2017/11/02

クルマがIoT化した未来にあるものは? 『東京モーターショー2017』を徹底レポート

ビバ、東京モーターショー! 華やかです! 10月25日のプレスデー初日には、各テレビ局のキャスターに見たことあるタレントさんいっぱい。世界のモータージャーナリストたちが「久しぶり〜(英語)」なんて声かけ合いながらハグ連発。ブースを彩るコンパニオンのおねえさんたちもゴージャスで。

左上から時計回りにハーレーダビッドソンのおねえさん、ファルケンのおねえさん、グッドイヤーのおねえさん、フォルクスワーゲンのおねえさん

注目したのは「繋がる」という技術

そんな東京モーターショーですが、今年打ち出されていたのが「電動化」「自動運転」「コネクティッドカー」といったキーワード。IT、IoTといった通信技術は、いまや東京モーターショーのホットトピックス。

「自動運転」を実践するには、クルマにAIを使った自動運転ソフトや精度の高い3次元デジタルマップを搭載してないといけないし、これらを働かせるには、そもそもインターネットを介してサーバーに繋がっている必要がある。「コネクティッドカー」はまさに言葉通り、クルマとクルマ、クルマと人がインターネットや電波を介して「繋がっている」。

そんなわけで今回TIME & SPACE編集部では、「通信とクルマの未来」に注目して東京モーターショーを見てきました。まずはKDDI。

KDDIの目指すIoT/ライフデザインの世界観

「通信とクルマの未来」を考えるうえで、通信会社は重要な役割を果たさねばなりません。というわけで、同じ会場で同時開催されている「TOKYO CONNECTED LAB 2017」にKDDIも出展。未来のモビリティ社会に、IoTを中心にどんなことをできるかを提案していました。

たとえば画像認識技術とIoT技術を掛け合わせたコネクティッドAR。ARカメラで対象を撮影すると、クラウドと連携してさまざまな情報が瞬時に提示される。この利点を生かせば、たとえば「スマホやタブレットをかざすだけ」でエンジンルームを点検できるようになる。

クルマのエンジンルームをタブレットのカメラでとらえると、画像認識し……

オイルの交換時期なんかがわからなくても、カー用品店などの持つ顧客データと連携し、どの箇所にどんなメインテナンスが必要かを瞬時に詳しく示してくれる。

クルマに詳しくなくてもショップが持つデータで適切な処置ができるようになれば、ドライバーはそのショップのリピーターになるかもしれない。ドライバーにとっては便利だし、ショップにとってはお客さんの情報を有効に活用できるシステムになるというわけだ。

こちらは今回、モーターショーでも大きくフィーチャーされていた「コネクティッドカー」に関する技術。クルマがインターネットとつながることで、たとえばスマホアプリを利用して、快適にカーシェアリングを利用できるようになる。そこでもコネクティッドARは役に立つことをミニチュアセットで展示。

アプリを起動し、クルマをカメラでとらえれば車種を認識、予約フォーマットが立ち上がる。決定すると……

マニュアルやら電子キーやらがダウンロードされ、エンジンスタート! いってっしゃ〜い。

こちらの展示は、KDDIが国内で実用化しているガラスディスプレイ。

通常のタブレットは人の発する静電気を感知するタッチセンシングシステムだ。だがこちらのガラスディスプレイは、中に入っているカメラが指の動きを読み取ることで、一度に複数の人が触れても感知し、二次元バーコードを読み取らせることもできる。

1枚の55インチガラスディスプレイには32機ものカメラが内蔵されている。写真はガラスディスプレイを3枚並べた状態で、最大32枚まで並べることができるという。どんなことができるのかと言うと……

とまぁ、いろいろなことができるわけです。コンテンツは用途に応じてカスタマイズ可なので、ディーラーなどのショップに設置してあったら、クルマのスペックとかを並行して表示して比較できて便利そうです。下はそんな想定のデモ展示。

そしてもちろん、クルマのほうもスゴかった。どれだけ「繋がる」を目指しているか、を中心に見ていきましょう。

ハッピーな道とアンハッピーな道をマッピング?

たとえばトヨタが発表したコンセプトカーは「TOYOTA Concept-愛i」シリーズ。ネーミングは、もっとみんなににクルマへの愛着を持ってもらいたいという思いと、「AI」をかけたネーミングだとか。

手前から日常的に使える「4輪モデル」、キックボードのように気軽に使える「歩行領域のモビリティ」、車椅子でも楽々使用できる「ユニバーサルな小型モビリティ」。

で、トヨタ独自の人工知能システム「YUI」をそれぞれに搭載していて、このコ、超気が利くのである。基本、音声認識で運転中にもドライバーをずっと車内カメラでモニターしている。で、表情や動作や声色から「ドライバーがどんな気持ちなのか」「調子はどうなのか」を推定してくれる。また会話内容とか検索された内容を覚えていて、最新ニュースや位置情報と連動、「おすすめの目的地」「近所のおすすめスポット」なども提案してくれるのだ。

ブースでは、実際に「YUI」がどんなふうに働くかを体験できました。その場で名前と運転スキル、週末の過ごし方などのデータを入力。「YUI」がそれに応じて、擬似ドライブを体験させてくれるという設定。

まず「YUI」はおすすめの目的地を提案してくれる。フロントガラスがディスプレイを兼ねていて、次々と情報が提示される。ちなみに筆者は「映画が趣味」と事前に知らせておいたので、『ザ・ロック』の舞台になったアルカトラズ刑務所を勧めてくれた。天気とか道路の混み具合を尋ねても、音声で返答。結局、行く先はダウンタウンを選んだ。基本、自動運転で目的地まで連れて行ってくれる。

でも途中、「気持ちいい道なので運転してみてはどうでしょう?」と「YUI」。ステアリングをまかさてくれたりもする。目的地に到着すると、ドライバーの感情の揺れ動きを記録して見せてくれる。

「YUI」はこうしてあらゆるドライバーの感情をサーバーに集めてマッピングするのだ。

たとえばこれはRodrickさんのドライビングコース。カリフォルニア州パロアルトからアルカトラズまでドライブした記録である。

コース中、ハッピーな感情が湧き起こった地点が緑色のグラフで表示される。

逆にアンハッピーな感情が湧き起こった地点はオレンジ色のグラフで。

結果、カリフォルニア州ではどのあたりがハッピーで、どのあたりがアンハッピーなのかという マップができあがる。

現行のカーナビに新たに「いかにハッピーか」という新しい価値観が加えられ、クルマに乗るのがより楽しくなり愛着がわく、そんな未来像がここにはある。

「TOYOTA Concept-愛i」シリーズは、一部の機能を搭載した車両で、2020年頃から日本での公道実証実験を開始する予定だ。

「繋がるクルマ」は、もはや未来の常識?

フォルクスワーゲンの「I.D. BUZZ」。名車ワーゲンバスを彷彿とさせるフォルムにニンマリしてる場合ではない。

まずダッシュボードに「なんにもない!」。フロントガラスにARが映し出される「ヘッドアップディスプレイ」になっていて、車内の音楽や空調はタブレットとタッチパネルで操作できるのだ。

そして「自動運転」。クラウドと常につながっていて、レーザースキャナーや超音波センサーで周囲の状況を感知するだけでなく、リアルタイムの交通情報なども取り入れて「完全自動運転」を目指しているという。運転席と助手席のシートは新幹線的にグイーンと180°回転。完全自動運転中、ドライバーは前さえ見る必要がないのだという。2022年には製品化を目指しているそう。

日産のコンセプトカー「IMx」は、AIとサーバーの連携に注目! 今年1月の「CES 2017」で発表された「シームレス オートノマス モビリティ(SAM)」など、コネクテッドカー技術の粋を結集したコンセプトカーなのだ。

クルマに任せてドライブができる「プロパイロットドライブモード(PDモード)」を選択すれば、ステアリングは格納され、シートがリクライニングするという完全自動運転の気合の入り方も素晴らしいけれど、その際に働く「SAM」が通信的にはグッとくる。

日産が提唱する「インテリジェントモビリティ」では、クルマが無人で迎えに来てくれたり、駐車スポットに行ったり充電したりする未来を思い描いているのだけれど、その際に人の力を借りてAIに知恵を与えるのが「SAM」だ。

無人自動走行中のクルマが予期せぬアクシデントに直面したら、AIが指令センターに連絡。「モビリティマネージャー」という「人」が状況を見て、遠隔で「迂回せよ」と指示を出す。その指示はクラウド経由で周辺を走るほかの無人運転車両も共有。人の状況判断をネットで共有し、AIのディープラーニングを促進するという、「自動」どころか「無人」のクルマが走る社会を見据えた技術なのだ。

三菱の『MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT』(左)も、ホンダの「Honda NeuV」(右)もAIと自動運転技術搭載。多くのセンサーで道路環境や交通状況を認識しつつ、ドライバーの表情や声の調子から安全運転のサポートを行い、ライフスタイルや嗜好を学習し、状況に応じた選択肢を提案してくれる。随時データはサーバーにアップされ、その精度はどんどん高まるという。

こういった通信機能はこれからのクルマのスタンダードになっていくのかもしれない。

スマートスピーカーとも連携。普通に音声認識。

ここで紹介したコンセプカーたちの多くは普通に音声認識。サーバーにつながっていて、話しかけたらクルマがさまざまなサポートをしてくれる未来を見せてくれる。

でも、“すごい未来のコンセプト”ではなく、間近に実現するものもあった。

三菱自動車では2018年からアメリカで「Google Home」と「Amazon Echo」という2つのAIアシスタントを経由して、自宅からコネクティッドカーを操作できるサービスを展開するという。家からAIアシスタントに話しかければ、クルマの温度設定とかドアロック・解除、ヘッドライトのONなどの操作が、スマホアプリからは車内温度を事前に暖かくしておいたりすることが可能だ。

またトヨタではLINEのAIアシスタント「Clova」と連携。展示されていた「プリウス」では、ステアリングの音声認識ボタンをタップすることで、話しかければ「LINE」メッセージを読み上げたり、好きな曲をかけてくれたりしてくれる。

実はこのトヨタ×LINEの展示が行われていたのは、東京モーターショーと同じ会場で同時開催されていた「TOKYO CONNECTED LAB 2017」。クルマが繋がることは未来をどう変えていくのか、どんな価値をもたらしてくれるのかを示すイベントだ。

クルマの未来はどっちだ?

日産・ルノーグループCEOのカルロス・ゴーン氏は、CES 2017の基調講演で「2025年にはすべてのクルマがインターネットに接続できる機能を備えることになる」と宣言。もちろん日産・ルノーのクルマだけでなく、「クルマ=IoT」という時代がすぐそこまで来ているのである。

こうなると、2020を目指して実用化が進められている「5G」ってものすごく重要になってきますよね? きっとクルマの発展は通信技術が支えてこそ! 通信の「高速・大容量」「多接続」「低遅延」化を可能にするこの新しい通信回線技術が、最新のIoTを現実のものとするというわけです。

便利で楽しいクルマの未来は、通信との連携あればこそ。これから訪れる未来のモビリティ社会において、通信の重要性は増していくということが実感できる東京モーターショー2017なのでした。

文:武田篤典
撮影:中田昌孝(STUH)

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