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2012/08/09

世界に羽ばたくジャパニーズベンチャー PART1. シリコンバレーのアントレプレナーたち

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世界に羽ばたくジャパニーズベンチャー。ウェブやスマートフォンのアプリによって、国境は無意味なものになった。クラウドの発達によって、サービスの開発・提供コストも劇的に下がっている。今、再び、隆盛を迎える起業家たちの挑戦を紹介する。

■PART1

シリコンバレーのアントレプレナーたち

ICTベンチャーの本場、シリコンバレーでは、世界中から集まった起業家が切磋琢磨している。そこには、世界を目指す日本人起業家の姿もあった。

本場の起業家育成プログラム

米国カリフォルニア州。シリコンバレーのとあるビルの一角に、世界中から集まった起業家たちが切磋琢磨する「寺子屋」的な空間がある。
「金曜日の夜、みんなで映画行くぞ! それまで頑張れ!」。ビーチサンダルにTシャツ姿でそう叫ぶのは、4カ月間の集中起業家育成プログラムを主宰するインキュベーター「500 Startups」の創始者、デイブ・マクルーア氏だ。

米国、ブラジル、中国、インド、ベトナム、日本などから集まった面々は、すでに「CEO」や「共同創立者」の肩書を持つ起業家たち。eコマース、スマートフォンアプリ、ソーシャルネットワークなど、さまざまな分野で起業した彼らは、4カ月間の養成プログラムを経て、米国の投資家から資金を引き出すべく、メンターと呼ばれる専門家たちの指導の下で、製品やサービスの向上に磨きをかける。

アメリカで起業し、「500 Startups」に参加した鈴木健太郎さん

アメリカで起業し、「500 Startups」に参加した鈴木健太郎さん

ピザの空箱がキッチンの隅に転がり、寝袋持参のメンバーもいて、巨大な窓からは広大な青空と山々が見える。文化祭前夜のキャンパスのような活気にあふれた雰囲気だ。

友人と「Hapyrus」というデータ処理ビジネスを起こし、アメリカで起業した鈴木健太郎さん(30歳)は、この養成プログラムを経験し、「アメリカ人って、こんなに働くんだ」と、あらためて驚いたと言う。

80%近くのスタートアップ(起業して間もない企業)は失敗する、というのがシリコンバレーの定説だ。それでも、自分のアイデアを試したいという若者が続々やって来る。さらにリスクを承知で、彼らに資金を投資する投資家たちがいる。

「500 Startups」パートナー、ジョージ・ケラーマン氏

「500 Startups」パートナー、ジョージ・ケラーマン氏

「マイクロソフトを辞めて起業したときは本当に不安だったよ。まず、家賃が払えるのかって」と言うのは、自分がいる場所の近くで行われているイベントを探して参加できるスマートフォン用アプリ「Flockish」を作ったアミット・パカ氏。彼はその後、Flockishをネットオークション大手のe-bayに売却、自らもe-bayに引き抜かれた。

会社員から起業、自社を売却という一連の流れを体験したパカ氏のような人たちが、気軽に遊びに来て、自身の体験をシェアするのが500Startupsの魅力の一つだ。

ヤフー!ジャパンで働いた経験もある500Startupsパートナーのジョージ・ケラーマン氏は言う。

「日本には、資本、高い教育水準、ブロードバンド、この3つが揃っている。自国にこの3つがないために、米国に脱出する途上国の起業家たちも多いんだ。日本人にとって、シリコンバレーじゃなくちゃできないことは何一つない。日本でもできる。最大のハードルは、日本の〝恥の文化〟じゃないか。一度や二度の失敗なんて当たり前、という空気があれば、もっと起業家が増えるはず」

世界に羽ばたくジャパニーズベンチャー。

■PART1

米国ならではの出会いが生んだコミュニケーションアプリ

シリコンバレーに居ながら、投資家には一切頼らず、自己資金と売上で起業を成功させた日本人もいる。もともとは専業主婦で、テクノロジーは苦手と公言する久保由美さんだ。言葉をうまく話せない重度の自閉症の子どもたちが感情を表現したり、彼らのスピーチ・セラピーの助けになるスマートフォン用アプリを開発。2009年に、「Voice4U」の名称で、日米で同時発売し、好評を得ている。

「Voice4U」を開発した久保由美さん(左)、樋口聖さん(右)と、絵を描いた久保香穂さん(中央)。

「Voice4U」を開発した久保由美さん(左)、樋口聖さん(右)と、絵を描いた久保香穂さん(中央)。

駐在員の妻としてシリコンバレーにやってきた久保さんは、アメリカで出産した長男が2歳のとき、重度の自閉症と診断され、「この子が20歳になるまでに、一言でも声を発してくれたら」との願いを抱く。

言葉を発せない自閉症児の場合、親が「絵カード」を見せて、意思を確認する。ラミネートした大きな絵カードを何百枚もどこへでも持ち歩き、多動の傾向がある子どもの手を引いて歩くのは、かなりの重労働だ。

家族連れが楽しむショッピングセンターで息子が奇声を発したとき、地面に座って、汗だくで絵カードをめくり、「痛いの? 暑いの?」と聞いてなだめたときは涙が出たという。

iPhoneが発売された頃、久保さんが「この中にすべての絵カードを入れられたらいいのに」とつぶやいたところ、たまたま自宅に遊びに来ていた、スタンフォード大学大学院博士課程で航空宇宙工学を研究する樋口聖さんが「できますよ」と即答。彼がボランティアでソフトウェアを開発したのが始まりだった。

「食べる」の絵カード

「食べる」の絵カード

息子を育てた経験から、親の生声を吹き込め、自分で撮影した写真を加えられる機能が欲しかった。

感情や行動を表す30語を含め、160の言葉を絵カードにしたこのアプリ、例えば「食べる」というカードには、自閉症児がよくするポーズで、肘を張りフォークをわしづかみにして、自分のテリトリーを確保しながら食べる姿が描かれている。自閉症児が、自分のことだと安心して、すぐに内容を認識できるのがポイントだ。髪がなく、服を着ていない姿も、服や髪型の変化にこだわることの多い自閉症児が絵の意味に集中できるようにするため。絵を描いたのは、自閉症の弟と18年間暮らしてきた久保さんの長女、香穂さんだ。

専業主婦とスタンフォード大学のロケット科学者。普通なら接点のないはずの2人がシリコンバレーで出会い、2010年に「スペクトラムビジョンズグローバル」社を興した。

「テクノロジーと最も遠い所にいると思われている自閉症児とそのお母さんたちに、このアプリでコミュニケーションの手段があることを知ってもらいたい」と久保さんは言う。

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