2012/11/29

東南アジアとアメリカを最短でつなぐ海底ケーブル『SJC』の陸揚げに密着

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東南アジアとアメリカを最短でつなぐ新たな国際通信の大動脈、光海底ケーブル「SJC」の陸揚げに密着!

KDDIは、11月19日、千葉県の千倉海底線中継センターにおいて、NEC、KCS(国際ケーブル・シップ株式会社)とともに、光海底ケーブル「SJC(South-East Asia Japan Cable)」の陸揚げを行った。

SJCは、シンガポールをはじめとする東南アジア各国と日本をつなぐ光海底ケーブル。2009年12月にKDDIやGoogle(米国)、SingTel(シンガポール)、Globe Telecom(フィリピン)など10社が共同で建設することに調印し、敷設プロジェクトがスタートした。ケーブルは、中国本土、香港、ブルネイなどに分岐する支線を合わせると総延長約9000km、総建設費約4億米ドル(約320億円)に上る。6ペア12心の光ファイバーケーブルが採用されており、初期の設計容量は16Tbps。最新のDWDM(高密度波長分割多重方式)技術を利用し、需要をみてさらに容量を増やしていくという。

敷設船から繰り出されたケーブルを陸揚げ

陸揚げは19日早朝6時半頃からスタート。なお、これに先立つ11月12日に、KDDIの100%小会社KCSが所有するケーブル敷設船「KDDI PACIFIC LINK」が、北九州市にあるOCC(NECの子会社)で海底ケーブルを積み込んで搬送していた。陸揚げ当日は、このKDDI PACIFIC LINKが千倉海底線中継センターの沖約1kmに停泊してケーブルを繰り出し、陸地ではケーブルを巻き取る作業が行われた。当日は風と波が少しあったが、KDDI担当者によると気象条件は比較的いい方だったという。

北九州で行われたケーブル積み込みの様子。KPL船内にある「ケーブルタンク」において、海底ケーブルが人の手によって丁寧にコイルに巻かれる

中継センターの沖合に停泊したKDDI PACIFIC LINKから、ケーブルが繰り出される。ケーブル先端の目印となる黄色いブイが陸に近づいてくる

陸上では、ケーブルをくくりつけたワイヤーを巻き上げ機で引っ張っていく

午前8時過ぎに光ケーブルの先端に付けられた浮き輪が到着。浮き輪の中には、KDDI PACIFIC LINKからケーブルと一緒に送られたシャンパンが入っていた

海岸で、一緒に到着したシャンパンを光ケーブルの先端にかけるセレモニーが行われた

光ケーブルの先端は午前8時過ぎに海岸に到達。ケーブルは巻き上げ機などを使って引き上げられたが、位置の修正など細かい作業のかなりの部分は人力で行われている印象だ。ケーブルの先端が陸揚げされると、浮き輪の中に入れられて一緒に到着したシャンパンをケーブルにかけて、陸揚げを祝うセレモニーが行われた。

ケーブルはその後、海岸から地下のトンネルを通って中継センターの背後に引きこまれた。そこでも巻き上げ機や人力で、センターの建物外をぐるりと半周して700m程度の余長を取り、ケーブルピットを経由してセンター内のネットワーク機器に接続される。

千倉海底線中継センターは東京電力から常用と予備、2系統の給電を受けているほか、ガスタービン式の発電機も備えており、停電しても56時間は自家発電で稼働できる。ちなみに東日本大震災の際には、東電からの給電は止まることなく安定していたという。

海岸から道路を挟んですぐに千倉海底線中継センターがあり、光海底ケーブルはこの建物の背後に地中のトンネルを通って引き込まれる。白い鉄塔は、かつてバックボーン回線にマイクロ波を利用していた頃のアンテナ。現在はauの基地局がある

中継センター建物の周囲が掘り起こされており、ケーブルが建物に沿うように引っ張られていく。ここで700m程度の余長が取られた後、建物内に引き込まれる。このケーブルの通路は陸揚げのために掘り起こされたもので、ケーブルの接続が完了すると再び埋められる

ケーブルは地下からケーブルピットを通って端子盤が並ぶ部屋まで引きこまれ、通信機器に接続される

日本とアメリカとをつなぐUNITYのケーブルも見られた。SJCも同様に接続される

ガスタービン式の発電装置。燃料は軽油で、実際に動かすと、かなり大きな音がするという

アジアとアメリカを最短でつなぐSJC

KDDI 執行役員 ネットワーク技術本部長 湯本敏彦氏

KDDIが出資する主な海底ケーブル(クリックで拡大)

千倉はアジアとアメリカを最短距離で結ぶ直線上にある(クリックで拡大)

SJCは地震など自然災害の影響を受けない南寄りのルートを選択(クリックで拡大)

陸揚げの記念セレモニー後には、センター内で陸揚げに関する記者発表会も行われ、KDDI執行役員ネットワーク技術本部長の湯本敏彦氏が、SJCの概要について説明した。

日本から国際通信を行う場合、海底ケーブルと衛星の2つの方法がある。1989年に千倉海底線中継センターができた頃のトラフィックは音声が中心で、利用される割合も衛星と海底ケーブルがほぼ半々だった。しかし、1990年代以降はインターネットなどのデータ通信のトラフィックが増加。また、海底ケーブルの技術革新が進んで大容量化が可能になり、現在では国際通信の実に99%以上に海底ケーブルが利用されているという。

その海底ケーブルだが、敷設には多額の費用がかかるため、ほとんどが複数の通信会社等の共同出資で行われている。KDDIが出資している海底ケーブルには、日本とアメリカをつなぐものとして、2001年に開通した「JAPAN-US」と2010年に開通した「UNITY」が、また2001年に開通したアジア各地をつなぐ「APCN2」、2008年に完成した日本とロシアをつなぐ「RJCN」がある。RJCNはナホトカからシベリアを横断してヨーロッパまでつながっており、東京からロンドンまで最小の遅延時間を誇るという。

今回のSJCは、2011年から2018年で8倍に拡大すると予想される東南アジアのトラフィック需要に対応するために敷設されるものだ。東南アジアからの国際通信はアメリカへのトラフィックが多いが、シンガポール-アメリカ間の約1万5000kmを直接つなげることは、技術的な壁があってできないという。一方、房総沖は東南アジアとアメリカの最短距離上にあり、アメリカと日本をつなぐUNITYがある千倉を中継すると、ほぼ最短距離で結ぶことができる。距離が短ければ海底ケーブルの建設費を抑えることができ、通信の遅延も最小限にできる。最近はインターネットを使った金融取引が行われ、1ミリセカンドでも速く取引をしたいというニーズがある。「こういったニーズに対応するために、できるだけ国際間の遅延を短くしたい。それがケーブルの商品力につながる」と湯本氏は説明する。

また、SJCには東南アジアのケーブル障害を回避するという目的もある。台湾沖には、たくさんのケーブルが通っているが、地震や、台風で起きた土石流で、ケーブルが切れる障害が多発している。2006年の台湾沖地震で起きた土石流では、ケーブルが20か所も切断された。そのためSJCは、自然災害の影響を受けないように、障害が発生した海域を避けてできるだけフィリピン寄りに建設されるという。

こうした自然災害のほか、船の錨を降ろされてケーブルが切れることもあり、海底ケーブルは保守も重要になる。建設に関しては、今回の陸揚げも行ったKCSのKDDI PACIFIC LINKが主に行なっているが、保守に関しては「KDDI OCEAN LINK」が、横浜ゾーンと呼ばれる西太平洋と東アジア海域を担当している。

海底ケーブルは、各社がケーブルを貸し借りして融通し合い、どこかのケーブルが切れたとしても、他のケーブルに迂回させることで通信が途絶しないように運営されている。湯本氏は、「このSJCケーブルを安全第一で予定通り仕上げ、通信サービスの充実に努めたい」と意気込みを語った。

ケーブルや中継器の製造、敷設はNECが担当

日本電気 執行役員常務 手島俊一郎氏

海底ケーブルシステムの概要(クリックで拡大)

中継センターにはNEC製の海底中継器(Repeater)が展示されていた

陸揚げ後、再び出航するケーブル敷設船「KDDI PACIFIC LINK」

続いて、NEC 執行役員常務の手島俊一郎氏が、同社の海底ケーブル事業についての概要を紹介した。

1万kmを超える長距離国際通信に利用される海底ケーブルシステムは、最大8000mの深海にも敷設され、800気圧(自動車を親指一本で支えるほどの圧力)という高い水圧環境下において25年間、継続的に運用されることが求められている。そのため、海底ケーブルには世界最高水準の光伝送技術と耐久性が求められる。

NECは、海底ケーブルシステムを過去40年間に渡って供給。最近はDWDM技術により通信容量が飛躍的に増加しており、20年前と比べて約3000倍もの容量を実現してテラビット級の大容量伝送が可能になっているという。今回のSJCには、この最新技術が適用される。

NECは、海底ケーブルシステム供給における世界3大ベンダーの1つであり、ケーブルから海底中継器、分岐装置などを一貫して提供できる国内唯一のベンダーだという。ケーブルは北九州市のOCCで、海底中継器と分岐装置は山梨県大月市のNEC山梨で製造されており、SJCの他にUNITYの建設も担当している。「これまで敷設してきた海底ケーブルシステムの総長は20万kmを超えており、地球5周に相当する」(手島氏)。今回のSJCプロジェクトでNECは、千倉の陸揚げのほか、フィリピン沖からシンガポールまでの南部分の敷設、すべての陸揚げなど、約4400kmのルートを担当する。

千倉での陸揚げが完了し、各種テストを行った後、その日の夕方にKDDI PACIFIC LINKは再び出航。40km沖までケーブルを敷設していく。深度約1000mまでは、漁網などに引っかからないよう、ケーブルは地中に埋められるそうだ。40kmから先は別の船に引き継がれ、ケーブルはシンガポールに向けて敷設されていく。SJCの運用開始は2013年中頃を予定している。

取材・文:房野麻子

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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