2021/03/23

スマホで体験できるARの進化がすごい!自宅に出現する等身大の恐竜やアートで学び体験など

ARとは「Augmented Reality」の略で、現実の風景に、そこにはない映像やテキストを重ね合わせて映し出す「拡張現実」のこと。ゲームなどでおなじみの技術だが、最近また進化を遂げている。

たとえば恐竜。スマホでGoogle検索するだけで、等身大のAR恐竜を現実の空間に呼び出すことができる。

Google検索でAR表示したティラノサウルス

動きや鳴き声の演出もあり、ティラノサウルスがまるで本当にそこにいるかのような存在感だ。文字通り「現実の拡張」といえる。

また、このように見て驚くだけでなく、気づきや発見といった新しい学びを体験できるコンテンツも拡充してきた。そんな最新の、しかもスマホで簡単に体験できるAR技術を紹介していこう。

【目次】

トラやティラノサウルスが目の前に現れる「Google検索」

動物や恐竜はテレビや映画で見ることはあっても、その大きさを間近で体験することはない。しかしARならば目の前に呼び出すことができる。記事の冒頭でティラノサウルスを紹介したが、ほかにも特定の動物や恐竜をGoogleで検索するだけで、そのAR画像を実物大で目の前で見ることができる。

ティラノサウルスのように巨大な生物は屋外でないと全体を表示できないが、部屋に入るサイズとして、「ARトラ」を例に呼び出し方を紹介しよう。

■iPhoneの場合

①Googleで「トラ」を検索。
②検索結果に[実物大のベンガルトラを近くで見る]という囲みが現れる。
③この中の[3D表示]をタップ。
④3Dモデルが表示されるので、画面内の[実際の風景に表示]をタップ。
⑤カメラが起動し、スマホを動かすよう指示が出る。
⑥地面を認識させた場所にトラが出現。

iPhoneを使ってGoogleでトラをAR表示するための手順
Google検索でのAR体験画面 iPhone XSを使用

■Androidスマホの場合

①iPhoneの④の操作までは同じ。
②カメラが起動するので、スマホを床に向けて円を描くように動かし、地面を認識させれば、トラが現れる。

なお床に立体感のあるものが置かれていたり、周囲が暗かったりすると認識しにくいので注意が必要だ。また、AndroidスマホはGoogle検索の3D表示に「オブジェクトブレンド」の機能を搭載(対応機種のみ)。周囲の環境を立体として認識し、ソファやテーブルなどが手前にあればその陰に隠れてARが表示される。
※Xperia 1を使用

Androidスマホを使ってGoogleでトラをAR表示するための手順 AndroidスマホのGoogle検索でトラをAR表示する手順。赤枠が「オブジェクトブレンド」のON/OFF切り替えのアイコンだ

ARのトラは表面の毛並みなどまでリアリティがあり、また動きもあり、かつ吠える。 動物園で見たトラと、普段、生活しているリビングで見るトラでは、その存在感・迫力はまったく別物だ。

Xperia 1を使用

ちなみにGoogle検索で体験できるのは、恐竜のほかにトラやジャイアントパンダ、ヒョウ、ヤギ、チーター、ポニーなど陸の動物に、アリゲーターやホホジロザメなど水中や湿地の生きもの、ワシやコウテイペンギンなどの鳥類、イヌやネコのペット類。また、日本語対応していないが(欧文での検索が必要)、細胞組織や化学・生物学・物理学の専門的な概念や用語も3DアニメーションでAR表示できる。

見慣れた風景に突如、動物や恐竜が現れるという感覚は、動物園や博物館では得られない不思議な感覚だ。お子さんがいる方は、ぜひ一緒に体験してはいかがだろうか。

アプリ名:Google
Android・iPhone対応
価格:無料

見慣れた風景で自然災害を想定「ARお天気シミュレーター」

大雨の際、テレビなどで「非常に強い雨」(50mm/h以上)や「猛烈な雨」(80mm/h以上)といった自然現象を目の前で見られるのがウェザーニューズ提供の「ARお天気シミュレーター」だ。

災害については「雨」「雪」「浸水」と3つのモードを搭載。雨モードでは1時間あたり0.5mm〜100mmの雨の強さを、雪モードでは1時間あたり0.5cm〜10cm積もる雪の強さを、浸水モードでは、10cm単位で最大深度1mまでの浸水を、それぞれ現実の風景に重ね合わせて表示することができる

使い方は簡単で、アプリを起動すればカメラが立ち上がるので、雨・雪モードの場合は降水強度・降雪強度を決定するだけでシミュレーションの世界に入れる。

ARお天気シミュレーターの画面

筆者の家の前の風景で試してみよう。まず雨モード。画面下部の矢印で降水強度を調節する。

ARお天気シミュレーターの雨モード画面

左が1時間雨量10mm。気象庁の予報用語では「やや強い雨」にあたり、地面からの跳ね返りで足元が濡れるような降り方。真ん中は50mmの「非常に激しい雨」。50mm以上になると傘はまったく役に立たず、車の運転は危険とされている。なお80mm以上は「息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる」と気象庁は表現している。

こちらは雪モード。

ARお天気シミュレーターの雪モード画面

普段雪の降らない地域での場所での降雪を体感できたり、東京での大雪警報レベル(12時間降雪の深さ10cm)がどんな降り方なのかをあらかじめ体験しておくことができる。

そして浸水モード。自宅の床をカメラで認識させ、それを基準に浸水深を設定する。

ARお天気シミュレーターの浸水モード画面 コタツもAV機器も水没することがわかる

深さ50cm。数字だけでは想像できない状況でも、シミュレーションで見るとその深刻さがわかる。このように災害発生時の状況をあらかじめ体感しておけば、いざというときの想像ができ、次の行動ができることだろう。

また、2021年3月には「虹」「桜」モードを追加。

現実の風景に虹や桜をARで表示し、位置情報をもとにそのエリアに虹が出現する可能性や、桜の開花予想などを教えてくれる。

ARお天気シュミレーターの「虹」「桜」モード 左が虹モード。中・右が「桜」。iPhone 11を使用

「虹」モードは好きな場所に好きなサイズの虹を出現させることができる。「桜」では、好きな開花度合いの桜を自由に見られる。[現在地の情報]をタップすれば、それぞれその地域での虹出現予報や桜の開花予想を教えてくれる。今後、様々な季節イベントを追加予定だ。

アプリ名:ARお天気シミュレーター
Android・iPhone対応
価格:無料

“飛び出す”絵本で楽しく英語に親しめる「ARマジカルライブラリー」

「ARマジカルライブラリー」は、世界の有名出版社の英語図書を100冊以上収蔵する世界最大のAR/3D図書館。

欧米でおなじみの「My Little Pony」や、日本でもおなじみの「セサミストリート」「きかんしゃトーマス」「スマーフ」などの絵本に、「ピノキオ」「不思議の国のアリス」などの児童文学、イギリスDK社の百科事典シリーズなどを読むことができる。

アプリを立ち上げると画面に現れるのは、魔法の国のムービー。

ARマジカルライブラリーのオープニング

そのままカメラは高度を下げ、真ん中のお城に吸い込まれていく。ここがアプリのメインコンテンツとなるライブラリーだ。

ARマジカルライブラリーの書架

書架から1冊をタップすると、ステキな子ども部屋をイメージしたバーチャル空間で読書スタート。DK社の子ども百科事典を見てみよう。

ARマジカルライブラリーでの読書体験

本を開くと絵が飛び出して動きはじめる。サンゴ礁のページではウミガメとモンガラカワハギが部屋を海中に見立てて泳ぎ回る。英語で朗読がなされ、読んでいる箇所をハイライト表示。

そして、右下の歯車マークからARモードに切り替えることができる。

ARマジカルライブラリーでの読書体験

アプリが朗読してくれる以外に「自分で読む」モードがあり、自分の声で録音もできる。何度か同じ本をアプリの朗読で読むと、知らず知らずに発音を覚えることもできそうだ。

読書以外にも、単語のスペルチェックや塗り絵など9つのゲームが準備されている。こちらはブロックを正しい順に並べて単語を作るゲーム。

ARマジカルライブラリーでの読書体験 AQUOS sense3を使用

読んだ本と連携しているので、一層読書が楽しくなり、飽きることなく自然と英語に触れることができる。

アプリ名:ARマジカルライブラリー
Android・iPhone対応
価格:無料(月額499円のauスマートパスプレミアムに加入すれば、すべての蔵書が読める)

部屋にダヴィンチやゴッホを飾って愛でる「[AR]T MUSEUM」

コロナ禍のなか、多くのミュージアムが収蔵作品をインターネットで無料閲覧可能にした。そのデータを活用してアメリカ「Cuseum」社が提供しているのが、「Museum From Home」というサービス。iPhoneアプリ「[AR]T Museum」で、好きな場所に芸術作品をAR展示することができるというものだ。

使い方は簡単。画面上部の[Tap here to open the AR Lens!]をタップすればカメラが起動。下部の丸いアイコンから作品を選び、飾りたい壁を写して画面をタップすれば、そこに絵が掛けられる。

部屋の壁にダ・ヴィンチのモナリザを掛けてみた。

自宅に芸術作品を飾れる[AR]T MUSEUM

そして別の壁にはゴッホの「星月夜」を。

自宅に芸術作品を飾れる[AR]T MUSEUM iPhone 11を使用

作品は設定した位置に固定して表示されるため、スマホで見るときの角度や距離を変えると、そのぶんきちんと角度がついて、まるで本当にそこにあるかのように見える。

このサービスでは、メトロポリタン美術館、ルーブル美術館、ゲティ財団、シカゴ美術館などと連携。ほかにもムンクやカンディンスキー、クリムト、ターナーなど58作がラインナップされており、今後も増えていく予定だ。

アプリ名:[AR]T MUSEUM
iPhoneのみ対応
価格:無料

スミソニアン博物館のInstagramでスペースシャトルが目の前に

科学・芸術・自然史の巨大な博物館群と研究機関を運営するアメリカのスミソニアン博物館がInstagramを通して、展示物のAR体験を提供している。ARを楽しめるのは、スペースシャトル・ディスカバリーやマンモスの骨格標本など10点。

Instagramで「smithsonian」のアカウントにアクセスしたら、顔型のアイコンをタップ。展示物の3Dモデルのページが表示される。次に見たい画像をタップ。国立自然史博物館の敷地内にARで表示されたマンモスの3Dモデルが見られる。ここで[試す]をタップ。

スミソニアン博物館のInstagramアカウント

するとカメラが起動。現実の風景のなかで、マンモスを置きたい位置をタップして決める。

スミソニアン博物館のInstagramアカウントでマンモスを表示

丸いタブをタップすると、展示されているこのマンモスの説明までしてくれる親切設計。ミュージアムショップのお土産みたいで、とても愛着が湧く。

今度はスペースシャトル・ディスカバリーを大きく表示。スペースシャトル最多の39回の飛行歴を持ち、2005年にはあの野口聡一さんが搭乗した機体だ。

スミソニアン博物館のInstagramアカウントでスペースシャトルを表示 iPhone XSを使用

3Dモデルはいずれも回転・拡大・縮小可能。本物の全長は約37mなので、おおよそ縮尺は1/3。拡大すると、ディスカバリーの機体外装にヒビや修復痕が多数見られ、さらに底面や裏側など自由自在に観察できる。

アプリ名:Instagram
Android・iPhone対応
価格:無料

ARは今後もっと、文字通り現実を拡張していく

「本当はそこにないもの」を呼び出して、いま自分のいる現実を広げることができるAR。外出がままならない昨今、時代に非常に適応している技術といえるだろう。見るのとも聴くのとも読むのとも少し異なる不思議な感覚が得られる体験。未体験の人はぜひ味わってみてほしい。

文: TIME & SPACE編集部



参考情報

■Google検索で 3D と拡張現実を体験する

■ARお天気シミュレーター
iOS Android

■ARマジカルライブラリー
iOS Android

■[AR]T MUSEUM
■スミソニアン博物館公式Instagram