2017/11/16

| 更新

2018/06/26

IoTを裏で支える通信技術『LTE-M』 移動時でも安定した通信を可能にする仕組みとは?

世の中のあらゆるモノがインターネットに接続するようになると言われ、IoT(Internet of Things)の言葉はよく耳にするようになった。同時に、モノをインターネットに接続する無線通信回線として近年注目されているテクノロジーが、「LPWA(Low Power Wide Area)」だ。すでにさまざまな規格が策定され、世界中でサービスが開始されている。

そして、このほど日本でこのLPWAの新しいタイプのサービスが始まる。その名も「LTE-M」。

LTE-Mとは?

まず「LTE」は、ダウンロードで100Mbps以上、アップロードで50Mbps以上を叩き出す、私たちが普段から使っているケータイ・スマホ用高速回線のことだ。このLTEの帯域をやりくりし、空いた帯域で通信するのがLTE-M(Long Term Evolution for machine-type-communication)となる。

従来のLPWAの通信速度は規格により異なるが、数Kbpsから数百Kbps程度であるのに対し、LTE-Mは上り/下りとも最大1Mbpsと速い。扱うデータ量が少ないIoTの通信として利用するには十分以上の実力を持ち合わせている。そしてこのLTE-Mこそが、IoTの通信として本命といわれているのだ。なぜなのだろうか。

電波干渉しない! 移動中も使える! アップデート可能!

LoRaWANやSigfox、 Wi-SUNといったタイプのLPWAで使用する920MHzは免許不要で、基地局を自由に設置できるというメリットがある。しかしそのぶん、近くに同じ帯域を使うLPWA基地局があれば電波干渉が起きてしまう可能性がある。

その点、LTE-Mのサービスを提供するのは、KDDIをはじめとした総務省から免許を交付された通信キャリア。各企業に割り当てられた専用の周波数で通信を行うので、電波干渉が起こりにくい安定した接続環境が整えられる

また、現時点での実装はまだされていないが、LTE-Mにはハンドオーバー機能が備わっている。これはクルマや自転車の移動中でも、通信が途切れることなく、ほかの基地局へとスムーズに切り替えていく技術だ。LTE-Mもクルマで移動するくらいでは、通信が途切れることはない

さらに便利なのは、LTE-Mの通信速度が十分に速いことから、スマートフォンなどのファームウェアを無線通信によって配布・アップデートできるFOTA(Firmware Over The Air)機能が使えること。これにより、さまざまな通信機器のセキュリティを守るためのソフトウェアアップデートが可能になるのだ。

また、たとえ僻地に設置したデバイスに不具合が起きても、遠隔から対策を行うことができるというメリットもある。

これらの技術に後押しされることで、今後はさらに膨大な数のIoTデバイスが普及してくだろう。しかも通信にかかるエネルギーたるや単三電池2本分で約10年駆動し続ける※というのだから効率的だ。

※1週間ごとに1度、1KBのデータを送信した場合 (送信時以外「PSM」状態) に、4,000mAh電池 (単三電池2本分) を全消耗するまでの駆動時間。消費電力は、通信環境や利用状況によって変動します。

LTE-Mの親戚? 「NB-IoT」は2018年から活躍開始

実はLTE-Mと同様に、通信キャリアが提供を開始するNB-IoT(Narrow Band IoT)もある。こちらは通信速度は上り63Kbps/下り29Kbpsとかなり遅い。そのうえLTE-Mのようなハンドオーバー機能もなく、通信速度が遅いためFOTAに時間がかかり、その分、電池持ちが悪くなる。

では、なぜ新しい技術として提供されるのか? 機能がシンプルなぶん、デバイス自体を小型化・安価に設計できる点だ。水道やガスなどのメーターや、田畑の気温などを測定するなら、込み入った機能は不要なはず。データ量も少ないので通信コストも低く抑えられるというわけだ。

移動の必要がない場面ではNB-IoTを、移動する場合や安定した通信が必要状況ではLTE-Mを、賢く使い分けるのがLPWAの運用ポイントになってくるだろう。

日本の通信キャリアにおけるLTE網の人口カバー率は99%以上。LTE-Mは今までの基地局をそのまま利用できるため、速やかなサービス開始が可能になっている。

KDDIでは今後、LTE-Mを利用したサービスの運用を予定している。より身近になったLTE-Mによって私たちの暮らしがどんなふうに変わっていくのか、今後も注目していきたい。

文:吉田 努

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