2018/11/30

紅葉の写真をスマホでかわいく撮影するには? インスタ映えを叶える4つのテクニック

秋といえば紅葉のシーズン。

紅葉といえば有名な景勝地は数あれど、街路樹や公園、散歩道など、街を歩けばどこにでも存在している。赤や黄色に彩られた木々や葉っぱは、春の桜についで、日本の美を代表するフォトジェニックなものだ。

とはいえ、紅葉とはつまり「木や葉っぱ」である。普通に撮影しただけでは素っ気なくなってしまい、なかなか「いい感じ」に撮影できない手強い被写体でもある。

そこで、Instagramでも人気の女性フォトグラファーに、「いい感じに紅葉を撮るテクニック」というお題で、iPhone、Androidに関係なく、スマホで紅葉を撮影するうえでのコツやテクニックを教えてもらった。

紅葉の写真

紅葉を撮るときのポイントとは?

今回、紅葉の撮影方法を伺ったのは、写真家であり、Instagramでもフォロワーが13,000人以上という石野千尋さん。

まず石野さんに、SNSなどの写真投稿で「いいね」がもらいやすい、きれいでかわいい紅葉写真の撮影テクニックについて4つのポイントをあげてもらった。

①画角は「正方形」で撮影する
「SNSは、投稿する写真の横幅が決められているので、横位置(横長)で写真を撮ると、そのぶん表示される写真が小さくなってしまいます。SNSに投稿する場合は正方形で撮影するのが鉄則です」

■Android(GALAXY)場合
カメラアプリ起動>「設定」ボタン>カメラ設定(リアカメラ)>画像サイズ>1.1(9.1M)を選択

■iPhone場合
カメラアプリ起動>「スクエア」を選択

大ちゃん比較写真

②「紅葉そのもの」だけの撮影にならないようにする
「紅葉で知られる景勝地なら、記念写真として全景を撮影するのもいいと思います。ただ、そうした写真は既視感があって、つまらない写真になりがちです。SNSに投稿する場合、撮影するときに自身の手や足など、体の一部を入れてみたり、大胆に空を映したりと、少し構図に変化をつけると印象的な1枚になります

青空と紅葉

③ちょこっとだけ演出を加える
「自然のまま、ありのままを撮ることも大事ですが、『もう少し落ち葉がきれいに並んでいたら、もっといい感じになるんだけど……』ということもあります。そんなときは少しだけ『演出』を加えてみましょう。ちょこっとだけ葉っぱを揃えるだけでも、グッと見栄えがよくなることも。もちろん自然を傷つけたり、迷惑をかける行為はご法度ですよ」

地面の上の落ち葉

左が撮影前、右が落ち葉をレイアウトした事例。“ちょっとした演出”で落ち葉の写真が作品へと変わる。

④直感の赴くまま、とにかく撮る!しかし、できる限りの事を撮影時にする。
「『いま撮りたい!』というときに、サッと撮影できるのがスマホカメラのいいところ。偶然見つけたシャッターチャンスは逃さず、どんなときもピントだけはしっかり固定して撮影するのがおすすめです。彩度や明るさなどは後からでも調整できますが、とにかくピントをきちんと写したい被写体に合わせることだけを忘れないようにしましょう」

紅葉写真の加工例

左がiPhoneで撮ったままの写真だが、少々のっぺりした印象。右はiPhoneの写真アプリで「コントラスト」を強くしたもの。撮影後でも、明暗のはっきりとした、立体感のある写真に変身できる。

プロがオススメする、紅葉撮影のシチュエーションとは?

紅葉を撮影する際の基本的なポイントはわかった。問題は「じゃあ、具体的にはどんな場所で撮ればいいの?」。ここからは石野さんの作例を見ながら、紅葉の撮影にぴったりなシチュエーションを紹介していこう!

■紅葉の葉と空
晴天の日、街中の街路樹や人だかりのある公園で見つけた紅葉の撮影。人の映り込みや街並みが邪魔をしてしまう場合も多い。そんなときに、使えるテクニックがこちら。

【プロの作例】
落ち葉を手で持ってかざす

手で持った紅葉の葉っぱを壁や空にかざして撮影

「かわいい色や形の落ち葉を見つけたら、ぜひ手で持って、空やまわりの景色で合う場所はないか色々と探しましょう。青空を背景にしたり、木漏れ日を探してみたり、ただ木のシルエットを背景にするのではなく、思いっきり背景も一緒に主役になれるような場所を狙ってみます。その際はいつもよりも一歩引いて、大きめに背景を画角の中に取り入れてみましょう」

【担当編集が撮影した残念な作例】
紅葉が周囲の建造物と相殺

紅葉と建物と青空

街中の街路樹などの撮影では、どうしても紅葉だけを撮影するのは難しい。紅葉は写っているものの、なにを撮りたいのかが不明確で、構図として少々散らかってしまっている例。

■水辺の紅葉を撮る
水辺と紅葉。まさにシャッターをつい押したくなる光景。ただし、水面が鏡面のようになって映り込む紅葉というのは誰もが撮りたいと思うが、素人にとっては非常にハードルが高いもの。そんなときは、思い切って水中に落ちた紅葉に目を向けると面白い発見ができる。

【プロの作例】
水中にある落ち葉を撮る

水中の紅葉

「せっかく紅葉を撮りに行ったのに雨だった……なんてこともあるかもしれません。でも、雨は雨で写真映えするポイントがあるんです。この日は水たまりの中に、色とりどりの葉がまるで閉じ込められたかのように沈んでいました。そこに映り込む木の影も気に入って撮影してみました」

【担当編集が撮影した残念な作例】
狙いは惜しいが、いまひとつ

川の上を走る高速道路と紅葉

同じく「水面を利用した撮影」。現代的な構造物と紅葉のコントラストを狙った大胆な構図を狙う意図は感じられるが、紅葉の映り込みも中途半端で、なんというか……雑な写真に。

■構図いっぱいに広がる紅葉を撮る

【プロの作例】
空の青みを背景に大胆な構図で撮る

青空と紅葉

「この写真では、画面いっぱいに紅葉を入れると同時に、いくつかの色や木の重なりも表現したいなと思って、頭の上にスマホをかざし、その場でぐるぐると一周回りながら撮影しました。枝の入り方をなるべく少なくし、葉っぱのシルエットの美しさを生かせるようなベストポジションを探しました。少しだけ空抜けをつくるのがポイントです。撮影する際に、自分がちょっと動くだけで全然違う表情が見えてくるのも、紅葉の撮影の楽しいポイントですよ!」

【担当編集が撮影した残念な作例】
「あ、紅葉きれい!」だけで撮るとこうなります

紅葉と青空

眼前にあるがままを撮影した例がこちら。手前と、後ろの葉の色味のコントラストも悪く、美しい紅葉が生きてこない。

■落ち葉を撮る
地面に落ちた色とりどりの落ち葉を撮影するというのは面白い視点。そこにもうひとつ、撮影者のエッセンスを取り入れることで“ストーリー性”まで感じられる写真になる。

【プロの作例】
落ち葉に自分の足を入れてみる

自身の足元と落ち葉

「落ち葉だけでなく、その日の洋服や靴も一緒に撮ってみましょう。ランニング中に見かけた光景や、犬の散歩で行った公園なども、自分の足元をちょっと写すだけで、なんとなくシチュエーションが想像できる写真になります。そういった写真というのは、後から見返しても楽しいもの。とはいえ、あくまでも主役は紅葉なので、自身の足元はポツンと控えめに。思い切って9割紅葉という構図で撮影してみましょう」

【担当編集が撮影した残念な作例】
ただのもの悲しい写真に

落ち葉

路面に落ちた落ち葉を撮った1枚。もの悲しい秋の季節感は出ているものの……何かが足りない。

■大胆に
公園の木製ベンチと落ち葉はベストマッチな好素材。木製ベンチの風合いを生かして、色とりどりの紅葉やイチョウを組み合わせるだけで季節をいっぺんに取り込められるベストショットに。

【プロの作例】
色とりどりの落ち葉を大胆に

ベンチの上に並べられた紅葉

落ち葉とベンチの相性は抜群! もともと、ベンチの上に落ちていた葉っぱたちを少し集めて、並べて撮影してみました。撮影する範囲だけでなく、落ち葉をひとまわり大きめに配置し、そのなかでうまくポジションを探して撮影すると、奥への広がりやつながりを感じられる写真になるので、ただ並べただけの写真よりぐっと印象が強くなります」

【担当編集が撮影した残念な作例】
意図は感じるが、インパクトがない

ベンチと落ち葉

色とりどりの落ち葉をレイアウトしたところまではいいのだが、肝心な落ち葉が脇役になってしまっている。最近のスマホはかなり被写体に寄った写真を撮ってもボケないので、こういう場合はググッと近づいて撮影してみよう。

■光で遊んでみる
スマホの写真では画面タッチだけで簡単に露出を変えることができて便利。たとえば、頭上にある紅葉の撮影では、空に露出を合わせてしまうと、枝や葉はシルエットのように暗くなってしまう。そんなときはいっそのこと、葉っぱに露出を合わせるとカラフルな撮影ができることも。

【プロの作例】

木を露出を調整して撮影

「同じ被写体でも、明るさの違いで、写真の雰囲気は全然違うものになります。影だけで紅葉の美しさを表現したい場合は、暗めにシルエットを際立たせるようにしましょう。葉の形がまるで模様のように、幻想的に写ります。逆に明るめの写真では、光がふんわりと差し込んだようなやさしい写真にすることができます。紅葉の色もかわいらしく、葉の透け感もしっかりと写るはず。明るさを変えるだけでこんなに写真の雰囲気に差が出ます。

ちょっと暗めにしたり、明るめにしたり、露出で遊んでみると、思いがけない写真になったりしてまた楽しいんです」

ベストショットは足で稼ごう

こういったテクニックを使えば、近場の街路樹や公園などでも工夫次第で素敵な紅葉の写真を撮影できそう。

「スマホがあれば今は誰でも写真が簡単に撮れるようになりました。撮影時に少し気をつかったり、今回のようなポイントをおさえるだけで、今までよりも楽しく被写体と向き合えるはずです。どう撮ればいいかわからない方は、たくさん撮っていくうちに自分の好きなテイストや撮り方などもわかってくると思うので、毎日何気なく見ている景色から撮り始めてみて下さいね!」と石野さん。

紅葉がますます色鮮やかになっているこの時期。プロのテクニックを参考にして、スマホできれいにかわいく紅葉を撮影してみてはいかがだろう。

文:よもぎ三太郎

石野千尋

1983年生まれ。東京工芸大学芸術学部卒業後、渡英。ロンドン芸術大学にて写真とグラフィックを学ぶ。在学中より仕事を始め、色と光を大切に、世界中を飛びまわりながら日々写真を撮り続けている。

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