2019/03/12
災害時に役立つスマホ充電器は? 防災アドバイザーに聞くモバイルバッテリーの選び方
突然襲ってくる災害。被災状況や避難情報を把握するほか、自分や家族の安否確認など、スマホやケータイは、有事の際に欠かせないツールとなる。そんな災害時にスマホを充電する備えとして用意しておきたいアイテムが、モバイルバッテリーをはじめとする充電ツールだ。
しかし、ひと口に充電ツールといっても、小型タイプやソーラータイプなど、さまざまな種類がある。ワイヤレス充電などバッテリー自体も進化しているなか、最新情報を踏まえながら災害時に役立つモバイルバッテリーの選び方、備え方について防災アドバイザーの高荷智也氏にお話を伺った。
理想はスマホ用のモバイルバッテリーを持ち歩くこと
いざという時のために備えていても、実際災害が起きたときに「使い方がわからない」「思ったような性能が出ない」ということは避けたいところ。
モバイルバッテリーにおいても然りで、「普段から使用して、持ち歩けること」が充電ツール選びの重要なポイントになると高荷氏は言う。
「容量10,000mAhまでのモバイルバッテリーならば、小さく軽量なものも増えているので、男女問わずカバンに入れておくことができます。ポイントは、常に持ち歩けること。いざというときに持ってなければ意味がないので、携帯する習慣と日常的に充電することを心がけておきましょう」
高荷氏のおすすめは、普段使いのモバイルバッテリーとはもう1つ別に、不測の事態が起きた時用に常備しておくことだという。ただし、バッテリーは1カ月ごとに5~10%ずつ放電してしまうので、3カ月に一度は欠かさずメンテナンスしたいとのこと。
「モバイルバッテリーの利点は、災害発生後に家族と連絡を取ったり、SNSや動画で情報収集をしたり、あるいはスマホを懐中電灯代わりに使ったりするなど、常にスマホを使用しながら片手で携行できることです。他の充電ツールと比べて比較的急速で充電できることも、災害時に適した充電ツールと言えます」
災害時にも入手しやすい乾電池式充電器
乾電池式充電器も、災害時に使い勝手がよいと高荷氏。
「乾電池を交換すれば継続して利用できるため、停電が長期化した場合や、避難所など電源(コンセント)を得づらい場所では特に役立ちます。また、乾電池自体は小さく保存場所も取らないため家や職場にストックしておきやすく、充電器とともに長期保存が可能です。充電式のモバイルバッテリーと併せて備蓄しておくことをおすすめします」
乾電池は、ラジオや懐中電灯など、充電器以外の防災グッズに使えることも大きなポイントになる。
「通常時ならばコンビニや100円ショップでも手に入ります。4本100円の激安電池でも半分程度までは充電できます。また、支援物資として乾電池が供給されるケースもあります」
「ただし、モバイルバッテリーや乾電池式充電器は、雨天時や水のかかる場所での利用を想定していないものも多く、防水・防塵機能を備えていない製品があります。避難時に袋に入れるなど、水や埃を防ぐ手段も考えておきましょう」
“在宅避難”で使える「大容量ポータブル電源」
少し大型になるが、10万mAhほどの「大容量ポータブル電源」も“備える”観点では有用だと高荷さん。このタイプの製品ラインナップは、キャンプなどにも使える3㎏クラスから6㎏クラスまでと幅広い。
サイズ:高さ224×横100×厚さ100 mm/重量:2.8kg)
「大容量ポータブル電源のメリットは、家庭で使っている100Vの家電(AC出力)が使えること。スマホならば30回ほども充電でき、ノートパソコンも充電できます。基本的に防水・防塵と耐久性に優れたものが多く、また停電時に自宅で避難生活を行う“在宅避難”の際にも有用な電源です」
普段はクルマに積んでおいて、キャンプなどの際に活用しながら災害用としても備えておく、といった使い方をしている人が多いという。
バッテリー以外にあると便利な機器「小型の電源タップ」
災害時には、電源タップやUSBタップを持っていると役立つという。たとえば、多くの人が集まる避難所ではコンセントが不足しがちだ。その問題を解決してくれるアイテムが電源タップ。なかでも、ACコンセントとUSB端子の両方が使える一体型タップがおすすめとのこと。
「単体での充電機能はありませんが、電源タップはぜひ用意しておくといいでしょう。避難所に設置された発電機には、スマホを充電するために人が殺到します。そんなときに電源タップがあれば、ひとつのコンセントから複数台のスマホを同時に給電できます。ACコンセントだけのタイプもありますが、こちらのようにUSB端子対応の電源タップであれば、ケーブルを差し込むだけで充電できるため便利です」
電源タップは災害時のみならず、カフェや会議室、新幹線内といったひとつのコンセントを複数でシェアするときなど、普段使いでも重宝するアイテム。ぜひ常備しておきたい。
ソーラー充電や自力で発電するタイプは、あくまで補助として
充電ツールには、ソーラーパネルが装備されたタイプや、手回し発電(ダイナモ)式など、その場で電力をつくるタイプのものに目がいきがちだが、高荷氏によると「あくまで補助ツール」として考えておいた方がいいようだ。
「手回し発電(ダイナモ)式は、手回しの動作で体力を消耗しますし、発電時に騒音も出ます。発電効率も低く、なかなか満充電することはできないので、災害時にこれひとつだけで過ごすという考えはあまり現実的ではありません。ほかに充電方法が見つからないようなケースで使うツールと捉え、防災用品と一緒に入れておくことをおすすめします。
また、ソーラーパネルは中型の折りたたみ式4面サイズ、もしくは折りたたみ型でA4数ページ分の面積が得られるサイズで、晴天時であれば1時間でスマホ(3,000mAh)を15%程度充電できます。手回し発電式と同じく、メイン電源と考えるのではなく、あくまでも災害が長期化した場合の保険という位置づけが適切だと考えてください」
購入後は、手回しタイプの場合は何回・何分間回せばどの程度充電されるか、ソーラーパネルは直射日光でどの程度充電されるかなどを日頃から検証しておくことも大切だと高荷氏は語る。
災害に備えて準備することが大切
災害時、通信インフラの要になるスマホ。いざというときに困らないためにも、スマホ充電ツールは備えておくべきアイテム。今回紹介した充電ツールのそれぞれの特性を知り、来たるべき災害に対して自分がどんな充電ツールを備えておくべきかを把握したうえで役立ててほしい。
■6大充電ツールの特性
文:松田政紀(アート・サプライ)
取材協力:高荷智也(ソナエルワークス)
高荷智也(たかに ともや)
ソナエルワークス代表。備え・防災アドバイザー、BCP策定アドバイザー。家庭の防災から企業のリスク管理まで、「備え」をテーマに講演会・執筆・テレビ出演・コンサルティングなど、専門家サービスを提供するフリーのアドバイザー。
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