2014/02/13

携帯電話を利用した音声ツアーガイドが広がる

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トーマス・ダン(Thomas Dunne)氏は、自身の経験を基に、2006年にモバイルを利用した音声ツアーガイド専業のOnCell社(ニューヨーク州Perinton)を起業した。その4年前に、博物館の音声ガイド機器が電池切れで長時間待たされている間に、携帯電話でボイスメールのチェックをしていて、音声ガイドの音声ファイルを携帯電話で聴ければいいのにと思い付いたのだ。今やアメリカとカナダの博物館、美術館、国立公園、歴史的建造物、ビジターセンター、大学など1000カ所以上に音声ガイドを提供するまでに成長し、年間に1000万件ほどの利用があるという。

利用者は自分の携帯電話で、展示物などのそばに掲示されている電話番号に電話したり、QRコードを読み取って電話すると、音声ガイダンスを聞ける。紙製のパンフレットなどの配布を減らすこともできるため、環境にも優しい。

アメリカの大学では、入学希望者や家族のキャンパス見学に対応して、先輩学生などが大勢を引き連れて広大な敷地を歩いている光景を目にする。ガイドのトレーニングまで考えると大学側にも相当な負荷がかかるが、新入生の獲得は大学経営の根幹なので軽視することはできない。そこに音声ガイダンスへの需要があるわけだ。美術館などでも来訪者の満足度向上は重要な経営課題なので、音声ガイダンスのプラットフォーマーに対するニーズは常に存在する。日本でも観光地などで同様のサービス(「ケータイ音声ガイダンス」等)が提供されている。

音声ガイドでは通話料金を利用者に負担させることになるが、IP電話、ショートメッセージなど、利用者側の通信料負担を軽減する技術も整ってきている。携帯電話を利用した音声ガイダンスを、専用の装置を利用するのに比べると、十分な数の装置を揃え、充電したり、コンテンツを入れ替えたり、故障を修理したりという運用の手間をほぼ一掃することができる。

最近、OnCell社はモバイル用アプリ開発会社を買収し、アプリやモバイルサイトのカスタマイズに簡単に応じられる準備を整えた。スマートフォン普及に対応して画像や動画などコンテンツがリッチになってきているが、デザインやブランディングなど個別に対応していると、カスタマイズにコストと時間がかかるためだ。

創業者のダン氏はGoogle Glassにも注目している。確かにメガネ型のウエアラブル機器が普及してくれば、音声ガイドツアーも大きく様変わりするはずだ。今年中には何らかのアプリを打ち出す予定があるという。

OnCellは、アメリカの大学などでよく行われるスカベンジャーハント(scavenger hunt)にも対応している。これは集める物の一覧表を持った大勢の学生が、町に繰り出してゴミ拾いなどを競い合うイベントだが、こうした古くからある競技もGoogle Glassなどで様子が変わってくるのかもしれない。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。

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