2020/03/13

フル充電できないのは不具合? スマホ電池の劣化を防ぐ充電ケア機能とは

スマートフォンのバッテリー劣化を防ぐため、iPhoneや一部のAndroidスマホには「充電を途中で止めることでバッテリーの劣化を防ぐ」という電池ケア機能が追加されている。バッテリーの劣化を抑える反面、充電が途中で止まることからメーカーや携帯会社のお客さま窓口に「フル充電できないが不具合ではないか」というお問い合わせも増えているため、この機能の正しい知識と共に、上手な付き合い方を解説する。

スマートフォンの充電イメージ

バッテリーの劣化を防ぐ充電とは

スマートフォンには、バッテリーの劣化を抑え、バッテリーの寿命を延ばす機能がある。たとえば、iPhoneの場合は80%までを充電し、残りの20%をゆっくり充電することで、バッテリーの劣化を抑える機能だ。同じような機能でも機種によって名称や詳細が異なるので、代表的な電池ケア機能をいくつか紹介しよう。

バッテリーの劣化を防ぐ充電機能一覧

iPhone(iOS 13以降):最適化されたバッテリー充電

iOS13以降に追加された機能で、iPhoneが毎日の充電の傾向を学習し、iPhoneがフル充電されたままの時間を極力短くして、バッテリーの劣化を軽減し、寿命を延ばしてくれる機能。ONにすると、80%以上の充電速度が遅くなるため、ずっと充電していてもフル充電にならないことがあるが、故障ではない。

この機能は、iOS 13対応のiPhoneを購入した時の初期設定でONになっている。また、利用しているiPhoneをiOS 13にアップデートすると自動的にONになるため、OSアップデート後に、いつも通りに充電をしてもフル充電にならず、不具合と勘違いしてしまうことがあるようだ。

iPhoneが機械学習で毎日の充電の傾向を把握し、ある程度長い時間、充電器に接続されるだろうと予測されるときにしか「最適化されたバッテリー充電」が働かないが、どうしても気になる人は、機能をOFFにしておこう。

■「最適化されたバッテリー充電」の設定方法
「設定」→「バッテリー」→「バッテリーの状態」→「最適化されたバッテリー充電」でON/OFFを切り替え

iPhoneにおける最適化された充電バッテリーの設定画面

設定ONの場合でも、ロック画面に「iPhoneがいつフル充電されるかを知らせる通知」の表示があれば、長押しして「今すぐ充電」をタップすると80%以上の充電を開始できる。自分の利用用途にあわせてうまく利用すると良い。

Xperia 1など:いたわり充電

長時間充電している時間帯など、充電の習慣を学習して充電速度を調整し、バッテリーの性能をより良い状態に保ち、寿命を延ばすための機能。90%までは通常の充電と同じ速度で充電し、90%以上は満充電目標時刻まで充電を止め、目標時刻が近づくとその時刻までに満充電になるよう充電を再開する。

設定には「自動設定」と「手動設定」があり、習慣的に充電器に長く接続している時間帯を見つけ充電器が外される時刻を予測する「自動設定」か、自分で満充電の時刻を設定する「手動設定」を選ぶことができる。

■「いたわり充電」の設定方法(Xperia 1の例)
「設定」→「バッテリー」→「いたわり充電」右上ボタンでON/OFFを切り替え

Xperiaシリーズにおけるいたわり充電の設定方法

TORQUE G04など:バッテリーケアモード

バッテリーの劣化を防ぐために、充電を85%で止める機能。ONにすると、電池アイコンにハートマークが表示される。86%以上の状態では一回85%に減るまで充電されなくなり、常に85%が充電上限となるが、そのぶんバッテリーへの負荷が少なく長期利用できる。

■「バッテリーケアモード」の設定方法(TORQUE G04の例)
「設定」→「電池」→「バッテリーケアモード」でON/OFFを切り替え

TORQUE G04 バッテリーケアモードの設定方法

リチウムイオン電池の劣化要因は?

ここでリチウム電池についておさらいしておこう。スマホのバッテリーであるリチウムイオン電池は消耗品で、使えば使うほど電池性能が劣化し、新品時と比較して電池持ちが悪くなってしまう。主な「劣化要因」と「劣化を加速させる要因」は以下のとおりだ。

■劣化要因
・サイクル劣化
 充電回数により劣化する。
・保存劣化
 電池残量が少ない状態やフル充電状態で放置すると劣化する。
 継続的な「電池残量20%以下の状態」と「80%以上の状態」を避けることが望ましい。

■劣化加速要因
・高温、低温時の利用
 主に5℃以下もしくは35℃以上となる高温状態での使用が劣化の原因となる。

バッテリーの劣化要因と劣化加速要因  

このように、バッテリーの劣化を防ぐには、劣化要因と加速要因を避けることが望ましい。バッテリーの劣化を防ぐポイントは3つだ。

①不要な繰り返し充電をしない(サイクル劣化を防ぐ)
②電池残量が少ない状態やフル充電状態を長期維持させない(保存劣化を防ぐ)
③高温・低温時の利用を避ける(温度による加速要因を防ぐ)

このうち、②の保存劣化を防ぐため、電池ケア機能が搭載され始めたというわけだ。

バッテリーを長持ちさせる充電を

スマホが生活必需品になりつつある今、できるだけ長く使うためにも、バッテリーの劣化を防ぐ充電ケア機能は非常にありがたい機能だ。ただし常にフル充電しておきたい人にとっては、知らずにアップデートすることで不具合と勘違いする可能性もある。

電池劣化のリスクを知った上でも常にフル充電したい人は充電ケア機能のONとOFFを使い分け、少しでも劣化を防ぎたい人はONにしておくなど、機能を正しく理解し、自分の状況に合わせてうまく使いこなしてほしい。




文:TIME&SPACE編集部