2018/08/01

「充電繰り返すとスマホ電池は劣化」は都市伝説? バッテリー寿命を延ばすコツ

100%信じてるというわけでもないけど、なんとなく納得している、そんな微妙なスマホにまつわる「ウワサ」。それらの疑問を専門家にぶつけ、真実なのか、偽りなのかを検証していくシリーズ企画第二弾。今回は「充電を繰り返していると電池は劣化する」という説。……確かにこの話はよく聞きます。

実際のところ、充電行為は電池の持ちに影響あるのでしょうか。だとしたらその回数は? バッテリーが長持ちする「充電のやり方」はある?

今回もKDDIの「電池先生」こと、プロダクト品質管理部の新保恭一に真相を聞いてみました。

電池先生こと新保恭一 電池先生こと新保恭一。KDDI 商品企画本部 プロダクト品質管理部 CS推進グループ 課長補佐。モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)モバイル充電WG 主査も勤める

スマホの電池に寿命はあるのか?

――今回は「充電を繰り返すとスマホの電池は劣化する?」です。

新保「そうですね、残念ながら劣化します。電池は消耗品なので、充電するたびに寿命が短くなることは避けられません。」

――どうして充電を繰り返すと寿命が短くなってしまうんですか。

新保「スマートフォンにはリチウムイオン電池(以下、電池)が使われています。電池が劣化する要因としては、

①充電と放電を繰り返すことで劣化する「サイクル劣化」
②電池を満充電や電池切れ状態(その付近も含む)で放置することで劣化する「保存劣化」
③共通的に電池劣化を加速させる要因として「高温環境」

の3つが代表例。

たとえば、サイクル劣化であれば、充電や放電をするごとに、電池内部の材料が化学変化することで、電気を流す役割のイオンが減ってしまいます。これにより電気を貯める力が弱まってくるのです。

あくまで私の見解となりますが、電池劣化の要因関係は以下のようになります。」

電池劣化の要因関係

――新品のスマホを購入した場合、何回くらい充電できるものなんですか。

新保「近年、電池の性能は上がっていますが、現在スマートフォンで多く使われている電池のメーカー保証サイクルは一般的に約500サイクル程度のものが多いです。1サイクルの定義はエンジニアにより見解が異なりますが、電池切れから満充電まで充電して1サイクルとする見解が多いです。但し、私の経験上では「継ぎ足し充電」というか、電池切れ状態や満充電に関わらず充電を繰り返すことも電池劣化に影響すると考えています。毎日1回充電すると2年以内に劣化してしまう計算ですが、500サイクル後の電池劣化具合は製品毎に異なるものの、一般的には日常の使用が難しくなるほどの劣化具合ではないので、実用上の電池寿命については、もう少し長くなると思います。」

――寿命が近づいたことは、どうすればわかりますか。

新保「外見から判断するのは難しいですが、満充電して1日使えていたものが、数時間のうちにみるみるバッテリーが減ってしまう症状が出始めたら寿命が近いと考えてもらうといいでしょう。」

なぜ電池が膨張するの?

――スマホが登場する前、ケータイのバッテリーが膨らんでしまうなんてことがありましたね。あれは「サイクル劣化」が原因だったんですか?

新保「電池が膨らむ原因は「サイクル劣化」とは違いますが、サイクル数や高温といったプロセスは同様に影響します。原因ですが、電池を利用することでバッテリー内部に不純物が体積したり、電解質がガス化することで膨らんでいるのです。リチウムイオン電池の特有の問題ですが、現在のスマートフォンに多く使われているリチウムポリマー電池では電池が膨らむ事象はかなり解消されてきているのです。」

リチウムイオン電池の構造 リチウムイオン電池の構造

――バッテリーが膨らみにくくなった理由は?

新保「バッテリーのなかにある電解質は、リチウムイオン電池が液体だったのに対し、リチウムポリマー電池は固体に近いゲル状の電解質となっています。物質の特性上、液体よりゲル状の方がガス化を防止することができるので、膨張抑制につながっています。

なお、リチウムポリマー電池は、電解質がゲル状という特徴はありますが、電池のカテゴリとしてはリチウムイオン電池です。」

リチウムポリマー電池 リチウムポリマー電池

――ほかにも電池が劣化する要因はありますか?

新保「充電しながら使うことですね。充電しながらスマホを使うシチュエーションで多いのはゲームだと思います。ゲームはモノにもよりますが、スマホが頑張ってグラフィック処理等をするので負荷が大きいのです。たとえば、ゲームをしながら充電するとスマホ本体が通常より熱くなることがありますが、高温は電池内部の劣化を促進してしまいます。」

――高温だと電池にどんな影響が出るのですか。

新保「サイクル劣化で説明したリチウムイオンの減少を促進してしまうのです。特に、高温環境での「充電」はさらにリチウムイオンの減少を促進してしまいます。」

バッテリー寿命を延ばす使い方

――それでは、スマホのバッテリー寿命を延ばすには、単純に充電回数を減らすしかないのでしょうか?

新保「電池は消耗品ですので、必要な充電回数を減らすことより不必要な充電をしないように気を付けたり、正しい充電器を使用することがポイントになります。

たとえば、先に話したように電池が少し減るたびに充電をすると電池劣化に影響すると考えますが、満充電後に電池切れ直前まで利用して充電すれば充電回数を抑えることができます。

また、正しい充電器を利用していればスマートフォンにも電池にも負担は少ないですが、品質が悪い充電器を利用すると電気的に不安定な状況で電気が供給されるため、スマートフォンや電池が高温となったり負担が大きくなったりします

また、サイクル劣化だけでなく保存劣化の対策もあります。長期間保管したりする場合は、電池切れ状態や満充電状態を避けて、電池を半分くらい充電して保管するのが良いです。

最近のスマートフォンには「電池劣化防止機能」を搭載した機種もあり、電池劣化を防止できます(電池は消耗品ですので、電池劣化を完全に防止できるわけではありません)。なお、電池劣化防止機能は「満充電にさせない機能」であったり、「高温環境で充電を停止する機能」であることも多いので、この場合は「充電しても100%満充電にならない」ように見えますが故障ではありません。」

――正しい充電器とは?

新保「電池目線で見ると、電池に対する最適な充電器はスマートフォンとなります。スマートフォンは外部の充電器から電力を供給します。正確にいいますと、外部の充電器から電圧をかけてもらい、スマートフォンの動作や充電に必要な電流を引き込みます。電池は最大充電電圧が決まっており、外部の充電器の電圧を電池に最適な電圧にコントロールしているのはスマートフォンの内部回路であり、外部の充電器はスマートフォンに正しく電圧をかける必要があります。」

――電圧ですか……。電圧を考えるのは難しくないでしょうか。

新保「正しく充電する電圧コントロールは、正しい充電器を使うことががポイントになります。スマートフォンに付属している充電器や、auショップで購入できる正規な充電器を使うことがオススメです。正規な充電器は、安定した電圧で充電したり、各種の保護回路を搭載していたりと、スマートフォンや電池に優しい設計になっているのです。」

――たしかに、充電器は価格帯も幅がありますよね……。これから新たに購入するとき、選ぶ基準となることはありますか。

新保「「充電さえできればいい」って気持ちもわかりますが、長い目でみると「安全・安心な製品」を選んでいただきたいです。安全・安心な充電器を選ぶときの目安として「MCPCマーク」があります。これは「モバイル充電安全認証」といい、MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)が実施した規定の試験に合格した製品にだけ付いています。この安全認証ロゴがあれば、基準に適合しているので安心して使うことができます。」

充電器についている安心の印「MCPC」マーク 充電器についている安心の印「MCPC」マーク

――安全が保障されている「MCPCマーク」。今度チェックしてみます!

新保「「au +1 collection」「au標準オプション」では、「MCPCマーク」付の充電器を用意しているので安心して購入できますよ(笑)。」

ちなみに丁寧に使っていても、電池の寿命はくるもの。
電池交換できないタイプのスマホは、有償修理扱いとなるが、auショップで交換できる。たとえば、「auスマートパス」に加入していれば無償での交換も可能ということ。またiPhoneの場合は、「auスマートパスプレミアム」や「AppleCare+&au端末サポート」に加入していて条件を満たしていれば無償で交換できる。iPhone XやiPhone 8のバッテリーを有償で交換する場合は3,200円。ただ、古いスマホの場合は、部品保管や供給数の関係で少し高くなることがあるという。

「充電回数が増えるとスマホの電池は劣化する」は事実ということ。電池には寿命があることを知りつつ、今回紹介してもらった電池に優しい充電のタイミングや扱い方を理解しつつ、実践してみてはいかがでしょうか?

【今回の結論】
  • ・不必要な充電をしないようにして充電回数を減らす。
  • ・充電中はゲームや動画視聴などはしない。
  • ・スマートフォンに付属している充電器や、auショップで購入できる正規な充電器を使うことがオススメ。MCPCマークもチェック!

文:松田政紀(アート・サプライ)

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