2016/07/15

【ネット系女子!】“無駄な工作”が動画再生回数700万回! YouTuber藤原麻里菜さん

いまどきのネットを騒がせている女性たちをご紹介する「ネット系女子!」。第6回目の今回は、YouTubeチャンネル『無駄づくり』の藤原麻里菜さん。"歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン""一人でもパピコを食べられるマウント""ハイタッチする装置"など、本人いわく"無駄な工作"を次々と発表。ところがその独創性と面白さが話題を呼び、いまや動画総再生回数700万回、チャンネル登録者数は2万人を超える「工作クイーン」だ。そんな彼女に、"無駄づくり"をはじめたルーツや工作への想いを聞く。

100万回以上再生されている"歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン"。独特の雰囲気のBGMは、高校時代の先輩のバンドの楽曲を使用しているそう

美大進学の挫折が創作活動のはじまり

今回は新宿にある吉本興業株式会社にてお話を聞くことに。小学校をそのまま利用したオフィスは、各会議室(元教室)に"○組"などのプレートがかけられていたり、黒板が残っていたりと遊び心が満載。大きなバックから今までつくった工作を取り出す藤原さんの姿は、まるで授業の準備をする先生のよう

――もともと工作が好きだったんですか?

「そうですね。実は私、中学生まで自分はめちゃくちゃ絵の才能があると思っていて、アーティストを目指していました。美大に入るために美術系の高校に進学しましたが、受験するためにはデッサンが必要なことが判明したんです。デッサンって、2、3時間ずっと集中して描かなきゃいけないのに、私は途中で飽きちゃうから全然描き上げられない。それで、美大進学を挫折しました。でも、おもしろいものを生み出す人になりたいという思いは漠然とあったので、高校を卒業したあと私になにができるか考えたときに思いついたんです。『そうだ、工作をやろう』って」

――創作の原点は?

「私、超芸術トマソン(編注:前衛芸術家、赤瀬川原平らの発見による芸術上の概念)のような、使いようがなく無用になっているけれど、なにかたたずまいが変なものが大好きなんです。デコトラとか、珍スポットにあるユルい彫刻とか。実際に必要なものかはわからないけど、なぜか面白くて。私も、ああいった気の抜けたおもしろいものをつくりたくて工作を続けているんです」

理解のあるご家族の元育った藤原さん。ご両親にいちばんウケた作品は?「"歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン"です(笑)。特に母親のツボにはまったみたいで、『おもしろい!』って言ってくれました」

――ご両親は、現在の藤原さんの活躍はご存じですか?

「はい。家族とfacebookで繋がってるんですが、動画を投稿するとコメントをくれたり、シェアしてくれたりします。父親なんて取引先の相手に私の動画を見せたりすることもあるみたいで(笑)。親のひいき目もなく、フェアに見てくれるので、感想をもらうと参考になります。祖母も、スマホを使って私のSNSをチェックしていますよ」

コンプレックスが工作のアイディアに

――動画をつくるときに気をつけていることは?

「つくったものがどう動くかきちんと伝えるようにしています。あとは、自分の表情です。撮影している時はわからないけど、あとから見返すと自分でも笑えるような渋い表情をしていたりするので、そこを取り入れたりします。この前、私の動画を見たアメリカ人から『渋い表情がいいね!』ってコメントをもらったんです! 私がおもしろいと思う"渋い表情"って、外国人にも伝わるんだって思うと嬉しかったですね」

「工作には、初心者でも簡単にプログラミングできて物を動かすことができるマイクロコンピューター『Arduino(アルディーノ)』をよく使います。サーボモーターは、動かすものの重さによってメタルか樹脂とで使い分けています。部品を購入するために秋葉原に行くこともありますよ」

――工作のアイディアはどのように思いつくんですか?

「普段生活していて、なんか嫌だなって思ったことがアイディアの原点です。"歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン"は胸が小さいという悩みから生まれたもの。"ハイタッチする装置"は、盛り上がったシーンでも手を挙げられない気恥ずかしさから生まれました。人ってコンプレックスのせいで生きづらくなってしまうけれど、それならいっそ笑い飛ばした方が気楽だと思うんです。だから、似たようなコンプレックスを抱えた人が、私の工作物を見て『コンプレックスなんて、たいしたことじゃない』って笑ってくれたら嬉しいですね」

――ちなみに、藤原さんのいちばんお気に入りの作品はなんですか?

「"一人でもパピコを食べられるマウント"です。私はきちんとしたCAD(編注:設計図面)が描けないので、ざっくりしたラフを描いて友達に渡して、3Dプリンターでつくってもらいました」

「"一人でもパピコを食べられるマウント"は、いちばん商品化しやすい工作だと思うので、ガチャガチャなどで販売してみたいです。難点は、2ついっぺんに食べるので、お腹いっぱいになるところですね」

"一人でもパピコを食べられるマウント"の動画。実際に使っている様子が見られる

今後の目標は「"石"になること」!?

――普段はなにをしていますか?

「他の仕事をやりつつ、時間があるときに工作をしています。まだ実際につくっているわけではありませんが、最近は『サーキットベンディング』に興味があります。おもちゃを改造して音のピッチを変えたり、変な音を出したりする遊びです。数年前に流行ったんですけど、ブームが去っちゃって。だからこそ、今やってみたらおもしろいんじゃないかなって思います」

――ところで、藤原さんはプライベートで普段、どんなアプリを使っていますか?

「『Studio』です。YouTubeクリエイター向けにつくられたアプリで、動画の再生回数や、いくら稼いだかがわかるんです。あと、『Sumally』っていうショッピングアプリで自分の欲しいものをチェックしています」

スマホの背景画像は『スタートレック』。「新しいシリーズから入って、最近は初期の方も見始めました。カーク船長より、断然スポック派です!」

――英語を勉強できるアプリも結構入っていますね。

そうですね。『究極英単語』や、『Duolingo』で単語やTOEICの勉強をしています。ゆくゆくは英語で動画を撮影して、世界中の人に向けて配信したいので」

――今後の目標は?

「石とか、映画『フォレスト・ガンプ』の主人公のようになることです」

――えーっ?

若干22歳にして、仙人のような境地にいる藤原さん。ちなみに、石やフォレストガンプになりたいと思ったのはいつ頃?「石は結構前からですが、フォレスト・ガンプになりたいと思ったのは、超最近。一カ月前です(笑)」

「主人公は、映画の後半で突然走り出します。休まず走り続けて、何度もアメリカ大陸を横断するんです。その様子をマスメディアが取り上げたことで一躍有名になり、人々は彼を見て『世界平和を願って走っている』とか、『環境問題を訴えている』とか、勝手に意味を見出します。でも、インタビュアーが彼に走る理由を尋ねると、ただ一言『走りたいからだよ』って答えるんです。彼にとって、名声なんてどうでもいいことなんですよ。石だって、なにも考えずただそこに在るだけの存在ですよね。そんな風に、私もいろんなことに頓着しないで、自分のつくりたいものをずっと作り続けたいと思っています」

――では、創作活動の目標は?

「私のつくる工作物は、いろんな物や人から受けた影響が反映されています。だから、私と同じ感性の人にしかおもしろいって思われなくて。でも、これからは女子高生に『超スキ!』って言われたり、赤ちゃんやおじいちゃんを笑わせたりとか、全然違う人にも興味を持ってもらえるように工夫していきたいです。変なことをやり続けるからには、たくさんの人におもしろがって欲しいですしね」

落ち着いた物腰と、なにごとにも流されない気持ちの強さはまさに"石"のよう! 藤原さんのつくる一度見ればクセになる工作物の数々を、ぜひ一度体験してみてほしい。

7月公開の新作「イケメンからナンパされちゃうマシーン」。ハンカチを落としてイケメンに拾ってもらう様子を小型カメラで撮影し、目の前のスマホに映像を飛ばす装置。これで貴重な出会いも逃さない!?

文:服部桃子(アート・サプライ)
撮影:有坂政晴(STUH)

藤原麻里菜

1993年生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属。「無駄づくり」チャンネル開設後、約1カ月でYouTubeエンタメウィークに選出。ライターとしても活動しており、第三回オモコロ杯未来賞、週刊SPA!「今読むべきブログ21選」、おもしろ記事大賞佳作などの評価を受けている。