2021/02/17
スマホの画面割れ防止策は?落下実験を元にケースの選び方をスマホのプロが解説
auの故障受付でもっとも多いお問い合わせは「ディスプレイ破損」、いわゆる「画面割れ」だ。毎日使うスマホだからこそ、思わず手からこぼれて落下する危険性は避けられない。一番良いのは落とさないことだが、万が一の落下の危険性からダメージを軽減する方法はないか。KDDIでスマホの品質管理を担当する山西一郎と水野浩行に、できるだけダメージを避ける方法について、話を聞いた。
―――ふだん生活していても、画面が割れたスマホを使っている人をよく見かけます。画面割れを防ぐ方法はあるのでしょうか。
水野:各スマホメーカーも落下試験を実施し、年々対策を強化していますが、スマホは精密機械のかたまりであることからも、衝撃はいちばん避けていただきたいのが本音です。それを少しでも和らげるということからも、画面割れ対策としては、スマホケースの着用をおすすめしています。
―――どういうケースが良い、など選び方のコツはありますか?
山西:ケースを選ぶ際、値段とデザインを重視する人が多い、というのはこちらの調査でもわかっていますが、できるだけ保護機能重視でケース選びをすることで、画面割れの確率を減らすことができます。実際にどのケースが衝撃をやわらげるか、外で実験してみましょう。
実験:落下時にスマホの衝撃をもっとも軽減できるケースは?
―――用意したケースはどんなタイプでしょうか。
山西:今回は、代表的な背面型のスマホケース2種と手帳型ケースを用意しました。ここに何も付けていないものを加え、落下による衝撃を比較します。
■用意したケース
・手帳型ケース(合皮)
・背面型ケース(ポリカーボネート)
・背面型ケース(シリコン)
■実験内容
・落下物は実機でなく、衝撃を可視化しやすいようスマホ型の粘土にガラスフィルムを貼ったものを用意。
・落下の高さは、ふだんスマホを良く見る高さを想定し、胸の高さに設定。
・落下の角度は、衝撃に弱い角の部分が地面に当たる角度に設定。
水野:では、ひとつずつ落下させていきます。
4タイプを同条件で落とした結果、明確な違いが出た。左から、何もつけていない状態、背面型シリコンケース、背面型ポリカーボネートケース、合皮手帳型ケースという落下結果だ。
山西:それぞれ右下の角部分を見てください。手帳型ケースでは表面のガラスフィルムに目立った外傷はありませんが、残り3つのパターンではガラスフィルムに割れが確認できます。その割れの大きさは、ポリカーボネートケース、シリコンケース、何もつけてない状態とだんだん大きくなっているのがひと目でわかります。
水野:見事に差分が出ましたね。シリコンとポリカーボネートでは、シリコンのほうが柔らかく衝撃を吸収しやすい印象がありますが、ケースとしては固い素材のほうが衝撃時に本体を歪めず、画面割れが起きにくかったと考えられます。今回は本物より剛性がかなり低い粘土の「疑似スマホ」を使用したぶん、より顕著に結果が出たのでしょう。
山西:メーカーがスマホを設計する際も、筐体の剛性と衝撃吸収性の両方をうまく実現することに色々苦労しているようです。この実験結果を踏まえ、さらに強固に保護する方法がないか。会議室に戻り、スマホの画面構造とあわせて詳しく解説しましょう。
プロに聞く画面割れ防止ケースの選び方
―――実験の結果、やはりスマホ落下対策としては、ケースをつけることでスマホへの衝撃を軽減できることがわかりました。実験のとおり、やはり手帳型ケースがいちばん良いのでしょうか。
山西:画面を保護するという観点では、かんたんに言うと、画面を全てケースで覆ってしまうのがいちばん手っ取り早いです。その考えでいくと、手帳タイプは上下左右、ほぼスマホの全面を覆いますので、落下時にフタ部分が開かなければ、直接画面に何かが当たりにくく、有効と言えます。
―――では手帳型ケースを選ぶ際のポイントは何でしょうか。
山西:スマホをケースに入れた際、少し緩いかな?と思えるものは、避けた方が無難です。スマホサイズにピッタリであることに加え、落下時に開いてしまわないよう、フタ留めがついているものをおすすめします。
―――実験結果を見ると、背面ケースではどの素材でも画面割れが発生してしまいました。背面ケース型を選びたい人向けに、少しでも軽減する方法はないでしょうか?
水野:背面ケースでも、画面の高さとケースの高さのバランスによっては画面割れ発生の軽減効果が期待できます。まずはケースの高さに注目しましょう。下図は、スマホに2種類のケースを付けたイメージ図ですが、①赤ケースの場合、ガラス面が下になって落下すると、ケースよりガラスが先に床に当たるので割れやすい状況です。一方、②青ケースの場合は、ケースのサイド部分がガラス面より高いので、ガラスが床にあたりにくく、割れにくい状況をつくれます。
水野:さらに、フィルムか保護ガラスを組み合わせることが望ましいです。一回画面にキズが付いてしまうと、その部分が画面割れの起点となりやすくなってしまいますが、フィルムや保護ガラスを付けることでそれを防止できます。最近の機種は画面の端が曲面の機種が多く、フィルムを前面すべてに貼るのは難しいですが、画面の端はケースのサイド部分の高さでカバーしましょう。
また、スマホに最初から貼ってあるフィルムは、使う時に剥がす前提のものと剥がさないものの2種類があります。説明書などをよく読み、保護目的のフィルムの場合は、できるだけそのままお使いください。
―――ガラスフィルムは、9Hや10Hなど、やはり硬度の高いものが良いのでしょうか。
水野:ガラスフィルムの硬度の高さは、画面割れの原因となる衝撃に対してはあまり関係ありません。硬度の高いガラスフィルムは、引っかき傷などガラス表面の傷には有効ですので、ご自身の利用状況に応じて選択ください。
山西:ケースやフィルムにあわせ知っておいてほしいのが、そもそも落とさないようにすることがいちばん大事だということです。先ほどの実験結果では触れませんでしたが、2回目の落下試験では、手帳型ケースでもクラック(割れ)が見られました。粘土よりも剛性が高い本物のスマホでも、落下を繰り返すと故障する危険性があります。
山西:このことからも、「いかに落とさないか」がいちばん大事なので、少しでも落としにくい状況をつくれるストラップやリングと組み合わさったスマホケースもおすすめです。ケースはどうしてもデザインにこだわる人も多いと思いますが、選ぶ際の選択肢にぜひ入れてみてください。
―――ありがとうございます。ほかに注意点などはありますか?
山西:ケースを付けることは、衝撃からの保護という点ではいいことばかりですが、よりしっかりした素材を選ぼうと金属製のケースを選んだ場合、スマホの通信電波に干渉する可能性があります。使えるはずの場所で圏外になったり、圏外にならなくても強く電波を出そうとして電池持ちが悪くなる場合もあるのでご注意ください。
水野:金属以外でも、素材によっては静電気などの関係で、タッチパネルに影響が出たという修理報告も受けています。タッチパネルは繊細な仕組みなので、ケースやフィルムを付けてから不具合が出た場合は、別の素材の商品に変えたほうが良いでしょう。
水野:また、こちらも稀にですが、ケースやフィルムがスマホの光センサーや近接センサーに干渉することで、画面が暗いままになってしまうなどの症状も発生しています。
水野:透明度の高いフィルムであれば発生しにくいようですが、近接/光センサーの上を覗き見防止用など透明度の低いフィルムで覆ってしまうと、センサーが「周囲が暗い」と認識してしまい、色々な症状を発生させてしまいます。機種専用のフィルムやケースでも、ほとんどはセンサー位置を考慮したフィルムの切り欠き形状になっていますが、稀に切り欠き位置が微妙にずれていたり切り欠き自体がない場合もあるのでご注意ください。
山西:そのほか、手帳型などによくあるカード類が差し込めるタイプのケースは、長時間クレジットカードを入れておくことで、カードの磁気情報が壊れてしまうことがあります。スマホのスピーカーには強力な磁石を使っていますので、間に磁気遮断材があるかどうかなども選ぶ際の参考にしましょう。
山西:ケース選びのポイントを、あらためてまとめます。
■ケース選びのポイントまとめ
・ケースとスマホとの隙間があり緩いものは避ける。
・衝撃の観点からは、全面を覆う手帳型が望ましい。
・背面タイプはフィルムや保護ガラス込みで画面が出っ張らない高さのケースを選ぶ。
・ケースの素材やフィルムの形状など、電波やタッチパネルやセンサーへの干渉に注意。
・カードを差し込めるタイプはスマホ内の磁気の干渉に注意。
スマホはできるだけケースで保護しよう
スマホの画面割れは誰にでも起こる危険性があるが、スマホケースを付けておけば、その衝撃は軽減できることがわかった。リスクを最小限に抑えるためにも、記事を参考に日頃から対策しておこう。
文:TIME&SPACE編集部