2013/03/07

災害に備えた携帯電話基地局の停電対策とトライブリッド基地局

停電が77%を占めた東日本大震災時の基地局停波の原因

KDDIは、災害時にも通信ネットワークを維持するためにさまざまな施策を推進しています。3月1日には、報道関係者向け説明会を開催し、KDDI 技術統括本部 技術企画本部モバイル技術企画部の松石順應企画グループリーダーが、携帯電話基地局の停電対策について説明しました。

東日本大震災時には、東北6県で1,933局のau携帯電話基地局が停波しましたが、その77%は停電によるものでした。そこでKDDIでは、「トライブリッド基地局」の整備と基地局バッテリーの24時間化の2つの柱により、災害時にも携帯電話による通信を確保するための取り組みを行なっています。

公開されたトライブリッド基地局

全国100カ所のトライブリッド基地局を整備

トライブリッド基地局とは、電力会社から供給される電力に加え、基地局に設置した太陽光発電と蓄電池の「3つの電力」を、時間帯や天候によって最適に利用する基地局です。KDDIでは、省エネおよび環境対策として、2009年12月から全国11カ所で国内初のトライアルを行なってきました。

太陽光発電を活用することで、省エネに加え停電時により長時間サービスを提供可能にするメリットもあることから、KDDIは、トライアルで得たノウハウを生かしてトライブリッド基地局を拡大し、2013年3月末までに全国100カ所に設置する予定です。

3月1日には、77局目となるトライブリッド基地局、春日部南中曽根局の運用を開始しました。太陽光発電パネルを2枚備え、晴天時には正午前後の3時間は基地局が消費する電力の40%程度に当たる400Wを発電します。総消費電力に占める太陽光発電の割合は5%程度の予定です。

トライブリッド基地局には、太陽光発電による省エネに加え、日中の消費電力をカットできるピークカット効果、夜間電力で蓄電池に貯めた電力を日中に使用することによるピークシフト効果もあります。

なお、設置を進めているトライブリッド基地局には、太陽光発電パネルを4枚設置した局もあり、800Wを発電し、総消費電力の約10%をまかなえます。

トライブリッド基地局とは
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トライブリッド制御システム
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トライブリッド基地局トライアル
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基地局バッテリーの24時間化により停波を防止

一方、基地局バッテリーの24時間化は、基地局に設置されているバッテリーの増設や発電機の設置により、停電時の停波を防ぐ措置です。2013年3月末までに、都道府県庁、市町村役場、主要駅など、災害時に防災拠点となる場所を中心に、全国約2000局でバッテリーの24時間化を実施する予定です。一部の基地局は、バッテリー追加に加え太陽光発電を備えた「バッテリー24時間化+トライブリッド」となる予定です。

基地局には、停電後3時間程度運用可能なバッテリーが備えられており、大部分の基地局では、通常時に停電があっても、各地のKDDI拠点からの駆けつけ対応で停波を避けることができます。

今回の措置により、大規模災害等でかけつけ対応が困難な場合にも、より長時間、重要拠点の携帯電話ネットワークを維持することが可能になります。

このような基地局の電源強化に加えて、KDDIは、基地局の省電力化を以前より進めています。

一つは装置を屋外設置することで、省スペース化とともに空調設備を不要とした「エアコンレス型基地局」を導入し、現在では、au基地局の主流となっています。

もうひとつが、無線機の省エネ化です。これにより無線機の消費電力を半分に、システム全体でも消費電力を約40%削減しています。

基地局バッテリーの24時間化
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省電力型基地局について
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これからの取り組み
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災害に備えたさまざまな取り組みを検討中

KDDIでは、今後、以下のような災害対策を検討しています。

まず、従来の基地局よりも広い範囲をカバーする「大ゾーン基地局」の検討です。停波する基地局が出た場合に、大ゾーン基地局により、携帯電話のエリアを維持するものです。災害時に、既存の基地局アンテナの角度を変更して大ゾーン化する措置は既に行なっていますが、より高く、より広い範囲をカバーする「非常時利用型」の大ゾーン基地局の設置を検討しています。

次に、多様な停電対策の検討です。その一例が、可搬型リチウムイオン電池の開発です。あらかじめ充電しておいたリチウムイオン電池を停電した基地局まで持っていき電力供給することで、停波を避けることができます。現在トライアルを進めています。

最後に、船舶型無線基地局の検討です。これは、災害時、陸路からのアプローチが困難な場合に、船舶に携帯電話基地局を設置してエリアを復旧させるというものです。KDDIは総務省中国総合通信局の調査検討会※に参加し、2012年11月には実証実験を行って成功を収めています。法規制などの課題を整理して、早期の実用化を目指しています。

※本取り組みは、総務省中国総合通信局で平成24年度に開催した「災害時における携帯電話基地局の船上開設に向けた調査検討」での実地試験であり、平成25年3月に報告書を取りまとめています。
総務省中国総合通信局HP: http://www.soumu.go.jp/soutsu/chugoku/data/chosa_index.html

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