2021/06/23

| 更新

2021/07/05

スマホの過充電は危険?専門家に聞くバッテリーへの影響や危険性の有無は?


スマホを100%充電している画像

在宅時間が増え、ついつい充電ケーブルにつないだままスマホを利用してしまうことも。TIME&SPACEが2021年3月に調査した「スマホに関する悩みに関するアンケート」において「バッテリーもち」の悩みが1位であることからも、充電量を気にする人は多い。

そんな心配のあまり、スマホの充電表示が100%になってからも充電し続ける、いわゆる「過充電」状態になっていないだろうか。

この過充電がスマホにどんな影響を与え、どんな危険性があるのか。KDDIにおけるスマホ品質管理の専門家に話を聞いた。

KDDI 品質管理部 担当者 KDDI プロダクト品質管理部 山西一郎

スマホの過充電とは?

―――さっそくですが、スマホの過充電とはどういう状況なのでしょうか。危険性はあるのでしょうか。

山西:結論から言うと、アダプタにつなぎっぱなしにしていても、電池劣化の影響はありえますが、危険性はありません。

スマホのバッテリーに使われているリチウムイオン電池の場合、イオンをプラス極からマイナス極に戻すことで充電しています。これをやり過ぎると電池の状態が不安定になる可能性がありますが、一定のところでスマホが充電を停止するよう制御するので、危険性はありません。

リチウムイオン電池の充電の仕組み

ーーーでは、ずっと充電し続けても問題はないということでしょうか。

山西:危険性はなくても、ずっと充電し続けると、リチウムイオン電池の劣化の原因になりえます。満充電に近い状態での充電は、電池劣化の観点から見ると良いことではありません。

リチウムイオン電池の劣化要因

山西:最近のスマホでは、電池ができるだけ劣化しないように充電制御を色々工夫していますが、それでもずっと充電ケーブルにつなぎっぱなしだと劣化が発生する場合があります。電池の寿命を長く保ちたいのであれば、充電しっぱなしはできるだけ避けることをお勧めします。

―――具体的にはどのようにするのが良いでしょうか。

山西:充電し終わったら早めに充電ケーブルを抜くことです。そして電池残量が100%からちょっと少なくなっただけでは、すぐに充電しない。ざっくり言うと、スマホも「腹八分目」くらいがいいかと思います。また、特に暑い季節など、充電しながらスマホを利用することでスマホ自体が高温になりますが、高温も電池劣化の要因です。できるだけ満充電にしたいがために、ついつい充電しながらスマホを使うことがあるかもしれませんが、もしスマホが熱をもった場合は、利用を控え涼しい場所で休ませてください。

過充電による発火の危険性は?

―――「過充電で劣化が発生する」ということであれば、やはり電池にストレスがかかっているのではないかと心配になるのですが、過充電による発火などの危険性はないのでしょうか。

山西:最初にご説明したとおり、リチウムイオン電池はイオンの移動により電池を充電・放電しますが、電池の劣化は電池内部の化学変化によるイオンの減少が原因です。このイオンの減少では発火に結びつきません。

―――充電器側から、電池に大きな電圧がかかって危険、ということはないでしょうか。

山西:たとえ「ずっと充電ケーブルにつなぎっぱなし」状態であっても、スマホ側で電圧を制御しており、電池の許容電圧を超える電圧がかかることはありません。

リチウムイオン電池の劣化要因

―――「充電していて電池が破裂した」という話をネットニュースなどで見ることがありますが、これはイオンの減少や高い電圧が原因ではない、ということでしょうか。

山西:電池の膨れは、電池の劣化事象のひとつです。電池を長い間利用することで膨らみが生じる場合がありますが、これにより発火に至ることはありません。また、稀にお客様から電池が発火したというご申告を受けることがありますが、私が関わった案件はすべて、外部から大きな力が加わって電池内部が損傷・ショートしたことが原因でした。

―――過充電とは別の要因、ということですね。

山西:はい。過充電や電池の劣化が原因ではないのでご安心ください。

急速充電器は危険?

―――電力供給量をスマホ側で制御しているとお聞きしましたが、市販品にある急速充電器を使っても発火などの危険性はないのでしょうか。

山西:充電器自体の保証の考え方は各製造メーカー様の範囲になりますが、スマホ自体とスマホの電池の許容電圧を超える電圧がかからないよう、充電器とスマホの両方で制御しているため、基本的には問題ございません。市販品の充電器利用については基本的にスマホの製品保証外となりますが、ご利用にあたりスマホや充電器が高温になるなど、もし使用中に不安を感じたら、その製品は使わずメーカー純正品やau標準品、MCPC認証マーク付きの製品をご利用されるほうが良いと思います。

―――MCPCというのは?

山西:モバイルコンピューティング推進コンソーシアムの略で、通信会社やスマホメーカー、スマホ周辺機器製造メーカーなどが連携して組織する、高度モバイル&IoT活用の実現を目的とした組織です。このマークがある製品は、MCPC所定の試験に合格した製品ですので、市販品を選ぶ際にご参考ください。

MCPC認証マークについて

大きなW数のACアダプタを使っても問題ないか?

―――iPhoneでは一部のACアダプタにおいて、同梱のACアダプタより大きなW数のACアダプタを使うことで高速充電できると案内していますが、大きなW数のACアダプタを使って充電しても問題ないのでしょうか。

山西:大きなW数のACアダプタを使っても、スマホ側で電力を制御するので問題ございません。どれだけ大きなW数のACアダプタを使っても、スマホは自身が必要な大きさの電流しか引かないので、発火などの危険性はございません。もちろんこちらも製品保証に関する考え方は同様ですので、使用中に不安を感じたら、その製品は使わず製品購入時の同梱品をご利用されるほうが良いと思います。

―――ありがとうございます。

iPhoneアダプタのW数

スマホの充電しっぱなしは避けて八分目充電を

充電しっぱなしによる電力供給過多による発火の危険性はないものの、充電中のスマホ利用による本体の高温化や電池劣化の観点からも、充電し続けることは避けたほうが良いことがわかった。

注意すべきポイントは以下の3つだ。

①フル充電状態に近い状態で充電したままにしない
②充電したままスマホに高負荷をかける使い方をしない
③スマホが高温時の利用を避ける

生活のなかで利用時間が大きな割合を占める人も多いスマートフォン。常に電池を満タンにしておきたい気持ちもあるだろうが、腹八分目くらいで抑えたほうが電池にはやさしいことを忘れず、自分の使い方に合わせて充電してほしい。



文:TIME&SPACE編集部