2016/02/10

すべての働くママ必見 KDDI研究所のママ社員が目指す『在宅勤務革命』とは?

ITの進歩や女性の社会進出によって、働き方にも多様性が生まれてきた。なかでも、「tele(離れた場所)」と「work(働く)」をかけあわせてできた「テレワーク」は、通信技術を用いた"時間や場所にとらわれない働き方"として注目を浴びている。本人が働く場所によって「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務など」の3種類に分けられ、日本の労働環境が抱えるさまざまな課題を解決できる施策として、現在、複数の企業で導入されている。

KDDI研究所の明堂絵美は、育休中に夫の長野県への転勤が決まったが、自社の「顔の見える」テレワークシステムにより職場へ復帰。現在、自ら映像と音声を職場と常時接続して業務するシステムのモニターとなり、テレワークの普及と利便性向上に向けた開発プロジェクトに携わっている。

「育児に追われているママが、テレワークを使って実際どんな風に働いているの?」。そんな疑問を解消すべく、T&S編集部員は一路、明堂が現在住んでいる長野県へ。この雪景色に染まった土地から、平日はテレワークを通じて仕事をこなすことで感じるメリットや課題、テレワークの今後の可能性について、話を聞いてきた。

夫の転勤。判断を迫られるなかで生まれた「新たな選択肢」

――まずはテレワークを始めることになったきっかけを教えてください。

「大きなきっかけとなったのは、夫の転勤でした。それまでは都内で共働きをしていたのですが、私が育児休暇に入っているあいだに、夫の長野県への転勤が決まりました。

子どもが生まれる前だったので、当時は『半別居でもどうにかなるかな』と考えていたのですが、実際に育児をしてみたら、ひとりではなかなか難しいことがわかって......。育児と家事、仕事の両立って簡単に言うけれど、本当に体力がいるんです。私にとっては、ハードルが高いものでした。

それでもう長野まで夫について行くしかないと思ったのですが、長野市周辺では技術職で働くことはむずかしいと思ったんです。だから当初はこれを機に退職することも考えていて

そこで上司と話をしているなかで、『じゃあテレワークのプロジェクトに入って、自分でモニターになりながら開発を進めてみたらどうだ』という提案をもらったのが、『顔の見える』テレワークを始めたきっかけなんです」

――KDDI研究所では、ほぼ前例がないなかでテレワークがスタートしたと聞いています。不安などはなかったのでしょうか?

「もちろん不安はありましたし、映像や音声の乱れとか、そうした細かなストレスが最初のうちは多かった。ただ私自身、学生時代から画像関係の研究をしていて、技術的にも興味がある分野でしたし、これから同じようにテレワークを経験する人たちの役に立てるなら、という想いがあったので、前向きにスタートすることができました。

また、周囲のサポートも手厚かったです。とくに研究所の所長をはじめとする上層部やグループリーダーが、今後の社会を見据えたうえでのテレワークの有用性・必要性について真剣に考えて検討していたので、テレワークを利用できる風土は整っていたように感じます。

同じグループの同僚にも、『頑張って』と応援してもらい、トラブル発生時の機材設定なども協力してもらっているので、その人たちがいなかったらこんなふうには働けていません。

もちろん遠隔ではできない仕事もありますが、チームプレイで仕事することを同僚に認めてもらっているからこそ、今まで働けていると実感しています」

職場の上司とテレワークで実際にコミュニケーションを取る明堂

明堂のパソコン画面から見た職場風景。俯瞰できる位置にカメラが取り付けられており、職場の雰囲気や同僚・上司の不在状況が常時確認できるようになっている

職場から見た明堂の映像。プライバシー保護の観点から、背景は自動的に職場の映像に差し替えられるように加工されている

常時接続されているので、わざわざマイクをオンにしなくても、常に会話ができる環境が整っている

――開発中の「顔の見える」テレワークシステムを使って得られたメリットなどがあれば教えてください。

「このシステムを使わないで数週間、在宅勤務をしたことがあるのですが、職場の様子がわからないため、依頼された仕事の背景をしっかり理解することができず、見当違いな資料を作ってしまったりしていました。あとは、仕事や職場の状況の変化がリアルタイムでわからなくて、無駄な仕事をしてしまうこともありました。

このシステムを使ってからは、職場と同等というわけではないですが、上司や同僚とのつながりを得られてコミュニケーションもかなりスムーズになったと思います。以前は、TV会議がなくて会社の誰とも話さない日が続くと、モチベーションが落ちることもありましたが、このシステムを使うとそのようなことがないですね。また、画面背景が職場の映像に差し替わるので、家庭の様子などが映りこまず安心できるし、職場にも気を使わせないで済むのはうれしいです」

――職場からは、「顔の見える」テレワークシステムについて評価する声は出ていますか?

「『モニターで接続されていると常に存在感があって、気軽に話しかけやすい』と言ってもらえています。上司も管理しやすいと感じている様子ですね」

テレワーク+時短勤務でこなす育児と仕事の両立

――いくら常時接続で職場とつながっているとはいえ、テレワークでできることも限られていると思います。どのようなスケジュールでお仕事をされているのでしょうか?

「週5日、自宅でテレワークの開発業務をしていて、埼玉県にある職場に行くのは月に1~2回程度。あとはすべて在宅勤務です。

今は、テレワーク実利用者としての視点、技術者としての視点の双方を大切にしながら、テレワークにおける課題抽出やその重要度付け、原因追究、解決策の提案・検証、周辺技術やサービス調査、特許作成、機能追加などを行っています。

たとえば『顔の見える』テレワークシステムでは、モニターによる否定的な意見の理由として『職場からの監視感』や『恥ずかしさ』を挙げる人が多かったので、その要因になりそうな項目を、ヒアリング・調査・考察により列挙しました。

映像の解像度、表示画面の大きさ、画面を置く方向、表示される顔の大きさ、会話者と画面の距離、ライティングなどが要因に挙げられたのですが、それらの最適値を求めるため、時間をかけずにパラメータの最適値や影響度を割り出せそうな実験方法も考案しました。

ただ、テレワークでは現場に行って実験することはできないため、実験手法の資料や記入シートをこちらで作成したあとは、チームのメンバーに実施を依頼しました。実験のデータを分析・考察し、資料にまとめて関係者に発表したあと、『顔の表示サイズ調節機能』の追加や『映される側が恥ずかしくなく、見る側が相手の表情を読み取れる程度の解像度設定』など、アプリにすぐに反映できる部分については機能追加しました」

――かなりしっかりと働かれている印象を受けましたが、テレワークで育児・家事と仕事の両立はしやすくなりましたか?

「今は時短勤務で1日6時間働いているのですが、私はテレワークがなかったら平日に自分の時間をつくれなかったと思います。

共働きのママというと『土日に料理の下ごしらえ、平日は早起きして夕食の支度まで済ます。会社に行ったらバリバリ働いて、子どもを保育園にお迎えに行き、帰ったらまた家事・育児。睡眠時間は毎日5時間!』といった超人的なワーキングマザーをイメージされる方もいると思います。ただ、私は体力的にそこまで強くもないので、ハードな暮らしは厳しい。全自動掃除機や食洗機などの家電に頼ったり、時短調理に挑戦したりしつつ、テレワークと職場の協力に助けられていることがとても多いです」

明堂の1日のスケジュール。通勤時間がないため、朝食・家事の時間が少し余裕を持って行えており、子どもと過ごす時間も充実している

――具体的にどのような点で、テレワークによるメリットを特に得られていると感じますか?

「私は状況に応じた時間シフト勤務を適用できる制度を利用し、柔軟に働かせてもらっています。たとえば子どもが発熱してしまったとき、テレワークでなかったらその日は会社を休んで育児に専念するしかないと思うんです。

でもテレワークがあったので、早朝や子どもが寝静まったタイミングで仕事をすることができました。1日のなかで仕事をするタイミングを柔軟にできるというのは、テレワークと時間シフト勤務があったからできたことだと思います。

復帰当初はそのような勤務形態を利用させてもらっていても、子どもの風邪も多く、生活リズムが乱れがちで苦労したのですが、半年過ぎたあたりから毎食の料理もできるようになり、睡眠時間も確保できるようになって、健康的な暮らしが送れるようになりました。夫からも『東京にいたころより健康そうに見える』と言われるようになりました(笑)」

――実際にご家族と過ごせる時間は増えたと感じますか?

「はい。チャレンジ精神旺盛な子どもの『成長のためになること』を考えながら、日々を過ごせるのがうれしいです。たとえば、子どもが時間をかけてボタンを留めたり外したりするのを見ていて、できたときに一緒に喜んだり、靴の脱ぎ履きでも、成長が見られるとうれしくなります。

子どもは調理に興味があるようで、野菜を洗ったり切ったり、材料を混ぜたりするお手伝いをしてもらっています。手先が器用になって賢くなるといいなぁと見守っています。食材を焼いたり煮たりしたときの味の変化や、見た目の変化なども面白いようです。子どもはなんでも味見したがりますが、それも好奇心が育つといいなぁと思っています(笑)。子どもと一緒だと調理も片付けにも時間がかかるので、忙しい日はできませんが。

こうやってやりがいある仕事を継続しながら、家族と一緒に住めることには幸せを感じています」

我が子としっかりコミュニケーションをとる時間ができるのも、テレワークのおかげだろう

更なる利便性の追求と、普及を目指して

――テレワークを今後、どのような人に使ってもらいたいですか?

「ストレスや過労で、健康を犠牲にして働いている人も少なくないと思うんです。共働きだと睡眠時間を短くしながら暮らしている人もたくさんいますし、なかにはまともな食事を取れていない人もいると思います。

そういう人にこそテレワークを使ってもらいたいと思っています。まずは、健康にちょっと不安を抱えて、共働きで頑張っている人たちに届けたいんです。むしろ私は恵まれている方で、今使っていて申し訳ないという気持ちすらあります」

――明堂さんだけでなく、在宅勤務や時短勤務をしている人は、多少なりとも職場に対して申し訳なさを感じている人が多いと思うのですが、それを払しょくするにはどういった職場になればよいと思いますか?

「皆が平等に時短勤務やテレワークといった施策を使えるようになれば、『申し訳なさ』も減ってくると思うんです。私は育児との両立のために使っていましたが、KDDI研究所では介護や育児といった理由でなくても、1日からテレワークを使えるようになっています。あとは風土の問題。気軽に使えるように改善を進めていきたいと思っています。

特に、もっと男性社員に使ってほしいんです。KDDI本社で、トライアルでテレワークを使いたい人を募集したとき、応募してきたのは全員、育児をしている女性だったそうなんですよ。まだ男性は使いづらい風潮があるんだろうなと思いました。私のように『育児と遠距離だからテレワークをやむなく使う』とかじゃなくて、もっと敷居を下げていきたいと思っています」

――最後に、今後の課題や可能性について聞かせてください。

「『顔の見える』テレワークに対して『監視されている』と感じる人も多いかもしれませんが、それよりもコミュニケーションの利便性が上がることを実感してもらいたいです。通勤時間なしで職場にいるような感覚になれると思うので、スーパーウーマンでなくても両立ができるようになるはずです。

私が今まで描いていた『育児・家事と仕事を両立できる人』は、能力もあって、体力もあって、さらに環境に恵まれている人。その三拍子がそろわないとダメだと思っていたんです。

でも、テレワークがもっと使いやすくなれば、この三拍子が揃っていなくても働き続けることが可能になると思います。通勤がなくなるだけで、体力的にかなり楽になります。だからたくさんの企業に普及して、たくさんの人の働き方を柔軟にできるように、今後も開発を進めていきたいと考えています」

長野と東京をつなぐ高速通信。モニター越しの音声や映像は想像以上にスムーズだ。現在は育児休暇を取得している人をメインターゲットとしているが、さらに手軽に使えるようになれば、より多くの人が柔軟な働き方をできるようになるだろう。

社員と職場が柔軟な働き方をともに受け入れ、テレワークが普及した未来が「プライベートの時間を充実させ、働きたい場所で働ける社会」になっていることを期待したい。

文:カツセマサヒコ/プレスラボ

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