2018/09/11
なぜシャッター音が必須? 外国人から見た日本人のスマホ文化【スウェーデン編】
2020年のビッグイベントを控え、海外からの観光客や日本への移住者も増えている日本。街でも外国人がイヤホン通話をしながら歩いている姿をよく見かけるようになった。
そんな外国人から見ると日本人のスマホの使い方は独特に見えることも多いとか。スマホにも国民性が出るのであれば、その違いを明らかにすることで文化交流のネタにもなるかもしれない。ということで世界各国の方から日本のスマホ文化のちょっと変なところを聞いてみるこの企画、第1弾はスウェーデン大使館だ。
今回訪れたのは、テクノロジー大国・スウェーデン大使館
今回、訪れたのは、テクノロジー産業で世界の先端を走り、モバイル分野ではエリクソン社でおなじみのスウェーデン大使館だ。人口は1,000万人ほどだが、積極的に技術革新とグローバル展開を行い、カジュアル衣料のH&M、家具の大手ブランド・イケアなど、世界的企業を次々と輩出している。産業界をリードしている彼らの目に、日本のスマホ文化はどのように見えているのだろうか?
日本人は声が小さい? カメラのシャッター音が気になる?
話をうかがったのは、スウェーデン大使館の一等書記官・ヨハネスさん。率直に言って、日本のスマホ文化で変だと思ったことはあるだろうか。
「奇妙だと思ったことはありません。でも、文化が違うんだなと思ったことはありますね。というのも、日本人のみなさんはとても静かに電話をします。まったく大声で話したりしないんです。それに比べると、時々スウェーデン人はうるさいぐらいの大声で喋ることがありますよ(笑)」
気にしたことはなかったが、日本人は公共の場でのマナーに厳しく、口元を押さえて話す人も多い。そんな姿が違和感を覚える所以かも。それ以外で日本とスウェーデンで違うことは?
「目立った違いは、スマホ撮影時の音です。日本では写真を撮るとき、すべてのスマートフォンから“パシャ”という音が鳴りますよね。これはひとつの発見でしたね」
ヨハネスさんがこう語るのは、無理もない。じつは海外のほとんどのスマホは、スイッチでシャッター音のオンオフを切り替えることができるからだ。一方、日本では痴漢による迷惑防止条例違反の問題もあり、通信事業者たちの自主規制によって携帯電話のシャッター音は必ず鳴る仕様になっている。ちなみに、日本と同じくシャッター音を規制している国には韓国があり、2004年にカメラ付き携帯電話は65デシベル以上のシャッター音を出すように義務付けられている。
電子決済の普及に違い。日本人はスマホ決済が苦手?
そして、もうひとつ、ヨハネスさんが挙げてくれた日本とスウェーデンの違いは「電子決済」だ。
「他の国でもよく感じることですが、日本でショッピングやモバイルペイメントにスマホを使っていないことに驚きます」
経済産業省の発表資料「キャッシュレス・ビジョン」によると、2015年時点での日本のキャッシュレス決済比率は18%、対してスウェーデンは48%に上る。もともとスウェーデンでは、犯罪対策としてキャッシュレス決済が普及していたが、あるアプリの登場で、モバイルペイメントが一層加速したのだ。そのアプリとは、ヨハネスさんのスマホにもダウンロードされていた、スウェーデン発の決済アプリ「Swish」だ。
Swishは2012年末に登場した、個人間送金サービスを提供するアプリ。2014年には企業への支払いを、2017年にはECでの支払いにも活用できるようになっており、2017年10月時点でスウェーデンのSwish利用者は597万人、総人口の約60%が利用している。なお、スウェーデンでは「現金拒否」をする実店舗もあるそう。モバイル決済どころか、クレジット決済が断られる店舗も多い日本と比べると、こんなに違うとは驚きだ。
世界的ヒットの多いスウェーデン発のアプリ
ちなみにスウェーデンで流行っているアプリは何なのだろう。
「統計的に最も人気があるアプリは何なのか、私にはわかりません。でも、多くの人々はスウェーデンの企業のアプリを使用していますよ。Skype、Spotify、Candy Crush、Minecraftなど、人気の高いアプリをリリースしている“ユニコーン(企業)”が多くありますからね」
“ユニコーン”とは、企業価値が10億ドル以上の企業のこと。いまや仕事で欠かせない「Skype」、サブスクリプションサービス界の黒船「Spotify」、シリーズ累計で30億ダウンロードを誇るパズルゲーム「Candy Crush」、そしてシリーズ累計販売本数1.5億本に迫る「Minecraft」と、世界的ヒットを飛ばすサービスばかりだ。スウェーデン人が自国のアプリを愛するのも頷ける。
「私自身がよく使っているのは、インスタグラム、Whatsapp、Spotify、ときどきSkypeも使いますね。あとはKakaotalk、Line、それからSwishです。日本で見つけたお気に入りのアプリは『ぐるなび』。素晴らしい日本食レストランが見つかりますからね」
ここまで話を聞いていくと、テクノロジー大国であるスウェーデンではさぞ昔からスマホが普及していたと思いきや、そんなことはなかったらしい。
「2010年、初めて外交員としてインドネシアのジャカルタに赴任したのですが、その時はほんの数人の友人がスマートフォンを持っているだけでした。人々は仕事の途中や地下鉄で、紙の新聞を読んでいましたし。けれど、数年後にジャカルタから戻ったら、誰もが公共交通機関でスマホを見ていましたね。いまやスウェーデンのスマホ普及率は83%に上ります。私も含めて、スマホをトイレに持っていくほど身近になっていますね(笑)」
10年で一気に普及したことは同じとはいえ、シャッター音、モバイル決済など、日本とスウェーデンのスマホカルチャーの違いがわかった今回の取材。ほかの国も見ていくと、もっと日本と海外の差がわかっていきそうだ。次回以降の取材で、さらに外国と日本の違いを深掘りしていこう。
取材・文:芋川 健
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