプレイシート(現実の紙)にペンで描いた図形でキャッチするゲーム。描いた図形がARで「穴」として表示され、立体物をキャッチできる。キャッチするには、カメラとプレイシートを動かして上手に位置を調整するなど、リアルとバーチャルの相互作用が必要になる。

プレイシートを直接ARマーカーとして利用するには、SATCH SDKのD'Fusion Augmented Reality技術を利用。リアルとバーチャルの相互作用は、OpenGLの関数で座標変換を行って表示している。今後は、応用として、ゲームの中で立体物を描けるペイントツールの展開などを考えている。

川田氏は、「技術デモとしては素晴らしいが、二次審査の時からあまり進展がなかったのが残念」とコメントした。

KDDI オープンプラットフォームビジネス部長
鴨志田博礼氏

キャンペーン用ギミックから身近に使える技術になりつつあるAR

最後に、KDDI オープンプラットフォームビジネス部長の鴨志田博礼氏が今回の最終審査を総括。「最近は企業がARを使ったキャンペーンを展開していますが、今回選ばれた皆さんの作品は、アイデアを含めて幅と発想が大きく広がっていると感じます。キャンペーンだけで使われていた技術が、身近に使える技術になってきていると感じる第2回のコンテストでした」と締めくくった。

「人の五感の延長」としてのARだから“察知人間”
審査委員長 川田十夢氏(AR三兄弟 長男)

審査委員長のAR三兄弟長男 川田十夢氏

“察知人間”は僕のネーミングです。これはもちろん「SATCH(*)」の名前にひっかけてはあるのですが、ARというのは人間のセンス、五感を拡張するものなんですね。知覚にどのように入出力するか、人の身体を介して何かをすることが大事なんです。そうじゃないと、ただのシステムになってしまう。人間が身体を動かして何かを感じる。だから「察知人間コンテスト」なんです。

第1回に比べると全体にクオリティは高くなっていたと思います。SATCHのARエンジンの性能が向上したことと、応募者が増えたことが理由でしょう。例えば、グランプリを受賞した「乗っ取りカメラ」は、通信事業者のインフラである安定した帯域の通信とサーバーを確保すれば、すぐにでも動かせるプロダクトになると思います。

次の段階としては、このコンテストで賞を獲得した人や高い評価を受けた人に、たとえばこのコンテスト発信のアイデアの事業化といった「次のステップ」を用意することが大事です。それは、我々運営側の課題だと思います。

*SATCH
KDDIによるARのブランド。ARとは、コンピューターによって現実を拡張する技術のことで、拡張現実感と訳される。KDDIは、フランスのAR技術企業Total Immersion S.A.と提携し、開発者向けに、スマートフォン用ARアプリ開発キット「SATCH SDK」や、スマートフォン向けのARブラウザアプリ「SATCH VIEWER」を提供している。

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

presented by KDDI

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