2014/02/10

見ている人に合わせた広告を表示

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イギリスの小売大手・テスコ(Tesco)は、自社が展開するガソリンスタンドチェーン450店舗にアムスクリーン(Amscreen)社の広告用ディスプレイを導入している。optimize(最適化するの意)に引っ掛けて「オプティマイズ(OptimEyes)」と名付けられたこのシステムは、顧客の顔を分析して年齢と性別を判定して、それに応じた広告を表示し、顧客がどのくらいの時間、その広告を見ていたかを記録する。いわば、中年男性と若い女性に対して表示する広告を変えて、どれくらい興味を引いたかを記録するのだが、プライバシーを気にする人々からは懸念の声が上がっている。2002年の映画「マイノリティ・リポート」に登場した顔認識技術を連想するため、今後、年齢と性別の推測からさらに進んで個人が特定され、広告への反応だけでなく、居場所まで特定されるようになっていくことを心配しているのだ。

このシステムの導入場所がガソリンスタンドからスーパーマーケットなどへと広がっていき、顔の特徴を記録するようになれば、どこの誰か(氏名など)までは分からなくても、何月何日の何時にスタンドで給油した人が、何時にどのスーパーに現れて、何の広告を凝視したかが記録されるようになっていく。テスコはウォルマート、カルフールに次ぎ世界3位の売上高を持ち、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどを十数カ国で展開しているため、その動向は大きな影響力を持つ。

ネット広告では、訪問者の登録情報だけでなく、過去の行動履歴や検索履歴などから、性別や年齢のほか、訪問サイトの傾向や嗜好まで推測して、その層に対して広告主側が見せたいと願う広告を繰り返し表示するようになっている。まったく無関係に見えるサイトで、同じ広告を何度も見た経験を持つ人は多いだろう。

ICカードによる改札や、GPS搭載の携帯電話・スマートフォンの普及で、個人がいつどこにいるか容易に分かるようになってくると、20世紀には掛け声だけで終わった感のある「ワン・トゥー・ワン・マーケティング」を推し進めて、広告費を効率的に使いたいのが広告主の偽らざる気持ちだろう。アムスクリーン社のディスプレイはテスコ以外にも採用されており、欧州全体では6,000台以上あるそうだ。テスコのガソリンスタンドチェーンだけでも、月間500万人の顧客にリーチできるらしい。最適化された広告表示が効果を発揮すれば、このようなインテリジェントな広告媒体が増えてくることになるのだろう。だが、近くにいる知らない人にも個人向け広告は見えてしまうはずなので、赤面するような広告は表示してほしくないものだ。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。

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